送電網の各所に配置されたコンピューター内臓の「スマートメーター」が需要と供給のバランスを常時監視して、電力の最適な配分を行う「スマートグリッド」。停電の多い米国を中心に技術開発が進んでいるシステムだが、日本では、電力会社に「我々の電力網はすでにスマートだ」という意識が強く、積極的な研究が行われてこなかった。
しかし、今回の電力危機で、首都圏の送電網が本当にスマートなのか、疑問を感じる出来事が多発した。
計画停電の際、その地域を通る道路の信号機まで止まって、交通事故で命を落とされた方が出てしまった。また、大きな病院も例外とされず、容赦なく停電の対象になった。これは、信号機や大病院への送電ラインを一般家庭などへのラインから切り離せないことを意味する。
逆に、鉄道の変電所があるからという理由で、付近のかなり大きなエリアが計画停電から除外されている例もある。変電所への送電ラインが独立していないということだ。
結局、東京電力ご自慢の「スマート」な送電網は、鉄道、道路、病院といった必須の社会的インフラを、普通の家庭と区別することが出来なかった。
モザイクのように入り組んだ計画停電エリアマップは、需要側の社会的重要度を考慮せず、供給側が自分たちの都合で作り上げた送電網地図で、いざという時に備えて、社会基盤を支える使命感が感じられない。
緊急時、重要な社会施設への電力供給を止めないためには、分岐点ごとに「スマートメーター」を設置して、きめの細かい電力分配が可能な送電網を作る必要がある。
また、各家庭やそれぞれの事業所にも「スマートメーター」を付ければ、ある時間帯で節電可能な家庭や事業者から、同じ時間帯に大きな電力が必要な事業者へ優先的に電力を回すことも出来る。
例えば、ピーク時の消費電力に上限があるが、その見返りとして料金が安くなるコースを作れば、節電対策が進むと同時に、社会全体として「公平感のある」電力分配ができるだろう。
「スマートグリッド」は開発中の技術で、こういった送電システムの再構築には、多額の投資が必要となる。それは、利用者への負担という形で跳ね返ってくる可能性もある。しかし、原子力は勿論、火力にせよ、水力にせよ、新たな大規模電源が当分は見込めない今、供給電力を最大限に活用する送電システムの開発に、お金を惜しむべきではない。
福島第一原発事故で露呈したのは、東京電力が「原発は絶対に安全」という思い込みのもと、安全でなくなった時の備えを怠っていたことだ。送電システムについても「すでにスマート」という過信のもと、緊急時の対応策を何も考えていなかった。
その結果、すべての発電所が停止したわけではないのに、電車が走らない区間が出現し、駅が閉鎖され、道路の信号が消え、首都圏は大混乱に陥ってしまった。そして、いつ起きるとも分からない大規模停電に怯えて、経済活動は停滞するばかりだ。
深刻さを増す放射能汚染と先の見えない電力危機。
東京電力の「我々はスマートである」という思い上がりが、その出発点にある。
しかし、今回の電力危機で、首都圏の送電網が本当にスマートなのか、疑問を感じる出来事が多発した。
計画停電の際、その地域を通る道路の信号機まで止まって、交通事故で命を落とされた方が出てしまった。また、大きな病院も例外とされず、容赦なく停電の対象になった。これは、信号機や大病院への送電ラインを一般家庭などへのラインから切り離せないことを意味する。
逆に、鉄道の変電所があるからという理由で、付近のかなり大きなエリアが計画停電から除外されている例もある。変電所への送電ラインが独立していないということだ。
結局、東京電力ご自慢の「スマート」な送電網は、鉄道、道路、病院といった必須の社会的インフラを、普通の家庭と区別することが出来なかった。
モザイクのように入り組んだ計画停電エリアマップは、需要側の社会的重要度を考慮せず、供給側が自分たちの都合で作り上げた送電網地図で、いざという時に備えて、社会基盤を支える使命感が感じられない。
緊急時、重要な社会施設への電力供給を止めないためには、分岐点ごとに「スマートメーター」を設置して、きめの細かい電力分配が可能な送電網を作る必要がある。
また、各家庭やそれぞれの事業所にも「スマートメーター」を付ければ、ある時間帯で節電可能な家庭や事業者から、同じ時間帯に大きな電力が必要な事業者へ優先的に電力を回すことも出来る。
例えば、ピーク時の消費電力に上限があるが、その見返りとして料金が安くなるコースを作れば、節電対策が進むと同時に、社会全体として「公平感のある」電力分配ができるだろう。
「スマートグリッド」は開発中の技術で、こういった送電システムの再構築には、多額の投資が必要となる。それは、利用者への負担という形で跳ね返ってくる可能性もある。しかし、原子力は勿論、火力にせよ、水力にせよ、新たな大規模電源が当分は見込めない今、供給電力を最大限に活用する送電システムの開発に、お金を惜しむべきではない。
福島第一原発事故で露呈したのは、東京電力が「原発は絶対に安全」という思い込みのもと、安全でなくなった時の備えを怠っていたことだ。送電システムについても「すでにスマート」という過信のもと、緊急時の対応策を何も考えていなかった。
その結果、すべての発電所が停止したわけではないのに、電車が走らない区間が出現し、駅が閉鎖され、道路の信号が消え、首都圏は大混乱に陥ってしまった。そして、いつ起きるとも分からない大規模停電に怯えて、経済活動は停滞するばかりだ。
深刻さを増す放射能汚染と先の見えない電力危機。
東京電力の「我々はスマートである」という思い上がりが、その出発点にある。