いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

猪瀬都知事の5000万円・・・まったく同じような話がかつて千葉でもあり、知事が辞任しています。

2013年12月12日 01時22分24秒 | 日記

 猪瀬都知事が、徳田議員から5000万円「借りた」と
いうので、大問題になっています。
 猪瀬知事は、「個人的に借りただけ」「5000万円は返
した」と説明していますが、この説明で納得した人は少な
いでしょう。

 まったく同じようなことが、かつて、お隣りの千葉県で
も起きました。今回は、その話です。

 1981年1月、新聞が、
 「千葉県の川上知事 5000万円を受け取る。不動産
業者から」
 という大スクープを掲載しました。
問題は、5000万円を受け取る際、川上知事が
 「当選したら、便宜を図ります」
 という趣旨の念書を書き、その不動産業者に渡していた
ことでした。
当選したら便宜を図りますという念書を書くこと自体、
とんでもないことです。

 この記事で千葉県は騒然となります。
 記事が出た日、川上知事は記者会見を開き、5000万
円を受け取ったことを認めました。
 しかし、5000万円はあくまで政治献金であると説明
し、やましいところはないと主張しました。

 この会見で、当然、念書について質問が出ます。
 すると川上知事は、念書を書いたことは間違いないと認
めました。
 ただし、念書は、いま手元にあるといって、おもむろに
その「念書」なるものを取り出し、記者団に見せたのです。

 当時、政治資金の規正は、いまより甘く、5000万と
いう大金であっても、政治資金であれば、その額が問題に
なるわけではないという感じでした。

 しかし、「便宜を図る」というような念書を書いたとす
れば、さすがに問題です。収賄になりかねません。
 記者団に念書を見せた知事の説明は、便宜を図るという
ような念書ではないというものでした。
 
 さあ、どちらにしても、これは大事件です。
 千葉県議会は、連日、知事との質疑で紛糾します。

 これを、川上知事の5000万円念書事件といいます。

 どうですか。
 猪瀬都知事の5000万円借用の話と、そっくりでしょ
う。
 ほとんど、デジャブみたいなものです。

 第一に、金額がどちらも5000万円で一緒です。
 第二に、川上知事のは「念書」、猪瀬知事のは「借用書」
で、どちらも、本人がその紙を会見で見せました。
 第三に、川上知事も猪瀬知事も、5000万円受領した
ことについて、一生懸命、弁明していることです。
そして第四に、この「念書」と「借用書」がどこまで本
物なのか、わけが分からないということです。
 
 実は、川上知事が会見で見せた「念書」なるものは、そ
の後、何通りかあることが判明しました。
 というのは、念書を受け取った不動産業者が、自分に都
合のいいように、オリジナルな念書をはさみで切り、切っ
た部分を入れ替えて、のりではり合わせるというようなこ
とをしたらしいのです。
 そのため、オリジナルな念書が残っていないという困っ
たことになってしまいました。

 では、川上知事が会見で見せた「念書」は何かという問
題になりますが、このとき、知事は、念書を取り返したの
ですというような言い方をしています。
 どうやら、すでにその時点で、オリジナルな念書ではな
かったということのようです。

 オリジナルが残っていないため、念書の真偽は、あいま
いなままになりました。
 猪瀬知事の「借用書」も、そもそも、いつ書いたのか、
だれが書いたのか、疑問がいくつも出ています。多少状況
は違いますが、「念書」と「借用書」の真偽をめぐる疑問
は、実によく似ています。

 川上知事の5000万円は、千葉地検が関心を示した時
期もあったようですが、結局、事件にはなりませんでした。

 川上知事は、その後、ずっと、身の潔白を主張します。

 しかし、議会は紛糾が続きます。
 なにより、県民は、川上知事に不信感を抱きました。

 結局、川上知事は、完全に信用を失い、みずから、辞任
の道を選びました。

 猪瀬知事の5000万円の借用の話は、なにやら、驚く
ほど、川上知事の5000万円と似ています。
 両者、潔白を訴え続けたこともそっくりです。
 しかし、川上知事は、あらゆる部分で信用を失い、辞任
せざるをえなくなりました。

 猪瀬知事も、結局のところ、同じように、いずれは辞任
せざるをえないのではないか。
 そう思えてなりません。