どうにも桜という花が好きになれない。
いや、ソメイヨシノが嫌いなのだ。
人々が花見だ酒だと浮かれるのは美しい花を愛でるためではない。
惑わされているのだ。
ソメイヨシノは人の心を惑わす恐ろしい花。
大きな枝振りに一斉に咲くように、江戸時代に作られた改良品種である。
全てのソメイヨシノは単一の遺伝子で制御されており、当然、散るのも一斉。
美しさに心を奪われているのではなくて、咲くも散るもただその数に圧倒されているに過ぎない。
キレイな同じピンク色の花がどこまでも連なり重なり、人々は視界に遠近感を失い、一種の麻痺
状態に置かれる。そしてしばし熱狂する。
その裏には、その下には、陰があるのだ。
漆黒の闇をはらんだ狂気の暗い淵が見えないか。
そしてその根は地上の枝振りと同じほどの広大な根を張っており、簡単には抜けず枯れず。
為政者が今まで桜にどんな思いを込めたか忘れたか。
やっと桜が散りました。