いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

円高是正で麻生財務相に拍手を・・・円相場は市場ではなく、政治が決めるのです。

2013年01月29日 00時46分50秒 | 日記

 麻生太郎・財務相(副総理)は、失言も多い人ですが、
経済に関しては実にまともなことを言う人です。

 28日の定例会見で、麻生氏は、最近の円相場について
言及しました。
 安倍政権が発足する直前の円相場が1ドル=78円ぐら
いの円高水準だったものが、安倍首相の積極的な経済政策
で円安方向に触れ、いまでは、1ドル=90円台まで戻し
きました。
 これに対し、欧州諸国から、通貨安競争は良くないとい
う趣旨の批判めいた発言が出ていました。

 先週も、いわゆるダボス会議(正式名称は世界経済
フォーラム年次総会といいます)で、ドイツのメルケル首
相が「日本の円安は懸念がないとは言えない」と発言して
います。

 こうした動きに対し、当ブログでは、今月初めの記事で、
何年か前までは1ドル=100円の水準だったのだから、
1ドル=90円になったぐらいで円安の悪影響が心配だ
などと言わないでもらいたい
ーーと書きました。

 このまま放っておくと、また円高に戻るのではないかと
心配していました。

 そうした状況にあって、麻生財務相の発言は、欧州から
の批判に対するみごとカウンターパンチとなりました。
 どう言ったか?

 麻生財務相は、まず、2008年9月のリーマン・ショ
ックの前には、円相場は1ドル=100円の水準だったこ
とを指摘しました。リーマン・ショックで動揺した欧州と
アメリカは、ユーロ安、ドル安の政策をとりました。もち
ろん、自国通貨が安いと、輸出がしやすくなって、景気を
刺激することが出来るからです。
 ユーロ安、ドル安というのは、円高のことです。

 麻生財務相は
 「そのとき、欧米がドルやユーロを安くしているといっ
て、日本は一言も文句を言わなかった。それなのに、たか
だか、円が10円か15円戻したからといって、文句をい
ってくるのは、およそ筋としておかしい」
 とはっきり述べたのです。

 その通りです。
 これは、日本の政治家、日本の財務相としては、ひさび
さのクリーンヒットでした。

 当ブログでも、以前に書いたことを、改めて主張してお
きます。
 日本国内でも、とくに、テレビのワイドショーで、1ド
ル=90円になったのを
 「円安の悪影響が心配」
 と、実に安易に、取り上げる傾向があるのです。
しかし、それは、何も考えていない空疎な意見です。
 リーマンショックまでは、わりと長い間1ドル=100
円が続いていました。それがリーマン・ショックで円高に
振れ始め、1ドル=90円まで来たとき、テレビのワイド
ショーは、「円高で日本企業は苦境に陥る」という取り上
げ方をしました。
 それなのに、1ドル=77円の超円高から、ようやく1
ドル=90円まで戻ってきたとき、「円安の悪影響が心配」
と言うのでは、いったい、何を考えているのかといわざる
をえません。

 麻生財務相は、もともと企業人だけに、経済に関する分
野では、大変まともな指摘をします。
 今回のが、まさにそうでした。

 しかし、では、リーマン・ショック後、欧米がドル安、
ユーロ安を誘導し、円高が進んだとき、日本政府は、なぜ、
何も文句を言わなかったのでしょうか。
それが、大きな問題です。

 実は、この円高を招いたころ、政府は民主党政府でした。
 民主党政府は、円高に対して、本当に無策でした。

 民主党最後の財務相となった安住財務相は、記者会見で、
円高について聞かれ、必ず、こう答えていました。
 「円相場は、市場が決めるものですから」
 と。

 円相場は市場が決めるものという言い方は、霞が関の官
僚が好む言い方です。
 経済学的には、これはその通りです。
 しかし、官僚が、「相場は市場が決めるもの」と言う場
合、「だから、政府は、なにもできません」という裏があ
ります。もっといえば、「だから、我々役人は、何もしま
せん」ということなのです。
 そして、財務省の官僚は、新しく財務相になった政治家
に、それを吹き込みます。
 財務相は、経済政策がわかっているわけではありません
から、財務省の官僚に
 「大臣、円相場は市場が決めるものでございます」
 とレクチャーを受けると、おお、そうかと思ってしまう。
 少々勉強していても、しょせん、素人です。反論などで
きません。
 それに、記者に聞かれて「市場が決めるものです」と答
えておけば、自分の責任じゃないよということになるので、
財務相としては、気が楽です。
そこで、どんなに円高が進んでも、定例会見のたびに、
ひとつおぼえのように、
 「円相場は市場が決めるものですから」
 と答えることになります。

 ところが、為替相場は、実は、政治が決めるのです。 
円ドル相場も、円ユーロ相場も、経済ではなく、政治が
大きな影響を与えます。
リーマン・ショック後、ユーロは大幅なユーロ安になり
ました。日本から見れば、円高・ユーロ安です。
 それは、ユーロ安によって、ギリシャの債務危機をしの
ごうとしたからです。
 このとき、EUは、はっきりとユーロ安に誘導しました。

 ところが、我が日本の民主党の財務相は、安積氏がいつ
もそうであったように、無邪気に
 「相場は市場が決めるものですから」
 という発言を繰り返しました。
 安住氏は、財務相失格でした。

 欧州にしてみれば、なぜ日本は怒らないのかと思ったの
ではないでしょうか。
 日本が怒らないのなら、もっとユーロ安を進めようと思
ったはずです。

 このとき、唯一、怒ったのが、日産のカルロス・ゴーン
氏です。
 ゴーン氏は、
 「こんな円高ではやっていけない。日本政府は、なぜ、
抗議しないのか」
 と繰り返し、主張していました。

 「円相場は市場が決めるもの」
 という一見もっともな言い方は、霞が関の官僚が自らの
怠慢を隠すエクスキューズに過ぎません。

 民主党、とくに安住財務相は、本当になさけなかった。
 それに対し、官僚を制し、自ら、「円安批判は筋違いだ」
と明言する麻生財務相には、拍手を送ります。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿