いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

特定秘密保護法案が衆院で採決されました・・・安倍首相は何か勘違いをしています。

2013年12月01日 21時58分01秒 | 日記

 陸前高田と気仙沼の続きを書かなければならないのです
が、うろうろしている間に、政治・経済で、ニュースが
相次ぎました。
 陸前高田の続報の前に、先に、そのニュースを取り上げます。

 第一に、特定秘密保護法案です。
 結論からいえば、私は、この法案には反対です。

 まず、国会での審議の過程から、反対をしておきます。
 この法案が衆議院を通過したのは、ほとんど強行採決と
いっていいものでした。
衆院の委員会に安倍首相が出席して答弁し、退席した。
それを待っていたかのように、いや、実際に首相の退席を
待っていたのですが、そこで委員長が「採決します」とや
り、野党の反対を押し切って可決してしまった。
 そして、そのまま衆院の本会議での採決に持ち込み、本
会議でも可決してしまったわけです。

 これだけ重要な法案を、どうして、こうも力ずくで可決
させなければならなかったのでしょうか。
 いま、このときに、あえて強行採決を図る意味は、あり
ません。この法案は、それほどの緊急性を持っているもの
とは思えないのです。

 安倍首相は、この国会での重要テーマを、デフレからの
脱却としていました。
特定秘密保護法案は、決して、重要テーマとしては挙げ
られていなかったのです。

 安倍首相は、高い支持率を維持しています。
 衆院、参院の両院で多数の議席を持っています。
 「決められない政治」からの脱却は、実現しました。

 そうしたことを背景にして、力押しで、法案を通したの
でしょう。

 しかし、私たち国民が、「決められない政治」からの脱
却として、思い描いていたのは、こんな強行採決をするこ
とではないでしょう。与党が、多数議席を背景に力ずくで
法案を通す姿を、国民は求めていたのではないと思います。

 国会での多数を頼み、政府が出す法案を強行採決するこ
とが、「決められない政治からの脱却」であるはずがあり
ません。

 安倍首相は、どこか、勘違いしていると思います。

 安倍首相の支持率が高いのは、アベノミクスと呼ばれる
経済政策が成功し、日本経済が浮揚してきたからです。
 経済政策の成功が、高い支持率となっているのです。

 それをいいことに、ほかの政策もすべて、国民から支持
されていると考えるのは、間違っています。

日本は、戦後長い間、経済の成功によって、国際的な地
位を築いてきました。
 経済規模がアメリカについで世界第二位の経済大国にな
ったからこそ、日本は、国際的な発言力がつき、国際的な
地位も上がったのです。
 もちろん、それは、両刃の剣であり、政治や外交、安全
保障の分野では、正直、国際的に高い地位を得たわけでは
ありません。

 そこにきて、バブルの崩壊で、経済力も落ちてしまった。
世界第二位の地位も、中国に奪われ、世界第三位に後退し
た。

 政治、外交、安全保障では力の弱かった日本が、肝心の
経済で力を落とすと、国際的には、アピールするものがな
くなってしまう。
 それが、この10年ほどの日本の状況でした。
 とくに、民主党政権の間はひどかった。

 そこへようやく、アベノミクスで日本経済が復活してきた。
 安倍首相は、この秋、ニューヨークで、
 「Japan is back」 
 と演説し、拍手を浴びました。

 そうです。
 日本は、たしかに、戻ってきました。
 しかし、それは、日本経済が戻ってきたということなの
です。
日本経済は復活してきた。

 いや、まだ、復活の途上でしょう。
 いま、安倍首相がするべきことは、ようやく復活してき
た日本経済を、たしかなものにすることです。
 日本の国際的地位を高いものにしてきた経済力を、確実
に復活させることです。

 ですから、この国会で、当初、「デフレからの完全な脱
却」を掲げたのは、まったく正しかったのです。

 ところが、どうしてものか、安倍首相は、
 「Japan is back」
 を、経済ではなく、
 政治、外交、安全保障の分野で実現しようと考えてしま
ったようです。

 そこで突然、「経済」を脇において、「特定秘密保護法案」
を表に出してしまった。

 特定秘密保護法案で、安倍首相は、とくに、外交、防衛
を念頭に置いているのでしょう。
 日本が、政治、外交、防衛、安全保障で、国際的に活動
するのは、この法案が必要だという考えのようです。

 しかし、日本経済の復活は、まだ途上です。
 この法案で、与野党対立が激しくなり、国会が荒れてし
まえば、政治の力が、経済からはずれてしまいます。
 いまここで、経済が失速するようなことがあれば、元も
子もありません。

 特定秘密保護法案は、ただでさえ、問題の多い法案です。
 それは別の機会に論じますが、問題の多い法案を、いま
ここで、強行採決する意味というのが、本当に、分からな
い。
 これでは、この先、政府は、すべての法案を、同じよう
に強行採決するつもりなのかと、思われてもしようがない
でしょう。

 中国や韓国との関係は、かつてないほど、悪化していま
す。
 しかし、中国や韓国との外交交渉を進める際に、特定秘
密保護法は必要ありません。

 衆参両院で多数を取れば、結局はこうやって力押しする
んだと国民が思えば、次の選挙で、与党はまた負けるでし
ょう。
 そうなると、また、「決められない政治」かということ
になります。

 国民が与党に多数を与えたのは、こんな力ずくの政治を
してもらいたいからではありません。
 安倍首相は、そこを勘違いしてはいけません。