いまジャーナリストとして

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君が代ーー橋下知事が君が代斉唱で起立をと主張しています。がっかりです。世界ではどうなんでしょう?

2011年05月18日 02時20分54秒 | 日記



 大阪・橋下知事の維新の会が、学校で君が代を歌うとき
には起立するという条例を提出する方針を決めました。
 橋下知事にはエールを送ってきましたが、これにはがっ
かりしました。
 100年の恋もいっぺんに冷めるというやつですね。

 公式な行事には必ず君が代を歌うべきだという人たち
は、国民が国歌を歌うのは世界中どこでも当たり前のこと
だと思っているようです。
 石原慎太郎氏など「国歌を歌うのは当たり前のことだろ」
と力説してやみません。

 何年か前、大阪でプロ野球のオールスターを見ました。
試合開始に先立って君が代を歌うので、「ご起立ください」
というアナウンスが流れました。
 私は個人的には君が代は好きじゃないので、そのまま座
っていました。周囲を見ると、座っているのは私だけのよ
うです。
 すると、後ろの席の人が、とんとんと、軽く背中をたた
き、起立を促すのです。
 無視して、そのまま座っていました。
 いやですね、こういうのは。

 では、公式な場で、国民が国歌を歌うというのは、世界
の常識なのでしょうか?
 実は、どうも、そうではないようです。

 新保信長さんというジャーナリストが書いた「国歌斉
唱」(河出書房新社)という本があります。
 世界の国で、いったい、国歌はどう歌われているのだろ
うということをルポしたおもしろい本です。
 いま「ルポ」と書きましたが、実は、新保さん、飛行機
で各国に飛んで調べたわけではありません。東京にある各
国のレストランや語学学校などを回り、そこのオーナーや
シェフ、先生たちに、国歌のことを聞いて歩いたのです。
 なるほど、こういう手があるか。
 東京はみごとな国際都市ですから、ほとんどすべての国
のレストランや店があります。

 その結果はどうだったでしょう。
 フランスのラ・マルセイエーズは、勇壮なメロディーで、
思わず奮い立ちたくなるような歌です。

 しかし、サッカーのW杯ドイツ大会の決勝で、フランス
のジダン選手は、この歌を歌わなかったのです。この歌は
戦いの歌で、フランス人を鼓舞するものです。しかし、移民
の子としてフランスで苦労したジダンにとって、あまり歌
いたい歌ではなかったようです。
 フランス語学校のロレーさんによると、「そもそも歌う
機会がない。学校行事でも歌わないし、きちんと習ったか
どうかも記憶にない」のだそうです。

 イギリスの国歌「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」もま
た有名な歌です。

 ところが、英会話学校の講師スミスさんによれば、「学
校で習った記憶はないし、入学式や卒業式でも歌わなかっ
た」と話しています。
 へえ。
 
 去年のサッカーW杯・南アフリカ大会で優勝したのは
スペインですが、なんと、スペインの国歌には、歌詞が
ないのだそうです。
 2008年の北京五輪を機に、世界のひのき舞台で歌
えるようにと、歌詞を募集し、当選作を決めたそうです。
 ところが、その歌詞が公開されると、「ふるくさい」
「陳腐だ」などと批判が殺到し、歌詞をつけること自体
をやめたそうです。
 だから、今もスペインの国歌には歌詞がありません。
 石原慎太郎氏が「どこの国でも、国歌は歌うのが当たり
前だ」といっても、スペインの人はそもそも歌詞がないか
ら歌わないのです。

 こうやってみると、世界の国では国歌を歌うのが当たり
前だーーなどというのは、とんでもない思い込みだという
ことがよく分かります。
 
 東日本大震災の被災者の避難所で、地元の中学生や高校
生の合唱団のリードで歌を歌うことがあります。
 そのとき、必ず歌われるのが「ふるさと」です。
 避難所で君が代なんて、だれも歌いたいとは思わないで
しょう。
 
  「ふるさと」。
 志をはたして
 いつの日にか帰らん
 山は青きふるさと
 水は清きふるさと

 いい歌です。
 津波で家が流され、あるいは原発事故で避難を迫られ、
いまはこうして避難所にいる。
 でも、何年後か分からないけれど、いつかきっと、
ふるさとに帰ろう、家に帰ろうーーこの歌を歌うと、
そういう思いがあふれてくるじゃないですか。
 心の支えになります。
 君が代だと、そうはいかないでしょう。
 
 どうしても国歌がいるというのなら、この「ふるさと」
はどうでしょうか。

 この優しい歌なら、そもそも、歌うときには起立せよ
とか、起立しない人間は懲戒とか、そういう空気にさえ
ならないでしょう。
 直立不動で「ふるさと」を歌ったらおかしいですものね。
 
 君が代を歌うのは当然だとか、君が代を歌うときは起立
せよとか、そういうことをいうのは、世界の国で、むし
ろ珍しいようです。
 橋下知事も、石原知事も、世界の「当たり前」をちゃん
と見てから、モノを言ってほしいですね。



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