椰子(やし) は、食用にできる実だけでなく
葉も木もあますところなく活用されている。
バリ島は、ヒンズー教徒の割合が高い。
上の写真は、そのお祭りの時に、村中で一斉に作る飾り。
太い竹に、椰子の葉で細工した飾りをつけて、
お寺を中心に、メインストリート沿いに何本も立て飾る。
下の写真も、お寺に飾る祭事用の飾り。
バリ ヒンズーの人々は、
毎日、椰子の葉やバナナの葉で小さなかごを編み、
お米や豆や小さな花などをのせて、
土、水、木. . . . やおろずの神々にお供えをする。
その数、1日に30個とも。
天然素材の器だから、中身もろとも
生物が分解して、すぐに自然界に還っていく。
小さい時から、丁寧に、毎日繰り返していること。
知り尽くされた椰子の葉は、その指の動きに逆らわず、
目にも留まらぬ速さで、美しい立体形に生まれ変わって行く。
椰子は、木材としても大変重宝されている。
家の柱をはじめ、さまざまな建材としての用途、
くりぬいて、器としても使われる。
これは、海塩を干すための容器。
さて、最後に、椰子の実を食べたあとの殻の話。
まず、外側のモケモケの繊維は、日本でおなじみの
亀の子たわしの材料である。
椰子は、殻さえ いろんな活用方法がある。
ここに書くのは、一週間の滞在中、私が見た限りのこと。
秦泉寺さんに教わった、ココナツ染めの行程
殻を2時間ほど煮出す。
美しい色を抽出するには、直火の強い火力が必要。
燃料として、椰子の葉も大胆に。
煮出した染め液に布を入れ、
回しながら、じっくり色をしみ込ませていく。
染まったら、何度も水にさらして
色をととのえる。
太陽の下で乾かして、
ココナツ染の布が完成。
少しえんじ色かかった、ピンク色。
あの椰子の木のどこに入っていたのだろう、
こんなにきれいなピンク色。
さて、出がらしの椰子の殻は、
最後に燃料として活用される。
その熱量で、おいしい地鶏を焼いて頂いた。
ついに灰となった椰子は、土の栄養となり、
次の椰子につながっていく。
ひとつの命が、あますところなく燃焼する。
自然のいとなみの中に、人間が在る。
そこに文化を作り出し、
生活の中に愉しみを取り入れる。
共存と創造のすばらしいバランス。
生まれてきて、朽ちていく
作り上げて、放出する(あるいは破壊される)
くりかえす、くりかえす、
なんていさぎよいのだろう。
この創造と崩壊のくり返しが、
やがて美しい姿となって現れてくるということを
バリ島は教えてくれた。
バリ島の話、おわり