goo blog サービス終了のお知らせ 

ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

自販機こそ優れた節電対策である

2011-04-15 11:34:03 | 政治
「自動販売機なんてやめちまえ。コンビニで買って家で冷やせ」

石原都知事の言葉だが、これは大きな間違いだ。

飲料自販機は、少ない電力で、効率よく飲み物を冷やすように作られている。小さな取り出し口、高い保冷能力を持った内部構造、緻密な温度管理プログラム。

夏場平日午後1時から4時までの冷却機能停止だけではなく、電気代を抑えるために様々な節電対策が施されている。

スーパーやコンビニの開放型冷蔵庫や、何度もドアの開け閉めをする普通の冷蔵庫を思い浮かべるだけでも、その冷却効率の高さは一目瞭然である。

従って、家庭用冷蔵庫でいつ飲むとも分からないジュースを、朝から晩まで冷やし続けるより、自販機で必要な分だけ買ってすぐに飲む方が、はるかに節電効果が高い。

そして、それだけの節電効果があって、お得だからこそ、多くの自販機が街に設置されている。むしろ、それらを積極活用して、家の冷蔵庫には出来るだけ飲み物を入れず開閉回数を抑えた方が、有効な節電対策になるだろう。

東京電力が夏場に供給できる電力5000万キロワットに対して、自販機の総消費電力は26万キロワットで0.5%程度だが、飲料メーカー、自販機メーカー、広告代理店、設置店舗など、それが生み出している経済効果は何兆円という規模に上る。

「いささか味気ない」という難点はあるが、これほど省エネ効果が高く、かつ経済効率のよい販売形態は他に類を見ない。日本人が自販機でものを買うのは、便利社会に溺れたエネルギーの浪費癖からではなく、それが優れた社会的節約術だからである。

「あんなところに、自販機なんて必要か?無駄じゃないか」という声もあるが、お金を払って不要なものを置き続けるひとがいるだろうか?

小さな雑貨屋の前にぽつんと一台ある自販機も、高速道路の大型サービスエリアにずらりと並ぶ自販機も、誰かが飲み物を買って、電気代がお得で、ちゃんと採算が取れて、それで生活しているひとがいて、多くの人に必要とされているから、そこに存在している。不必要ならとっくに撤去されているだろう。


都議会民主党は、自販機の冷却機能停止を、午前10時から午後9時に延長するよう促す条例案を提出するという。自販機はすでに節電効果を持っているが、もし規制条例を作るならば、他の業界も対象にして、20-25%程度の削減を求めるのが筋である。しかし、この条例は自販機しかも冷却機能だけを狙い撃ちにして、事実上、飲料自販機を使えなくするものだ。とくに、自販機内の温度上昇による商品のダメージを考えると、終日停止の自販機が続出する可能性も大きい。

夏場日中、すべての飲料自販機が冷却停止もしくは販売停止。公園、プール、スポーツセンター、遊園地、温泉スパ施設、海水浴場、サービスエリア、公共施設など、各所で混乱が起こるのは明らかだが、その結果得られる節電効果は、東京電力管内の他県がすべて同じ条例を採択しても0.5%である。売り上げの大幅減少など、経済的損失の大きさと併せて考えると、検討する価値すらない常軌を逸した規制案だ。

真夏の公園、使えない最新式自販機の横で、売店の奥にある、ガラス引き戸で開閉する旧式冷蔵庫のジュースを客が並んで買っている光景が、効果的な節電対策と言えるだろうか?

夏場のピーク時節電のために、真に実効性のある対策は何か。

今こそ、冷静で科学的な議論が必要である。しかし、東京都の指導層は、震災や計画停電のショックからか、誰かを悪者にして感情的に攻撃するだけで、まともな提案が出来ていない。

その結果、皆で一致団結すべき時に、逆に都民の不安や対立が激しくなりつつある。

都知事や都議会民主党は「花見は要らない」「自販機は要らない」と叫び続ける前に、まず「自分たちは必要だろうか?」と、静かに自らに問うてみるべきである。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする