語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


奥能登 美しい宿の、静かな時間

2014年10月20日 | 能登の花
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能登の大好きな宿「さか本」

玄関のしつらえが、いつもさりげなくて、美しい。

その日は、野山から摘んできた

野紺菊(ノコンギク)がどっさり生けてあった。




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自然林に囲まれた静かなお宿。

犬やニワトリがのびのび走り回っていたりする。

竹やぶの奥から、お寺の鐘が響いてきた。

あとは風の音。


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今回は、あるじの坂本さんに会いに少し寄っただけ。

良い炭焼き職人さんを教えていただいた。

ここは、どのお部屋にも火鉢、

のんびり炭いじりを堪能できる。

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お料理は、どの季節もすばらしいけれど、

今は、能登の松茸がおいしい季節。

全国から食通が、この隠れ家を訪れるようだ。














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これから周囲の山紅葉が燃えるように輝き、

全部散って、雪がちらつく頃、

このお宿はいつものように冬ごもり、

3月まで、静かにお休みです。

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奥能登、峠の製炭工場

2014年10月13日 | 能登の花
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能登半島の先端へ行く山道、峠のあたり、

志高い、若き炭焼き職人に出会った。

父から引き継いだ技術と

自力で飛び込んだ芸術的な領域。

上の写真は、茶道用に焼いたものの、

中心が少しずれていたり、

皮がはがれかけていたり、

節があったりして規格外、

納品できなかったものだそうだ。

それでも充分美しい。

6~7歳の椚(くぬぎ)。


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あらゆる木から炭ができるそうだ。

山桜、椚、楢(なら) . . .

美しい空気と水で育った木々。

厳しい冬に耐えた強さも。


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能登の自然とともに生きる

炭焼き職人、大野長一郎さん。

10数年前に創業者のお父さまが亡くなり、

若くして工場を引き継ぐことになった。




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稼働中の窯、入り口。

土でぴったり塞いである。

窯焚きは、5日間もかかるそうだ。

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二つの窯を神様が見守る。

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神棚の下にある大きな火鉢には、

神聖な火が灯してあるそうだ。

24時間、火を絶やさない。

その火を守り続けている。




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「火を守ることがこれほど難しいとは思わなかった」と。

気を抜くと惨事にもつながる火、

身を律するために、心の中心においてあるのだろう。


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一緒にこの道を引き継いだお母様と。




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てきぱきと、阿吽の呼吸の親子。

仕事の手を止めて、炭の話をする時は

二人ともとても柔和な表情で、

炭への愛情が伝わってくる。


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焼けた炭を出して、掃き清められた窯内。

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カットされる前の炭

美しい光を放っていて、しばし見とれる。







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昔から、製炭業は

山を守ることにも一役かってきた。

燃料革命で激減し、

おまけに安い外国産に圧されて、

国産の炭は窮地に追い込まれているらしい。

私は、火を点けたら悪臭を放つ舶来炭にこりた経験もあり、

良質な炭をさがしていたところ、知人のつてで

大野さんに出会うことができた。



冬の花仕事に、火鉢は欠かせないから。

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大好きな能登で育った木で、

こんなに心を込めて作られた炭ならば

心まで温まりそうな気がする。


冬になるのが待ち遠しくなってきた。






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大野製炭工場


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美しい さいはての地~奥能登・珠洲

2014年09月21日 | 能登の花
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さやわかな風が吹く休日、

ふと思い立って能登へ。

碧く高い空に、ぽっかりスコールの雲が浮かぶ日。

雲は、気ままに移動しているようだ。










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夏から咲き続ける花々は

たっぷり陽にあたって、ひときわ艶やか。

でも能登に咲く花々は、どこか優しげな表情をしている。

「能登は優しや 土までも」

という言葉があるけれど、その土で育つ花までも。



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海辺に咲くコスモス。

可憐な花を支えるのは、

しっかり張った根と、しなやかな茎。

海からの風に大きく揺れても

足元はゆるぎもしない。



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美しい初秋の風景を楽しみながら、

あっという間に、能登半島の先っちょ、木浦海岸へ。




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ちょうど一年前、ここで映画の撮影が繰り広げられていた。

その映画の公開はまだ少し先、今は静かな海。

この小屋は、何もなかった原っぱに、

映画のために建てられたもので、

古い舟小屋を改装し、

珈琲屋の営業をはじめた女性の物語が展開する場所だ。


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撮影はとっくに終わったけれど、

地元の人たちが大事に見守り続け、

瓦がとばないように、

漁師さんが漁網をかけてくれたそうだ。






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すぐそばにそのモデルになった「二三味(にざみ)珈琲」の小屋がある。

舟小屋を自力で改装した、海辺の焙煎所。

ここは小さな入江になっていて、

荒波の印象強い能登でも、おだやかな海。






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ほんとうに綺麗な海水、

おいしい魚介や海藻がとれるところ。




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小さな入江の小さな集落。

家々の黒い瓦屋根が、西陽に反射して美しい。

そして家のまわりは花でいっぱい。




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能登半島の外海、西陽を追うように、帰路。

空模様は めまぐるしく移り、

海の色も刻々と変化していく。




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神仏のよりどころが

ごく身近にある暮らしを垣間見る。

山にも、海にも、花にも、

あやゆるところに 神がおわすのを感じつつ。

そして、田畑にも。






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美しい人のいとなみにも、神が存在する。

陽を浴びた ふくよかな稲の香り。

能登の農業は、日本ではじめて世界農業遺産に認定された。

豊かな土に恵まれているものの、

過酷な自然環境の中で、工夫を凝らした作農。

植物も、必死に根を張って、力いっぱい命を燃やす。

だから能登のお米、野菜はすばらしい。

滋味深く、体を元気にしてくれる。

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分厚いスコールの雲間から

すべてを金色に染める光が、一瞬。

ほんの半日だったけれど、

心に滋養が染みたような旅だった。








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珠洲の夏 ⅰ

2013年08月28日 | 能登の花
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田中一村の天井画

2013年08月25日 | 能登の花
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田中一村の天井画が、「やわらぎの郷」の小さな御堂にもどってきた。

県内外の美術館での展示を終え、修復された美しい状態で。

実家のとなり町、宝達清水町にあるこの場所は、

ひっそりと、訪れる人も少なくて、気のすむまで絵を眺められる。

49枚の植物画は、田中一村が40代のころ(奄美大島に移住する前)

ここで寝泊まりし、近辺の野山から集めた薬草を描いたもの。

素朴な植物ながら、一枚一枚の構図の美しさ、躍動感、

何度見ても見飽きない。







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当時、千葉で苦しい生活を送っていた孤高の画家に

天井画を依頼し、石川にいざなったのは 施設の創始者、北橋茂男氏。

大阪で洋食店を営み財をなした人だが、

健康な「食材」に対するこだわりから、

身近な植物の中から、食材となる薬草を

この聖徳太子を奉る御堂の天井に描かせたのだそうだ。





一番奥の絵に、一村のサインが。

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北橋氏のおかげで、一村は新境地をひらき、

世にも珍しい、薬草の天井画が後世に残された。

しかもここは一年中、無料開放されている。

なんてありがたいこと。



園内には、一村が2ヶ月ほどの制作期間中、

滞在していた小さな家も残されている。

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それからもう一つ、別棟の道場に残された作品が。

仏壇の地袋に描かれた白い蓮の花の絵、

これも展覧会での展示から一緒にもどってきた。



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美術館でのよそいきの顔でなく、

絵が、生活の中で息をしている。

描かれた蓮の花が、匂い立っている。






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美術館に収蔵されるという話もあったようだが、

こうして作品が本来の場所にもどってきた。

そして、ここの光のうつろいとともに

表情を変えてはたのしませてくれる。


やわらぎの郷

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