語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


バリ島日記 Ⅵ 秦泉寺 由子さんの世界

2010年02月14日 | 旅日記
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キルト作家であり染色家である、

秦泉寺 由子(じんぜんじよしこ)さんが

バリ島に染色のためのスタジオを作りはじめたのは、

1980年代前半のことである。

長い年月をかけて、地元の自然素材を使って

家や作業場を作り上げてこられた。


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植物が生い茂るスタジオは、精気に満ちている。

ここで、島に自生する植物たちから色彩を取り出し、

布や糸に移し込んでいくという作業をおこなう。



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秦泉寺さんは、ここで染色をし、のちに京都の家に運び、

美しいキルトの作品を作り上げるのだ。

そのキルトには、大自然との濃密な交感から生まれる

普遍的な美と、力強さが存在する。

抽象的なデザインに、自然界の光の彩のリズムが

そのまま表されているように感じられる。


残念ながら、その素晴らしい作品のほぼすべてが

すでに欧米の美術館、博物館に永久保存され、

日本では今、見ることができなくなってしまったが、

いくつもの写真集に記録されている。


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ハマゴウの葉を火にくべる、秦泉寺さん。

虫よけに効果があるという昔ながらの知恵を

現地の人たちから聞き出し、その習慣にのっとる生活。


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ヤシの葉を燃料に、染色のための湯をわかしているところ。

この大鍋に、色の原料を入れ、煮出す。

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染色した布を水にさらすための桶(バスタブ)

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染料を濾すための布。


秦泉寺さんは、バリの地を踏んで以来、

染色の材料となる植物を探し出すために、

並外れた情熱と行動力を持って、

ジャングルの奥地や、周囲に点在する未知の島々へ

果敢に足を運んだ。


蘇芳(すおう)から出る鮮烈な赤

ソガの木から出る眩しい黄

島の藍から出る海のような青


現地の人々が大事に守ってきたものだから

わずかな無駄も出さず、随まで使い切る。

その厳かな精神が、作品に反映されている。

自然にお返しをするような、美しいキルト。


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秦泉寺さんの色への探求は、

ついに未開の色、「白」へと向かっていく。


白の話につづく


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