語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


能登の桜

2010年04月23日 | 能登の花
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よわい霧雨が降っていたが、

どうしても桜に会いたくて、能登へ。

能登の桜は、例年、金沢の桜より一週間ほど遅れて

見頃を迎える、というのが一応の目安。


ただし能登の桜の魅力は、

一斉にひらくソメイヨシノなどの華やかさとは異なり、

自生する山桜の、一様ではない色合いや、

のびのびと枝を伸ばす、その大らかな姿にあると思う。

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普通の民家の庭や、田畑のまわりに、

その生活を見守り、ともに生きているような桜が

そこここに在る。

桜と一緒に、桃の花も真っ盛り。

下の写真は、白い桃の花。

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輪島市の山あいにある小さな集落、

石休場(いしやすみば)という町に、

大きな大きな八重桜があると聞き、

田舎道をたどっていく。

その桜は、道沿いに迫力の存在感で立っていた。

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50年ほど前、京都の平野神社から移植されたそうだ。

工事のための伐採を免れ、

能登の地で生き延びることになった。


のどかな田園風景に、力強く根を下ろし、

ゆったりと枝をひろげ、

まるで村の守護神のように、そこにたたずんでいる。


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道路の向かいには、

鮮やかなしだれ桜も植えられていて、

華やかな響宴、幻想かと思うほどなのだ。

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この巨木に近づいてみると、

幹の力強さに相反して、

なんとも はかなげな花が咲いている。


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やさしく重なり合う花びらは、

雨つぶに潤み、かすかにうち震えて、

消え入りそうな美しさ。

その名を、「手弱女(たおやめ)桜」と言うそうだ。





さて、さらに能登の奥地へすすむ。

半島の海岸線を外側になぞっていき、

先端の珠洲市へ。


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若山地区にある、正福寺(しょうふくじ)の

有名なしだれ桜を拝見。

週末には恒例の、桜の宴が催されるという。

地域の人々がその桜のまわりに集まり、

みんなでお花見をするのだと。


自分のグループだけのために

ブルーシートを敷いて、陣取るのではなく、

みんなで共有するという、

日本人の、ハレを祝う本来のスタイル。


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鑑賞のためだけでなく、

人々から敬われ、大切にされてきた桜の木。

そして、桜の魂が、村を守る。


何度も通ったことがあるのに、

初めてその存在に気づいた、小さな神社。


花がひらいて、その木には あきらかに神が降り立っていた。


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桜と鳥の楽園

2010年04月19日 | 金沢の四季
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裏山の桜の園は、谷間にひっそりと存在する。

それでも週末は、花見の人でにぎわうが、

散りはじめる頃の早朝は、ひと気もない。



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その静けさのなかに、さまざまな鳥の鳴き声が 響き渡る。

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鳥たちは、花から花へ。

無心になにかをついばんでいる。


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私が入っていくと、いったん逃げるが、

気配を消して静かに見ていると、

やがて舞い戻ってきて、また桜と戯れる。




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そのうちもっと慣れてきて、

今度は私が鳥たちの好奇心をそそる存在になってしまう。






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すぐ近くまで寄ってきて、

じっと私を見る。

私のカメラと見つめ合う。


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やがて向こうから風が渡り、

それにのって、一斉に山の方へ飛び立っていく。


鳥たちが向かう先には、

私が「母の木」と呼んでいる巨木がある。

さまざまな植物が身を寄せる、大きな一本の木に、

山の鳥たちが、羽を休めにいく。


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再び風が吹き、花が舞う。

そして鳥も舞う。

あらゆる生命体は、一緒に呼吸をしている。


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道草する道

2010年04月11日 | 金沢の四季
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週に2回、かほく市にある実家へ帰る。

金沢から車で40分ほどの距離。

その40分のドライブを、どう楽しむか、毎回 真剣に考える。


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道の選択肢が、大ざっぱにいうと、3つある。


ひとつ、海の道。(能登海浜道路)

ふたつ、山の道。(能瀬~山側環状線)

みっつ、草原の道。(河北潟 農道)



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でもこの季節は、迷わず草原の道を選ぶ。

途中、桜並木が延々つづく。延々と。


適当に脇道へそれてみる。

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農業用水路が、はりめぐらされ、

その脇から枝を伸ばす花々。


足下に、小さな野花。

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でこぼこ、ゆがんだ道。

突然 現れる 小動物。


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今朝一番の道草は、満開の、大きな山桜。

いつもタイミングを逃していたが、

今年は真っ盛りの花に出会えた。


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その桜のドームの内側に立って、

風に揺れて、かすかな匂いを放つ桜を

時を忘れて眺める。


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その桜は、少し緑色かかった白で、

えんじ色の葉が、その花色を引き立てている。


小雨まじりの白い空に、とけていきそうな

風が吹くと、消え去りそうな


はかない色の、美しい山桜。


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河北潟の道は、これから夏にかけて、

メルヘンの道と呼びたいほどの 花の道となる。


道草ばかりしてしまうから、

1時間はやく家を出なくてはいけない日々。





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しだれ桜

2010年04月11日 | 金沢の四季
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桜の中で、特別好きなのが、枝垂れ桜。

金沢の平地の桜が満開になって、3~4日したら、

裏山の枝垂れ桜が見頃になる。


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谷に響き渡る うぐいすの鳴き声と

さらさらと 水の流れる音。

桜は ゆらゆら 風に身をまかせている。


その枝の造形美。

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花の彩。



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朝、花市場の仕入れ業務を抜け出して、

パンとあたたかい紅茶を持って

この花園で ほんの少しの時間を過ごす。

春の数日の、宝物のようなひととき。





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花のごちそう

2010年04月03日 | 庭の花たち
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この時期、幸せをもたらせてくれる花といえば、

菜の花が思い浮かぶ。

なにしろ五感を楽しませてくれる花だから。

そう、美しくかぐわしいだけでなく、美味なのだ。


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食す菜の花として、八百屋さんにならぶものは

ちゃんと食用として栽培されたものだが、

我が家で食べるのは、おまけに付いてきたような花。


つまり冬の間に食べきれなかった青菜が、畑にとり残され、

春になって花を咲かせたものなのだ。


たとえば、上の二つの写真は、中島菜の花。


そして次の写真は、水菜の花。


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花がついた先端を5センチほど 摘み取り、集めていく。

2,3日もすると、次の芽が育っていて、また摘める。


そしてその摘みたての花を、ごま油でさっと炒めて、

かるく塩こしょう。

お醤油をちらっとかけてもよし。


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我が家で食べる菜の花はこれだけではない。

大根の花やかぶの花。

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ブロッコリーは、メインの大きいのを収穫した後、

脇から育つ小さな赤ちゃんブロッコリーがまた柔らかくて美味。


ブロッコリーはつまり花のつぼみなので、

もう少し放置すると、うすい黄色の花が咲く。

花になってもおいしい。





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でも私が一番好きなのは、なんといっても、白菜の花。

やわらかくて、しゃきっとした食感と、やさしい甘み。

こんなにおいしいのに、

市場にはなかなか出回りませんね。


でも今年はうっかり、冬の間に白菜を全部食べてしまった。

ああ来年の春が待ち遠しい. . .


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