いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

WAGYUのハンバーガー・・・和牛もイチゴもリンゴも、みな心配です。日本の農政は、かつて「NO政」と揶揄されていました。このままでは危ない。

2019年04月15日 00時21分26秒 | 日記

 いま、「サバイバー 運命の大統領」というアメリカのテレビド
ラマをケーブルテレビで放送しています。これが大変おもしろい。
 内容は、ワシントンの議会がテロで爆破され、大統領や閣僚、上院
議長ら、政治に関わるすべての人が死んでしまった。しかし、ただ
ひとり、住宅長官という最も末席に当たる閣僚が、たまたま、その
とき、議会に行っておらず、生き残った。そのため、彼が、唯一、
生存した政府閣僚として、法の規定によって、大統領に就任したとい
うのです。
 それを、裏で画策した秘密結社がいる。さて、その狙いは?とい
うドラマです。
 なにしろ、突然、大統領になり、苦労するのですが、なんとか、
やっている。そこへ、かつて大統領だった人物がホワイトハウスへ
アドバイスにやってきて、こんなことを言うのです。
 「大統領。新しくホワイトハウスに入るとWAGYUのハンバー
ガーが食事に出るのですが、もう、食べましたか?」
 大統領は、「えっ?WAGYUのハンバーガー?それはおいしそ
うですが、まだ食べてません」と応じます。
 元大統領は、「おっ、それはいけませんな。WAGYUのハンバ
ーガーを食べてこそ、大統領ですよ」と答えて、2人で、大笑いす
るのです。

 この場面で、当ブログは、驚きました。
 WAGYUのハンバーガー?
 WAGYUというのは、もちろん、和牛のことです。
 ホワイトハウスで、何か特別なときに、WAGYUが出るという
ドラマの設定になっているわけです。
 そのぐらい、和牛が、有名になっています。
 いや、それどころか、高級な牛肉として、ワシントンでも認知さ
れているということです。
 
 そんなことがあって、先日、というのは、つい2、3日前の日経
新聞ですが、衝撃的な記事が出ていました。アメリカや欧州で、す
でに、WAGYUの協会があり、品種改良などに当たっているとい
うのです。

 日本の和牛の受精卵が、中国に持ち出されそうになりました。あ
ろうことか、中国の空港で検疫にひっかかり、日本に送り返されま
した。日本から中国に持ち出そうとした和牛の受精卵が、中国の入
国検疫でひっかかるとは、ほとんど、笑い話です。
 ともかく、これで、和牛が国外に持ち出されそうになったとして、
大きなニュースになったわけです。

 しかし、なんのことはない。
 アメリカでは、テレビドラマでWAGYUのハンバーガーが出て
くるほど、すでに和牛が流通しているのです。
 しかも、和牛の協会まであるという。
これこそ、本当の笑い話です。

 日本が、和牛が国外に流出しそうだと、あたふたしていたら、も
うとっくに、和牛はアメリカや欧州に出てしまっていたというわけ
です。もちろん、中国にも、出てしまっていると見た方がいいでし
ょう。

 ところが、この騒動で、農水省は、畜産物を海外に持ち出すのを
禁止する法律がないので、とりあえず、防疫関係の法律で対処する。
そして、これからどう対処するかを考える農水省の委員会を、2月
に設置したというのです。

 あきれて、モノも言えません。
 アメリカのドラマでも出てくるほど、和牛は、すでに海外に出て
しまっている。欧米には和牛の協会まであって、品種改良も研究し
ている。
それなのに、取り締まる法律がなくて、この2月に農水省に委員
会を設置した。
 うそでしょう?というほか、ありません。

 和牛の流出は、もう、何年も前に始まったと見られます。
 そんなことは、農協も、畜産関係者も知っていて、農水省にも報
告が上がっていたはずです。
 農水省も、報告を待つまでもなく、とっくに知っていたはずです。
 危ないと思えば、すぐに、法案を作り、国会に出せばいい。
 国会では、反対があるはずもなく、全会一致で、可決されるでし
ょう。
 それなのに、何をやっていたのでしょう。
 何もやっていなかったのです。
 
 今回、中国で検疫にひっかかって日本に戻され、大きなニュース
になったから、農水省は、あわてて対応をしたのだと思います。
 ニュースにならなければ、放っておいたのではないでしょうか。

 何をやっているのかと思っていたら、今度は、やはり日経新聞に、
日本で品種改良したブドウ「シャインマスカット」が、中国に流出
し、中国で別の名前を付けられて、栽培、販売されているという記
事が出ました。

 もう、ボロボロです。

 日本は、というか、農水省は、農産物、畜産物の輸入を極力、抑
えてきました。日本の農業、畜産を守れというのです。
 代表的なものがコメです。
 コメは、かつて、GATT(現在のWTO)のウルグアイ・ラウ
ンドで、市場開放を求められ、農水省と農協は、コメは日本の文化
だといって、市場開放を拒否してきました。
 牛肉も、アメリカやオーストラリア、とくにアメリカから、市場
開放を迫られてきました。1980年代ごろまで、日本では、牛肉
は高級品でした。値段が高く、しゃぶしゃぶに牛肉を使うなど、と
んでもない。家庭でしゃぶしゃぶをするときは、安い豚肉を使った
ものです。なぜ高かったかというと、海外から輸入する牛肉に高い
関税をかけていたからです。それが、アメリカからの強い要求で、
牛肉の関税が少しずつ引き下げられた。だから、いま、牛肉は安く
なり、家庭でも、普通に牛肉を食べられるようになったのです。
 その前には、オレンジやグレープフルーツの輸入にも反対してい
ました。日本のみかん農家を守れというのです。
 
 農水省は、ほとんどすべての農産物、畜産物を、海外との競争か
ら守ろうとしてきました。
 そのため、日本の農産物市場は、長い間、徹底的に閉鎖され、消
費者は、高い農産物、畜産物を買っていたのです。

 それで日本の農家、畜産農家が育ったのなら、日本人としては、
まあ、よかったと思うところです。
 しかし、日本の農業、畜産業は、人が減り、どんどん高齢化して
います。農家が育つどころか、農業人口は減る一方です。そのため、
海外から「研修生」という名前の労働力を受け入れ、なんとか現場
を維持しています。
 
 農水省は農業を守るフリをしていましたが、実際には、日本の農
業は衰退の一途をたどってきました。
かつて、農政は「NO政」と揶揄されたことがありましたが、そ
の通りだと思います。

 ところが、それだけかたくなに輸入を制限しながら、農水省は、
日本の農畜産物を海外に売ろうとしてきました。
 海外の見本市などで、日本の和牛やぶどう、甘いリンゴ、梨、イ
チゴなどを、売り込んできたのです。海外の見本市で、海外の人が
密の入った日本のリンゴを食べ「これはおいしい!」とびっくりし
ているシーンが、ときどき、テレビのニュースで放送されます。
 そして、日本からの農産物輸出は拡大しています、というような
ことを言います。

 海外からの輸入を制限しておきながら、日本の農産物は海外に売
り込もうとする。
 おかしいでしょう。
 そもそも、その姿勢がおかしい。

 海外に売り込むとき、和牛やりんご、イチゴを、どこまで守って
いるのか、正直、心配です。
 なにしろ、海外への持ち出しを禁止する法律がないというのに、
日本の農畜産物を海外に売り込もうというわけですから、ほとんど、
ノーチェックです。

 和牛の海外流失は、起きるべくして起きたと思います。
 和牛、りんご、いちご、梨、正直、もうすでに遅いのではないか
と心配です。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿