茂原市ことぶき堂鍼灸院

茂原市で鍼灸治療院を営んでおります。
東洋医学や日常生活のあれこれを日々綴っています。

壽堂日記28年9月1日「鍼とお灸は熱くて痛い?」

2016-09-01 10:01:09 | 日記

鍼灸治療に見えられる方が一番心配されるのが「鍼は痛い?」「お灸は熱い?」と言うことですが、私の治療院は「積聚治療」「ビワの葉温灸」の治療を組み合わせて施術いたします。


「積聚治療」という治療法の特徴は鍼を体内に刺入しないことです。
鍼先を皮膚に押し当てるだけで「気」を動かし「病」を治療します。刺さないのですから当然痛みはありません。

鍼灸技術的には「接触鍼」と言われるものですが、何故「刺さない鍼」で病気が治療できるのか簡単にご説明して見たいと思います。

「刺さない鍼=接触鍼」でなぜ「病」が治るのか、それについては「気」と云う物の理解が欠かせません。

「気」は東洋医学の根幹をなす重要な考え方で、広い意味で人体は「気」そのものです、人間の身体は「気の重層構造」になっていて、「気」の機能が過剰になると、そこにアンバランスを生じ「万病」が生じると考えます。

「気の重層構造」の人体に鍼灸治療を行うことは「気」そのものに鍼灸をすることです、「気」の調和により万病を治すというのが鍼灸治療の大原則です。

「接触鍼」は体表の気に直接触れて治療する技法です、体表には衛気と言う気が流れていますが、その衛気を通じて、経絡の気、臓腑の気、正気、元気、陰陽の気を動かすことで「気」の過不足を調整したり正しい働きに戻すことにより「病」を治療することができるのです。

具体的な治療例を挙げて「接触鍼」による治療を説明します。
今回の患者さんは肩凝り、左腰が痛いと言うことで来院されましたが、問診すると肩凝り、腰痛、上肢痛、肩背部痛、心下部の張痛、足の冷え等の症状を訴えられました。

脈診したところ、脈は遅脈で全体的に沈。中府、尺沢、孔最、内関、魚際に圧痛。
腹部を擦診したところ、右季肋部に圧痛、臍周りに硬結、左曲骨上の圧痛が一番強い状態でした。

治療は最初に腹部に「接触鍼」をして、腹部の最も浅い気を補います。鍼は刺さりません、患者さんも「全然痛く無いです。」と言うことでした。
次に脈診をして脈調整を行います、今回は肺経の原穴である太淵に鍼をしましたが、鍼は先を当てる程度で刺入せず、気がいたるのを待って抜鍼します。

その後一番大切な証を立てるため、腹診します。「積聚治療」では腹診で証を立てます。

腹部「接触鍼」と脈調整を行った結果、右季肋部と臍周りの圧痛と硬結は解消しました。

左曲骨上の圧痛・硬結が残ったので「腎積腎虚証」として治療を進めることにしました。

背部で全体に接触鍼をして「積聚治療」の「腎虚」の順治で治療していきます。

右肩の肩井、天宗の凝り、左志室、左殿圧の圧痛が著明のため、その部分を指標として、鍼を右の背部の兪穴に当てて治療していくと、段々指標の部分の凝りが緩んできます。

患者さんが「肩が楽になりました、腰が張っていたのが緩んできました。」と教えてくれました。背部の治療もツボに鍼先を当てるだけで刺入はしませんでした。

背部の鍼を終えた後に、督脈上の命門に箱灸をして温めると患者さんが「冷たかった左足の親指まで温かくなりました。左のお尻も痛くありません。」と教えてくれました。

箱灸の代わりに「ネパール棒灸」「ビワの葉温灸」をすることもあります。「ネパール棒灸」「ビワの葉温灸」については別の機会にお話したいと思います。

背部の治療を終了した段階で肩凝り、腰痛、上肢痛、肩背部痛の症状は改善しましたので、再度仰臥位で腹部を確認すると、先ほどの左曲骨上の圧痛、硬結はほ ぼ無くなっていましたが、最後に残った硬結に意識を置き腎経の復溜に鍼を当て、患者さんに圧痛、硬結の変化を見て貰いながら鍼を操作すると「痛みが無くな りました。」教えてくれたので今回は治療終了としました。

鍼灸治療と言いますと「刺す鍼=刺入鍼」というイメージが強いのですが、「接触鍼」だけを使用する流派や「接触鍼」「刺入鍼」を使い分ける流派も数多くあ り、私の治療院では「本治法」は「接触鍼」で行い、「標治法」は「刺入鍼」も使いますが、今回は「接触鍼」だけで症状の緩解を得ることが出来ました。


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