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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

「パチンコと自販機を完全撤廃」の節電効果は1%程度

2011-04-11 15:15:45 | 政治
都知事四選を果たした石原慎太郎氏が、当確後のインタビューで「パチンコと自動販売機で合わせて1000万キロワット近い電力が消費されている国は日本以外にない。こういう生活様式は改めたほうがいい。」と発言した。(#注1参照)

パチンコを我慢して、自動販売機をなくせば、大きな節電効果が上がるという意見である。

本当だろうか?

東京電力管内のパチンコ店と飲料用自販機で消費される一日の総電力量はそれぞれ約400万キロワット時。従って、合わせて800万キロワット時。もし石原氏が発言通りの「1000万キロワット」ではなく「1000万キロワット時」と言うつもりだったのであれば、一日の消費電力量としては概ね正しい数字である。

一方、Yahoo!JAPANのトップページに出ているように、東京電力の電力供給能力は現時点で4250万キロワットである。この数字から計算すると、一日の供給可能電力量は10億キロワット時 (= 4250万 * 24) 程度ということになる。

つまり、パチンコ店をすべて閉店して、自販機を全部撤去した場合、東京電力が現在供給可能な電力量の約1% (= 800万 / 10億) が節電できる計算になる。

勿論、1%という数字は決して小さいとは言えない。原子力による電力供給は、3月11以前では全供給能力の30%だったのだから、石原氏が主張するように「生活様式を改めれば」原子力発電所の30分の1くらいは要らなくなる。

しかし、パチンコの全店閉店と自販機の完全撤去の結果起こる、関連企業の倒産や失業者の増加というマイナス効果を考えれば、社会全体として、到底割に合わない節電対策である。

従って、現実の政策としては、言及する価値すらない案で、端的言えば、絵空事である。

ところで、一般家庭の一日の使用電力量は10キロワット時程度だが、100ワット電灯を毎日10時間点けているのを、こまめに消して半分の5時間にすれば、家の全消費電力の5%を節電したことになる。

小さな節電を積み重ねれば、「生活様式を改め」なくとも、驚くほど大きな効果が現れるということを、石原氏は知らないようだ。


#注1
「キロワット(kW = kJ/s)」と「キロワット時(kWh = 3600 kJ)」は、本質的に意味の異なる単位なので、節電などを議論する際はどちらを使っているのか明確にすべき。発言の際、石原氏は「1000万キロワット時」というべきところを「1000万キロワット」と誤って発言した可能性がある。

ちなみに、パチンコ店の営業時間を15時間、自動販売機を24時間稼働とすれば、使用電力はそれぞれ30万キロワットと20万キロワット程度になる。Yahoo!JAPANなどに載っている電力供給能力4250万キロワットと比べる場合は、この数値を使う。
コメント (1)
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