いまジャーナリストとして

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日本はなぜ誤解されるのか(2)・・・フォリン・アフェアーズのリンド論文の後半です。

2013年02月08日 23時48分14秒 | 日記

 フォリン・アフェアーズのリンド論文の続きです。

 リンド准教授は、日本の姿を正しくとらえることが重要
だと指摘します。

 リンド氏は、国のパワーを測る尺度を次のように定義します。
 すなわち、

 「数百年にわたって、国のパワーは、 
 ・ 経済生産力(GDP)
 ・ 一人当たりの富
 ・ 人口の規模
 ・ 技術基盤
 ・ 政治的安定
 
 ーーによって形作られてきた。
 
 ・ 民主主義国家であるかどうか
 を加えることも出来るだろう」

 というのです。 
 
 ここには6つの要素が挙げられています。 
 その6つの要素を指摘したうえで、リンド氏は、次のよ
うに続けます。
 「この6つの要因のすべてで、日本を上回っているのは
アメリカだけだ。
 欧州では、経済力と人口において、日本を上回る国はな
い。
 たとえば中規模パワーであるイギリスは、人口でもGDP
でも、日本の半分程度にすぎない。
 欧州のパワーの中核であるドイツでも、人口とGDPの
規模は、日本の3分の2程度だ」
アメリカを除けば、欧州においても、日本を上回るパワ
ーを持つ国はないというわけです。

 では、中国はどうか。
 「6つの要素で日本をしのごうとするプロセスにある中
国は、ファンダメンタルズ面で、大きな問題を抱えている。
 すなわち、中国は膨大な数の勤勉な人口を抱え、GDP
も日本を上回る規模に達しているが、民衆の多くは依然と
して貧しい。
 政府は政治腐敗にまみれており、いまや、政治的安定を
維持していけるかどうかさえ、分からない状態にある」
 
 そこで日本です。
 「もちろん、日本も問題を抱えている。
 人口が高齢化し、労働力も低下している。
 この13年間で9つの政権が誕生するほど、政治は混乱
している。
 しかも、近隣諸国との歴史論争が間欠泉のように吹き出
す」
 これらは、日本人ならだれでも感じている弱点です。

 しかしと、リンド氏は言います。
 「ただ、こうした課題を抱えていても、日本は豊かだし、
民主的な社会を持っている。教育レベルも高く、力強い防
衛力も持っている」

 そのうえで、リンド氏は、日本を正しく評価することの
重要性を強調します。
 「その実像を見据えて日本のポテンシャルを見極め、こ
の国をノーマルにとらえれば、日本がいかに有意義なパワ
ーを持つ国であるかが、理解できるはずだ」
 日本は決して、衰退する国家ではないというわけです。


 次は、非常に示唆に富む指摘です。

 「もし、日本を(単なる何もしない)平和主義国家と
みなせば、東アジアにおいて日本が果たせるノーマルな
役割を見落としてしまう」

 「一方で、日本を軍事国家とみなせば、真のパートナー
として信頼するのをためらうようになる」
 
 世界は日本を、
 ただ何もしない平和主義国家か
あるいは
 ナショナリズムが台頭しかねない軍事国家か
 そのどちらか、極端な見方でしかとらえない傾向
あるーーというのです。

真理は中間にありーーです。

世界は日本を、どうして、もう少し素直に、ノーマル
に見ることができないのだろうか。
 日本をもっとノーマルに見よう。
 それが、リンド論文の核です。

 「この60年にわたって、日本は能力以下の活動しかし
てこなかった。安全保障をアメリカに依存してきただけで
はなく、安全保障政策を同盟関係の枠内に収め、ジュニア
パートナーの地位に甘んじてきた。
 アメリカも、同盟関係における日本の役割を最低限に抑
えるのが最善だと考えてきた。戦力は我々が提供するから、
日本は基地を提供してほしい、と言ってきた」

 そして、リンド論文の結論です。 
 「日本がそのポテンシャルをもっと生かすために、
日本は同盟関係や国際政治におけるノーマルな役割を
どう果たすべきか。
 ワシントンと東京は、それを考える時期に来ている」

       ***
 
 日本はなぜ誤解されるのか。

 「日本を、特殊な見方でとらえるのではなく、
日本を、ノーマルに認識しよう」
 
 示唆に富む論文でした。