いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)・・・オバマのアメリカは衰退が顕著です。このままでは。

2015年03月18日 11時43分01秒 | 日記

 アジアでの開発・投資をめぐり、アメリカと中国が鋭く対立し
始めました。情勢は中国優勢としかいいようのないもので、アメ
リカの地位の低下、オバマ大統領の失政が、ここでも明らかにな
ってきました。

 中国は、アジアの開発を進めるため、アジアインフラ投資銀行
(AIIB)の設立を目指しています。同じ趣旨の国際機関として、
すでにアジア開発銀行(ADB)があり、これは、アメリカと日
本が中心になって運営されています。
 AIIBは、中国が、日米に対抗して設立する国際機関で、広く
各国に出資を呼び掛けていました。
アメリカは逆に、同盟諸国に、AIIBに参加しないよう働きか
けていました。

 ところが、先日、イギリスがAIBへの参加を決め、今週に入
って、ドイツ、フランス、イタリアがAIIBに参加することを決
めました。ドイツ政府は、参加にあたり、「アジアの開発は、今後、
世界的に重要な課題になるから」とコメントしました。

 サミット参加のG7のうち、イギリス、ドイツ、フランス、イ
タリアの4か国が、中国の作る国際組織の枠組みに入ることにな
ります。残るは、アメリカ、日本、カナダの3か国だけです。
 アメリカ、日本は、苦しい立場に立たされました。

 欧州から見ると、アジアは遠いのです。
 中国は、南シナ海で、領土拡張を続けています。フィリピンに
近い南沙諸島は、コンクリートで固め、飛行場を建設している様
子が写真に撮られて公開されました。
 中国政府は、明の時代に南シナ海は中国の領海だったから、も
ともと中国のものだと無茶な説明をしています。
欧州諸国には、その無茶さ加減が、ピンとこないのです。

 東南アジア諸国でも、各地で、中国政府が資金を出し、インフ
ラ工事を進めています。このままでは、東南アジア各国は、中国
の同盟国となるでしょう。

 もともと中国は、大陸国家でした。旧ソ連とは、同じ社会主義
国同士なのに関係が悪く、軍事的な関心は、旧ソ連に対する防衛
に集まっていました。もともと大陸国家だった中国が、そのため、
一段と、大陸に関心を集中せざるをえなかったのです。
 ところが、旧ソ連が崩壊してロシアになり、中国とロシアの関
係は、改善されました。
 そのため、中国は、政治的、軍事的な関心やパワーを、大陸に
集中する必要がなくなり、関心を海に向け始めたのです。
 それが、尖閣諸島であり、もっと大きく、南シナ海です。

 元来、南シナ海は、アメリカが大きな影響力を持っていました。
 フィリピンの旧スービック基地も、大きな拠点でした。しかし、
フィリピンの反米感情で、スービック基地は閉鎖されます。
 南沙諸島は、フィリピンの目と鼻の先なので、スービック基地
があれば、中国も、南沙諸島の領有をここまで主張できなかった
でしょう。

 ちょうど、時同じくして、アメリカの力が衰退し始めました。
アメリカは、もともと財政赤字を抱える国でしたが、2008年
のリーマンショックを機に、経済的な衰退が目立つようになりま
した。
 当然、空母艦隊を世界中に派遣しておく余裕も、どんどんなく
なります。
 泣きっ面に蜂というわけで、国内では、黒人と白人の人種的な
対立が、急にひどくなってきました。きっかけは、白人の警官が
黒人の青年を射殺したことです。
 こんな人種対立を抱えてしまい、政治運営、経済運営がうまく
いくはずがありません。
 
 オバマ大統領は、大きな期待を担って登場しました。
 YES、WE CAN
 CHANGE
 は、世界的な流行語にまでなりました。

 オバマ大統領は、アメリカ初の黒人の大統領です。
ところが、ほかならぬ黒人の大統領のもとで、人種対立が激し
くなってしまった。
しかも、困ったことに、そのオバマ大統領が、激化した人種対
立に、なんら有効な対応策を打ち出せないでいるのです。

中国は、したたかです。
アメリカの衰退、オバマ大統領の力のなさなど、うまく見すか
し、まさに、そのタイミングで、アジアの新しい金融機関AI
Bを提唱したのです。
アメリカに力があれば、同盟各国に働きかけて、AIBへの参
加を阻止したでしょうが、いまのアメリカには、それだけの力
は、もうありません。

オバマ大統領は、このままでは、期待外れの大統領で終わって
しまいます。
アジアで中国の存在感を決定的にしたのは、2013年10月
にインドネシアで開かれたAPECでした。
このとき、オバマ大統領は、直前になってAPEC参加を取り
やめました。その理由がつまらないもので、ワシントンで議会
が対立し、アメリカの新年度の予算案が成立しなかったという
ものです。このため、オバマ大統領はワシントンにとどまり、
内政に対応することになりました。


で、どうなったか。
APECは、出席した唯一の超大国となった中国の独壇場とな
り、習主席が、一気に存在感を高めたのです。
APECは、アジアのほとんどすべての国が集まる会議です。
その会議に、アメリカの大統領がおらず、中国の主席が活躍s
いたとなっては、アジア諸国の間で、これからはアメリカでは
なく中国だという空気が生まないほうが不思議です。

 オバマ大統領は、後に、無理してでもAPECに行くべきだっ
たと述懐したと伝えられます。
 しかし、時すでに遅し。
 習主席が、AIBを推進し始めたのは、このAPECが終わっ
てからです。APECで、習主席は、自信をつけたのでしょう。

 とにかく、オバマ大統領は、何をするにしても、遅いし、また、
タイミングが悪い。
 中国は、そして、習主席は、それを見すかして、また、タイミ
ングよく、そこに突っ込んできます。
 AIBは、そのシンボルのようなものです。

 このままでは、アジアで、中国の存在感は、いよいよ大きくな
るでしょう。
 アメリカは、衰退から抜け出せないでいる。
 日本は、相当に腰を入れて対応しないと、困った状況に追い込
まれます。一番いけないのは、「何もしない」ことでしょう。日本
の外交は、これまで、「何もしない」ことが基本でした。それは、
アメリカという大きな存在があったから、許されたのです。
 これからは、もう、「何もしない」ではやっていけなくなりそう
です。