いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

実は、解散した理由は「いまなら勝てる」でした・・・野党はそれを攻めきれませんでした。本当は安倍政権4年半を国民がどう判定するかです。

2017年10月22日 18時16分36秒 | 日記

 きょうは2017年10月22日の日曜日、衆議院選の投票日で
す。
 いま、午後の5時過ぎです。
 あと3時間ほどで開票が始まります。

 今回の選挙でいちばんおかしかったのは、解散の理由です。
 解散の理由があいまいだったので、選挙がどこか、実態のないま
ま、ふわふわと始まってしまいました。

 安倍首相は、解散の理由を「消費税の税収を、一部、教育などに
あて、消費税の使い道を変更するためです」と、強調していました。
 誤解を恐れずにいえば、この言い方が、実にウソっぽかったので
す。
安倍首相の解散理由を聞いたとき、私たちは、「いや、それ
は違うだろう」と感じました。「そんな解散理由じゃないだろう」
と思いました。

 では、安倍首相が衆院を解散した理由はなんだったのでしょうか。
 理由は明快です。
 それは、「いまなら選挙をして、勝てる」と思ったからです。
 それ以外にありません。
 しかし、いくらなんでも、解散の理由として、「いまなら勝てま
すから」とは、言えない。
 そこで、苦しい理由をひねり出したのです。
 
 安倍首相は、先の国会で、いわゆるモリカケ問題で、厳しい追及
を受けました。
 その結果、あれだけ高かった支持率が、急降下しました。
 しかし、その後、北朝鮮のミサイル発射など、国際情勢の変化が
あり、支持率が回復してきました。
 それなら、ここしかない。
 支持率が上がったいま、ここで解散すれば勝てる。ここで勝てば、
安倍政権の基盤をもう一度固められる。
 いましかない。
 そういうことだったのでしょう。

 安倍首相は、解散の理由を、記者会見で、そう説明すればよかっ
たのです。
 「解散に踏み切った理由は何ですか」と質問されたとき、
 「はい。いまなら勝てるからです」
 と答えれば、いちばん、すっきりしたのです。

 まあ、しかし、そうは言えない。
 だから、安倍首相の官邸スタッフが、理由を考え、「消費税の使
い道の変更」をひねり出したのでしょう。

 しかし、これは、センスが悪かった。
 消費税の引き上げは、まだ先です。
 国民は、消費税の引き上げなど、忘れています。というより、安
倍首相の説明で、あそうか、消費税って、引き上げられるんだと、
思ったようなことでしょう。

 とはいえ、「いまなら勝てるからです」とは、さすがに言えない。
 では、どう言えばよかったのでしょう。
 「いまなら勝てる」というのは、もちろん、支持率が回復してき
たということですが、それ以上に、なによりも、この4年半の安倍
政権の実績に自信があるからです。
 政権運営の実績が、毀誉褒貶があっても、国民からそれなりに支
持されているから、勝てるのです。実績が支持されていなければ、
負けます。2012年暮れの総選挙で、民主党が大敗し、自民党に
政権を譲ったのは、民主党政権の実績がひどいものだったからです。
 
 安倍首相は、解散に踏み切ったとき、
 「解散の理由は、この4年半の実績への評価を問いたいからです」
と言えばよかったのです。

 「この4年半の実績の評価を問いたい」ということは、事実上、
「いまなら勝てる」というのと、同じです。
 
 実績に自信があるから、解散しても、勝てると思っているわけで
す。
 だから、「いまなら勝てる」は、「この4年半の実績の評価を問
いたい」と言い替えられたのです。
 そうしておけば、解散理由がすっきりして、選挙も、分かりやす
くなりました。

 この4年半の実績を問う、というのであれば、野党も、
 ・ アベノミクスは成功していない とか、
 ・ 経済格差が広がった とか、
 ・ 森友学園も、加計学園も、不透明なままだ とか、
 ・ 安保法制は大事な法案なのに強行採決した とか、
 ・ 北朝鮮への対応はこれでいいのか とか、
 いくらでも問題点として、有権者に訴えることが出来たのです。

 消費税が本当の解散理由でないことは、安倍首相自身が、いちば
んよく分かっている。
 だから、選挙戦が進むにつれて、安倍首相は、消費税のことを、
あまり言わなくなったでしょう。

安倍首相も、ご本人もこれは苦しい理由だと思っていたかもしれ
ません。ところが、野党が、そこを攻めきれない。攻めきれないど
ころ、安倍首相の解散理由にまんまと乗ってしまった。
 ではどうすればよかったかというと、野党は、この選挙を、正面
から「安倍政権4年半の実績を問う」と逆に持ち出せばよかったの
です。
 安倍首相の解散理由は無視して、野党として、この4年半の政権
の実績を、ひどいと思うのなら、どうひどいかを、正面から取り上
げて批判すればよかった。
 それを、朝日新聞も一緒になって「大義なき解散だ」「大義がな
い」とやったわけですが、「この解散には大義がない」とやっても、
有権者の胸には響きません。
 だいたい、「大義」というのは、日本語としては、あまりつかわ
ない言葉です。「大義名分」とはいいますが、切り離して「大義」
とは、日本語では、あまりいわないと思います。
 大義というのは、イスラム世界の報道でつかわれ始めた言葉では
ないかと思います。

 大義なき解散だといっても、もう解散されてしまったわけですか
ら、それは、ただの引かれ者の小唄になってしまいます。

 そうではなく、安倍政権4年半の実績に、野党は、切り込むべき
たったのです。
 具体的に切り込めば、分かりやすかった。
 それをせず、抽象的に「大義なき解散」といっても、有権者には
届きません。

安倍首相は、「いまなら勝てる」と思って解散しました。
 いくらなんでもそうは言えないから、それなら、その代わりに、
「安倍政権4年半の実績を有権者のみなさんに判断してもらいたい」
と言えばよかった。
 野党も、それを、「この解散には大義がない」と1回や2回は言
ってもいいと思いますが、いつまでもそれを言ってもしようがない。
朝日新聞も同様です。そうではなく、「安倍政権の4年半は、安倍
首相がいうような実績はない」と具体的に批判していけばよかった
のです。
 結果的に、安倍首相の解散戦術に、野党も、まんまと乗せられて
しまったということでしょう。

 この解散に、たいした理由はありませんでした。
 だから、この選挙は、どこかうそっぽい感じが終始漂いました。
安倍首相も苦しい理由をひねり出したわけですが、野党も、それ
を的確には攻めることが出来ませんでした。
 
 でも、この選挙、結果的に、安倍政権の4年半の実績を、私たち
国民が判定する選挙になっているのです。
 開票まで、もう2時間を切りました。
 さあ、どんな判定が下るでしょうか。



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