goo blog サービス終了のお知らせ 

ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

「水棺」というほど穏やかではない

2011-04-26 14:22:45 | 原発事故
福島第一原発1号機で、原子炉格納容器を水で満たす「水棺」作業が進んでいる。

圧力容器にまで水が入り込めば、炉内の温度が下がって一息つけるかもしれない。イメージとしては、グラグラ沸騰する鍋のお湯に、大量の水を入れて冷やすようなものである。

しかし、この作業が成功したとしても、それで目出度しというわけにはいかない。

一時的に温度が下がっても、燃料棒が発する熱量が減少したわけではない。上の喩えで言えば、鍋を置いているコンロの火が消えたわけではない。当然、そのまま放置すれば、格納容器の水まで温度上昇を始めるので、外部からの注水はこれまで通り続けなければならない。

むしろ、水の量が増えた分、温度を下げるのは今まで以上に難しくなるので、さらに厳密な温度管理が必要になるだろう。

また、「水棺」によって、原子炉全体の重量が大きくなったことも心配な点だ。水の重みで格納容器がダメージを受ける可能性は排除できない。さらに、原子炉を支えている基盤構造が地震で破損する危険も大きくなってくる。

政府・東京電力は、数ヶ月のうちに循環式冷却装置を外部に取り付けて、100度以下を連続的に保持する冷温停止状態にもっていくとしている。冷却システムが上手く完成するかどうか自体、大きな賭けのようなものであるが、かりに成功したとしても、冷やす相手は無傷の原子炉に入った無傷の燃料棒ではない。

水素爆発で大破した脆弱な建物のなかに、水の注入で巨大重量に膨れ上がった原子炉が存在し、その中心に溶融した燃料棒が何本も入っている。大きな余震がいつ起るとも分からない状況下で、その燃料棒を何年にも渡って外部ポンプで冷やし続ける。

「水棺」という言葉は「静かに眠りについた原子炉」といった印象を与えるが、それとは程遠い代物だ。

これほど危険な構造物に「水棺」という名前が付いているのは、笑えない皮肉である。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする