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画法「メゾチント」。

2007-06-08 21:35:55 | 美術・絵

久しぶりに、美術ネタ~

昨日母親と美術展へ行った。上野にある東京芸大の大学美術館でおこなわれている『パリへ--洋画家たちの百年の夢』という企画展を見る目的で。邦人画家でパリといえば、藤田嗣治。…くらいしか、わかる画家がいなかったんだけど、印象派の影響を受けた日本人画家の絵なんかもあって、大手の美術館ではあまり目にしないような画家たちの絵に触れられたのがよかった。

そんなに超乗り気なテンションで行ったわけではなかったわりに、昨日はかなりトキメくものにめぐり合えた!

メインの展示会場『パリへ--』に行く前に、芸大コレクション展を見てまわっていたときだったんだけど、すごく気になる質感の絵があった。小さい版画だったのだけど、何か不思議な魅力を感じて、でも昨日見たときは「なんかすごくいい、気になる!」っていうインスピレーション的なもんで、家に帰ってから調べてたら、あたしが感じた魅力はその画法に裏付けられるもので、どうやらあたしはその「画法」が紡ぎ出す質感を気に入ったらしきことが、わかった。

気になった絵とは、長谷川潔の小さな額に入った版画数点。たとえば、展示されていた絵のひとつ、『アレキサンドル三世橋とフランスの飛行船』 は、これ。↓↓

パッと見モノトーンで、版画らしいことはすぐわかったけれど、でも布地のような不思議な背景の質感と、影や輪郭になる黒の部分がとってもやわらかくて、見たことのないその質感に釘づけだった。技法が書かれている欄には、「メゾチント」、と見たこともない言葉が書かれていた。

すごく興味を持ったので、メゾチントという画法を調べてみたら、かなり手間がかかる技法であることがわかった。 メゾチントとは、「黒の技法(=マニエール・ノワール)」「黒い宝石」とも呼ばれていて、深みのある黒の質感が特長。昨日は展示がなかったけれど、同じ長谷川潔のもので有名な作品、『本の上の小鳥 静物画』なんかはもっと、メゾチントの特長が出ている。

↑↑やわらかいっしょーーー その質感は、「ベルベットのような」とか「ビロードのような」などと表されることが多く、本当に、布地などのやわらかいもので刷ったようなあたたかいテイスト。
でも実はこれが銅版だというから、あんな硬質のものからこのやわらかさが出るなんて不思議 

メゾチントは、黒バックに、白く絵柄を描いていく技法。最初に銅版全体に、縦横に細かいラインをひいていく。この「目立て」という緻密な作業が、メゾチント特有の“上質な黒”を出すには一番重要なんだとか。最初の「目立て」で美しい均一の黒のバックを作る、といってよさそう。 バックの黒の下ごしらえができたら、その目立てをした銅板に下絵を写して、絵の模様やライン部分は金属のヘラやコテで削ったり磨いたりして、その磨き方の加減で微妙な諧調を表現していくらしい。

展覧会で見た『アレキサンドル三世橋と~』はメゾチント技法にしては白地が多くてすっきりしていたので、時間をかけてバックの黒の部分を作り上げたのに、その黒を削っていろんな風景を描き込んでいったなんて、贅沢な作品ということなんだなぁきっと。それでもやっぱり、建物はすっきり描かれているのに、その分木々がこんもりしたすごく不思議な質感は、メゾチント技法の賜物なのでしょー。

美術館や美術展の楽しみのひとつは、自分の気に入った画家や絵画を見つけることで、ミュージアムショップに気に入った絵のポストカードがあれば買って帰るんだけど、今回は残念なことに長谷川潔の作品は商品化されてなかった。でもネットで調べたら、一般にポストカード集みたいなのがあったので、さっそく7&iのネットショッピングで注文。あさってころには最寄のイレブンに届くことでしょう、超楽しみっ
さらに調べていたら、現在やっているメゾチント画家の美術展を発見。6月17日まで鎌倉の美術館でやってるとゆーので、これも何かの縁、ぜひ行こうと思う! 鎌倉は今あじさいの季節だし。


昨日行った美術館のメインである『パリへ--』の展示会場でも、すごく印象に残った絵があった。昨日初めて触れた画家、山本芳翠(やまもとほうすい)の『浦島図』というもの。
構図としては、玉手箱を手にしてカメにのった浦島太郎を、侍女や童子たちが列を成して大海原を見送りパレードしているようなカンジなんだけど、何がすごいって、浦島太郎は和装をしていて顔つきも肌色もとってもアジアンなのに、それを囲う人々は、フランス絵画的なタッチで描かれている よく見ると、ギリシャ神話に出てきそうな、下半身が人魚のおじさんが貝殻の船をひっぱってたりしているし、右手奥には霞がかった竜宮城が描かれているんだけど、これが魔女の宅急便に出てきそうな、とってもモンサンミッシェルのような感じ。 山本芳翠は本格的な画技をフランスで習得したというから、日本の「浦島太郎」を題材にしときながら自分のバックグラウンドをさりげなくミックスさせるなんて、うまいアイディアだなぁと思ったし、それがうまく実現できているあたりに、心奪われちゃった。
オリジナリティーってこういうことだよなぁ、と関心させられた作品。




ひさしぶりに絵画の洗礼を受けた、なんだか大吉な日だった