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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

公立「夜間塾」を評価するマスコミへの違和感

2008-01-09 18:52:09 | 教育
進学塾の講師が、公立中学で、受験対策用の授業をする。週三回で、授業料は、塾に通った場合の半額程度。

杉並区立和田中学校のこの試みは、公教育に対する「いくつかの疑義」から、東京都教育委員会によって、実施が延期された。

新聞やテレビは、都教委の指導に対して、おおむね批判的である。民間企業出身である藤原和博校長のアイデアを、評価している論調が多い。とくに、私立や塾に、お金がなくて行けない子供にとって、朗報であることが、強調されている。

しかし、塾に通えないことが、低所得家庭の「出来る」子供の、一番の問題だろうか?

現在、国立大学の入学金は、30万円、年間授業料は、50万円程度である。教科書代など、大学生活に掛かる、他の諸費用を考えると、学生のアルバイトだけでは、到底まかないきれない額である。加えて、授業料免除や奨学金なども、財政悪化を理由に、年々、範囲が狭められている。

低所得層の子供は、合格しても、なかなか大学に行けないのが実情である。

また、かなりの学力を持った子は別にしても、普通程度の学力であれば、高校進学を断念するケースも、目立ち始めている。「せめて高校だけでも」という願いすら、叶わない子供たちが出てきている。

今日の朝日新聞天声人語は、都教委の指導を批判して、「国の将来がかかる人づくりで、公と私をことさら分断しても無益だ」と、書いている。

しかし、「国の将来がかかる人づくり」を、本当に憂うのならば、目を向けなければならない現実は、他にあるのではないか。

高校に行かせたいが、出来れば、早く働き始めて、家計を助けて欲しい。そんな家庭の子供にとって、月謝一万八千円の「夜間塾」の議論が、意味を持つだろうか?

お金のない子供は、塾に行けないから、困っている。塾に行ければ、問題は解決する。「夜間塾」に関するマスコミの論調は、その程度の認識にしか、聞こえない。

子供を、塾に通わせるために、年間100万円以上払っている親がいる一方で、子供に、高校進学を断念させなければならない親もいる。今の日本は、格差社会が進行して、子供たちが、その歪みに苦しみつつある。

格差を、次の世代に持ち越さないためには、思い切った財政措置が必要である。とくに、公立高校、国立大学の授業料を、出来るだけ安く抑えて、さらに、授業料免除などの支援範囲を、広げるべきである。

激しい家庭格差と国公立の高い授業料という現状を指摘しなければ、天声人語の「国の将来がかかる人づくり」という言葉も、空しく響くだけだ。



教育について、他にも、以下のようなブログを書いています。よろしければ、のぞいてみて下さい。


来年度予算案、教員千人増のトホホ


教育の本質は三つ。教師、教師、そして、教師


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