「俺のフレンチ」
連日行列が出来る立ち食いのフレンチレストラン。
「美味しいの!1度連れてってあげる」と友人から電話があった。
北海道旅行の宿の話から、何故かこの「俺のフレンチ」にとんだ。
立ち食いでフォアグラ・・・、安くて美味しいのだそうだ。
フレンチの立ち食い、それも女性達がわいわい集うなんて、10年前考えられなかった
いや、まてよ、バブルの頃、六本木に屋台のフレンチがあった!
イケメンのシェフが(30歳ぐらい)一人で切り盛りしていた。
何度か女友達と通った。
苦い思い出がある。
私たちは独身で、平均年齢35、6歳だった。
十分大人で、そこそこ仕事にも恵まれていた。
屋台のフレンチは、女子会の(そんな言い方はまだなかった)いつも2件目、3件目。
お酒もたっぷり入り、けたたましくなだれ込むように、いつもその屋台に押しかけた。
3人でいけば、それぞればらばらの、やたら裏メニューもどきを頼み、アパレル勤め
のK子は、タバコの煙を切らさず吐き出し続け、ワインの薀蓄ばかりひけらかすM子
私といえば、いつも大げさに笑い転げていたように思う、無意味に・・・。
そんな「客」を、横目にシェフは、いつもさりげなく美味しい小皿を、差し出して
くれていた。
ある日、いつものようにワイングラスを傾け、3人が笑い転げていた。
それは、突然だった。
「あんた達、お金はいらない、2度とこの店に来ないでくれ」
確か、そんなことを言われた。
その先の細かいことは覚えてないのだけれど、今思い出しても息苦しくなる。
屋台を馬鹿にした覚えも無い、シェフに失礼なことを言った憶えも無い。
理由は、見苦しかったのだと思う。それにしてもえらいシェフでした。
レストランだったら、客と作り手には距離がある。屋台の店は幸か不幸か目の前だ。
自分の丹精込めて作った料理が、タバコの煙もくもくの、ノーテンキ女子に・・・
「やってられるか!」となったのは十分わかります、すいませんでした。
思い出すと「ヒエー!」となる、そんな出来事・・・あるのですね、これが幾つも。
「若気の至り」という、やさしい言葉がありました。