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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

東電「工程表」には「現場」という言葉がない

2011-04-18 14:34:36 | 原発事故
三ヶ月以内に、2号機格納容器の損傷部分をコンクリートで固めて補修する。

東京電力が発表した「工程表」の一文であるが、では、誰がどうやってこの補修を行うのだろうか?

そもそも、2号機に関しては、高濃度汚染水のためにタービン建屋にすら満足に入れない状態である。その汚染水が漏洩している本体である原子炉建屋に入ることは、ほぼ不可能だ。

三ヶ月という時間が経ったとしても、セシウムの半減期30年から計算して、放射線量は99%程度にしか減衰しない。事態は今と何ら変わらない。

かりに原子炉建屋内部の汚染状況が思った以上に軽くて、なんとか原子炉付近まで近づけたとしても、超高濃度の放射性物質を含んだ水あるいは水蒸気が噴出する格納容器の損傷部分にコンクリートを打つのは、死に至る被ばくを覚悟しなければ出来ない。

もし、作業を可能にする遠隔ロボットがあるのなら、話は分かる。しかし、そんなロボットがない以上、現場の人間が命の危険に晒されるような作業を「工程表」に入れるべきではない。

断固として、別の方法を模索すべきである。

東京電力のトップは、国内外の厳しい批判にさらされて、「工程表」を出してきた。しかし、そこには、現場作業員が命の危険を伴う無謀な仕事をしなければ実現不可能な目標が、いくつも書き連ねられている。

しかも、東電の取締役たちは、六月をめどに辞任するという話も出ている。「工程表」の第一ステップの結果すら出ていない時期である。つまり、「工程表」が実現できなくても、何の責任も取らないというわけだ。

一方、彼らが辞めた後も、現場の作業員は毎日命を削りながら、事故処理に当たらなければならない。そして、どんなに危険であっても、会社のトップが記者会見で大々的に発表した以上、「工程表」のノルマ通りに作業を完成させることが求められる。

「うっかり線量計をつけ忘れ」たり「作業内容をうっかり記録し忘れたり」。「うっかり」しなければ、達成できないノルマが時間と共に、どんどん増えていくだろう。

一ミリシーベルトも放射線を浴びない安全地帯にいる人間が、自分たちの政治的都合だけで、事故処理の方法やスケジュールを決めていく。その結果、現場の人間が常軌を逸した決死の作業を強いられる。

「工程表」に「現場」という発想がないことが、今回の原発事故の構造を象徴している。

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