いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

沖縄防衛局長の暴言・・・まず、オフレコ懇談のこと。次に、官僚と政治とのこと。

2011年12月01日 12時11分22秒 | 日記

 沖縄防衛局長が、記者懇談で、沖縄に対する暴言を吐
き、更迭されました。
 更迭は当然といえば当然なのですが、しかし、この話
は、ひとつ、大きな問題をはらんでいます。
 それは、この発言が記者会見ではなく、「記者懇談」
のものだったということです。
 
 まず前置きしておきますが、この局長の発言は、許さ
れるものではありません。
懇談の翌日の朝刊でこの発言を報じた琉球日報は、
「犯す前に、これから犯す、ということはない」と局長
が発言したと伝えました。
一方の局長は防衛庁で事情を聴かれ、「やる前に、こ
れからやるということはないーーというような言い方
をしたが、犯すという言葉は使っていない」と答えまし
た。局長は「犯すという言葉は使ってないが、その場の
空気では、そう受け止められてもしようないかもしれな
い」と説明したということですから、そういう意味で使
ったのでしょう。だとすれば、やはり、許されることで
はありません。

さて、そこで、「懇談」です。
懇談に際し、局長は、これは「完オフですからね」と
釘を刺しています。完オフというのは、完全オフレコの
ことです。
「懇談」は、「オフレコ」とセットになっています。

 オフレコというのは オフ・ザ・レコード の略で、
記録には残さないという意味です。
 記録に残すのであれば、「会見」になります。

 ですから、本来は、懇談=オフレコなのですが、最近、
この了解が崩れてきているのです。
 
 オフレコの懇談で話された内容を書くべきかどうか
というのは、まことに微妙な問題です。
 普通は、書くときは、発言者の名前を出さずに、「政
府筋」とか「防衛庁幹部」とか、そういう表現をします。
最近は、いきなり名前を出すようになってしまいました。
福島に視察に行って帰ってきた夜、議員宿舎で、取材
に来た記者に「(放射能)つけちゃうぞ」といって自分
の服を近づけた経済産業相がそうでした。

こういうオフレコ、オフレコ懇談で困るのは、発言の
内容がはっきりしないということです。
今回も、居酒屋で懇談をしたそうですが、たまたま局
長の近くに座った記者は発言を聞けたでしょうが、ちょ
っと離れた所に座った記者なら、何といっているのは、
よくは聞き取れなかったでしょう。にぎやかな居酒屋で、
ちょっと離れた人の声なんて、聞こえません。
今回も、もうひとつの地元紙、沖縄タイムズは、「記
者は懇談に出席したが、局長と離れた所にいたので、発
言内容がよく聞き取れなかった」としています。たぶん、
それはその通りだと思います。

また、非公式の懇談だからというので、出席しない記
者も当然います。今回は、朝日新聞が「当社は、記者が
懇談に出席していなかった」としています。

では、懇談とはいったいなんでしょうか。
昼間はなかなか言えないことを、「今度、ちょっと食
事でもしましょう。そのときにでも、また改めて」とい
うことが、よくあります。
それを、何人かでまとめてやれば懇談になります。

こういう懇談というのはよくあるものです。
この手の話になると、すぐに、日本の記者クラブがど
うのとか、そういう話になりますが、しかし、アメリカ
にも欧州にも、この手の懇談は、あります。
G7サミットなど国際会議では、しょっちゅうです。
G7の会議のあと、各国政府は、どの国の記者でも入
れる記者会見を開きます。同時通訳を入れて、大勢の記
者が参加します。
しかし、各国政府とも、自国の記者には、自国の立場
をよくわかっておいてほしいので、公式の会見のあと、
必ず、自国の記者向けに懇談を開きます。それは、日本
も、アメリカも、イギリスも、事情は変わりません。

しかしながら、今回、沖縄防衛局長が、どういう言葉
を使ったにせよ、沖縄のことを、政府の都合だけで考え
ているーーということは、はっきり分かってしまいまし
た。局長のいうのは、結局のところ、沖縄がどう考えて
いるかは知らないが、政府が何かを実行するときは、あ
らかじめ知らせたりはせず、政府の都合で実行しますー
ーということです。

この話は、もうひとつ、大きな問題があります。
沖縄防衛局長の暴言を、自民党や公明党は、鬼の首を
取ったようにして、攻撃しています。
しかし、この局長、防衛庁に入ったのは自民党政権の
ころで、その経歴の大半は、自民党政権の下で築いたも
のです。
だから、この人の考え方は、長い間の自民党政権の考
え方でもあったといえるのです。

たぶん、この人は、いまが自民党の内閣であったとし
ても、同じような発言をしていると思います。

この人は、官僚です。
官僚というのは、政治がどう変わっても、考え方を変
えません。この人の様子を見ていると、つくづく、そ
う思います。