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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

「トイレットペーパー品切れ」=「買いだめ」という幻想

2011-04-08 03:46:32 | 政治
スーパーの棚から品物がなくなると、すぐに「買いだめはやめよう」という声が上がる。「品薄」なのは、誰かが「買いだめ」しているからだと安易に考えるひとが多い。

しかし、「品薄」=「買いだめ」は間違いである。

例えば、ある大型スーパーに、毎日100人の客がトイレットペーパーを買いに来るとする。12ロール入ったものを1人が1個ずつ買うとすれば100個売れることになる。これが通常の需要量である。

店は毎日100個を仕入れればよいが、在庫として100個ほど余分に棚に置いておけば、100人の客は200個のトイレットペーパーから自分の1個を選ぶことが出来る。多くの客は、スーパーに十分な数のトイレットペーパーがあると感じるだろう。

ところが、今回の大震災のように、もし物流がある日を境に何日間か止まったらどうなるだろう?

仕入れが止まった日(1日目)に来た100人の客には、在庫分の100個しかないが、とりあえず全員買って帰ることが出来る。だが、次の日(2日目)に来る100人の客は、在庫分もないので、誰もトイレットペーパーを買うことが出来ない。

買えなかった100人は、トイレットペーパーなしでは生活できないし、かといって代わりになる商品もないので、その次の日(3日目)もトイレットペーパーを求めてやって来る。この100人に、新たな100人の客が加わるので、3日目には、200人の客がやって来るがやはり誰も手に出来ない。

仮に物流停止が3日間で終わり、4日目から仕入れが再開して、100個のトイレットペーパーが店に届いたとする。すると、この日にやって来る300人の客が、この100個を奪う合う形となり、200人の客はむなしく帰るしかない。

そして、5日目も、300人の客が来て、トイレットペーパーは100個。6日目も、300人で100個。メーカーが増産体制を整えて100個以上の仕入れが可能になるまで、この状態が延々と続いていく。

つまり、誰一人として「買いだめ」したわけではなく、きちんと1人が1個ずつ買っているのだが、スーパーの棚は、いつ見ても空っぽという感じになる。この時点で、需要量は300個。通常の3倍に跳ね上がっている。

おそらく、毎日毎日、普段の3倍の客がやって来るので、品不足でパニックになった人たちが、家にまだトイレットペーパーがあるのに殺到しているという印象を、多くの人が受けるのかもしれない。

しかし、トイレットペーパーが家に無くなったという当たり前の理由で買いに来て、しかも1人が1個ずつ買ったとしても、仕入れが3日間止まっただけで、これだけの品不足が起ってしまう。

大抵の生活必需品についても、仕入れが止まれば、同じようなことが起きる。ただ、とくにトイレットペーパーは、無しで済ますわけにいかないし、代用品もないので、それがはっきりした形で現れてくる。「品不足」といえばトイレットペーパーが思い浮かぶのは、そのためだと思う。

さて、物流停止から何週間か経って増産が開始され、店が毎日200個のトイレットペーパーを仕入れ始めたとする。すると、何週間も続いた品不足はたった2日で解消して、店はすぐに仕入れ量を100個に戻すだろう。

せっかくお金をかけて増産体制を取ったメーカーからすれば、何の得にもならない品不足である。また、スーパーにとっても、全体の売り上げが増えたわけではない。増えたのは文句を言う客だけだ。

そこで彼らはこう言うかもしれない。

「そらみたことか。一人がトイレで使う量が増えるわけじゃないんだから、たくさん作ったって、たくさん仕入れたって意味無いんだよ。品薄?どうせ誰かが買いだめしてるんでしょ」

増産や仕入れ増にあまり旨みがないことも、トイレットペーパーが品薄になりやすい理由の一つかもしれない。

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