新アルバム「はじまりの鐘」を記念して、演奏会を開催します。
アイリッシュハープとアコースティック・ギターが織りなす
やわらかで美しい音色、秋のはじまりの花たちとともに。
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2014年9月15日(月・祝)
「はじまりの鐘」リリースライブ
花のアトリエ こすもす 1階、花の中にて
Open/18:30
Start/19:00
Charge/3,000円(要予約)
【お問い合わせ・ご予約】
? 076-222-8720(花のアトリエ こすもす)
メール: cosmos.izumi@gmail.com
花のアトリエ こすもす
金沢市安江町5-14
tico moon
かなり遅くなってしまったが、
ガラスと氷の催しを記録しておきたい。
三年に一度、と決めて臨んだ 二回目のコラボ作品展だった。
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ガラス/ 井上美樹、大迫友紀
氷 菓/ ムシャリラ・ムシャリロ
花/ 角島 泉
ギター演奏(特別参加)
/ 太田真佐代
まず、何よりも素晴らしかったのは、
ガラス作家、井上美樹と大迫友紀による
空間いっぱい使ったインスタレーションだった。
狹い暗い階段を上がって、明るく開けた三階の空間に、
たくさんの光の粒が浮かび、風に揺れている。
梅雨の最中のこと、外の雨と呼応して
部屋中に雨粒が降りてきたようだった。
井上美樹さんは、まるい雨
大迫友紀さんは、線の雨
4つの部屋それぞれの床の比率や天井の高さをふまえ、
二人で分担しつつ見事に呼応しあうしつらえだった。
さぞかし綿密に打合せたのかと思いきや、
「私はマル」「「じゃ、私は線」
たったこれだけだったそうだ。
普段はうつわ作りが中心の二人、
このような空間の演出、インスタレーションは
大きな挑戦であったと思う。
人気作家で、たくさんの作品展をかかえながら
よくここまでの準備を進めてきたものだと思う。
その空間作りの秀逸さ、響きあいの美しさは
写真では到底 伝えることができないのだが、
イメージのかけらを残しておきたい。
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つづいて、大迫さんの「線」の表現
風でゆらゆら揺れて、
光の粒が絶えず艶めいている。
紐を通した極細のガラスの管も、
大迫さんが丁寧に吹いて作った。
透明ガラスにところどころ加えたブルーが、
外の光の本質をとらえているようで
抽象表現でありながら、
リアルな雨を感じさせてくれた。
雨の下に置かれた一輪挿しに、植物を入れてほしいとのことで、
ちょうどその朝、手に入ったグリーンスケールという穂、
緑の粒がチラチラ揺れるのを
雨の跳ね返しに見立てて生けた。
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そしてもう一つの表現、「音」
二人の作家それぞれの光の音が、
時折、外の雨音と響き合い、楽しかった。
ガラスの魅力は、透明さゆえ、
周りのものを取り込み、
光とともに絶えず変化することと言えるだろう。
見る時間によって、表情を変えるので
何時間も眺めている人、
何度も訪れる人、
私も、揺れる光を見ていると、
我を忘れて浮遊してしまった。
この写真は、人が絶えたほんのひととき
二人のガラス作家がくつろいでいるショット。
居合わせた、柴田洋志さんが撮って下さった。
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さて、このイベントのもう一つの顔、「氷」。
二人のガラス作家の器でいただく、おいしい氷菓。
ムシャリラ・ムシャリロさんによる、
シチリア風シャーベット、グラニータを堪能させていただいた。
「氷」の看板は、
このイベントの6日間のために
グラフィックデザイナーの安本須美江さんが描いて下さった。
両面、違うイラストで、
イベントで展開される物語が表現されている。
ムシャリロさんは、普段、植物性の素材だけを使った、
オーガニックなお弁当屋、カフェを営んでいる。
3年前はやはり素材にこだわった
かき氷の美味しいシロップを作って下さった。
そして今回は、このためにアメリカ製のマシーンを導入、
地物のおいしいフルーツや、
特別に焙煎を頼んだオーガニック珈琲など、
厳選された、タイムリーな素材を使って
ふわふわで、シャリシャリした極細の氷の粒
細胞にすっと浸透していくような
初体験の極上シャーベットだった。
このグラニータは、なんと石川県の能登島で実った
有機無農薬レモン。
レモンの木はたった二本、年間200個も採れないので、
一般市場に出回ることはないそうだ。
そして、完熟の状態で採られたラズベリーも
農家から直接ゆずってもらわない限り
なかなか手にはいらないものだろう。
一番美味しい状態になるまで木になっていたから、
本当に、ビタミンが豊富でおいしくて、
体に染み込む心地よさだった。
カフェ・アグレさんによる、氷菓のための珈琲
は、冷たくても華やかな香り、
いつまでも余韻が残るおいしさだった。
そのほか、とてもおいしいスイカや
生姜と黒糖のグラニータなど、
日替わりで、作りたての氷菓を頂くことができた。
ムシャさんは、暇さえればいろんな生産者の人を訪ね歩き、
良い素材の、良いタイミングを
学び活かそうとしている。
その真摯な姿勢が人気の理由だろうと思う。
ムシャリラ・ムシャリロ
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そして最後にもう一つ、
極上の「音」との響宴を記しておきたい。
大好きなギタリスト、太田真佐代さんの、
細やかに紡ぎだされる美しい音。
ガラスと花の中で聴かせていただいたこと。
心のひだに沁みこむような、優しく生命力のある音だった。
太田真佐代
ガラスの光も、花も、氷も 音楽も、
すべて儚い夢のごとし。
でも、なにかを感じとり、
体験した人それぞれの心に体に
余韻として何か響いているものがあったなら
みんなで悩みぬいたかいがあったと思う。
精魂つきたので、次の三年後、という声は
今のところまだ誰からも上がっていない。
でもいつかまた、4人の情熱が同じベクトルで立ち上がったら、
新しい何かが生まれるのかもしれない。
しばらくはコツコツと、目の前に咲く花のことを。
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美しい志ある宿に導かれた。
「里山十帖(さとやまじゅうじょう)」
雑誌「自遊人」が、経営、
もともと湯治場だった宿を引き継ぎ、
豪雪地帯の太古の知恵に 現代の心地さを合わせた
すばらしい宿。
何と言っても、この地の自然に敬意をもって
潜在する力を活かそうという清い心が
静かに伝わってくる宿だった。
館内を通る清々しい風
重厚な雪国の梁や柱
どこかから降ってくる美しい音楽
そこはかとなく漂う、芳香
この宿に、導かれたきっかけは、お料理だった。
今年春の開業とともに、
金沢の日本料理屋からここの厨房に移ってきた、
北崎 裕 料理長の料理を求めて来たのだ。
北崎さんの美味しいお出汁、
素材への敬意と工夫に満ちた調理とその美しさ
器、花、音楽 . . .
芸術へのあふれる好奇心 あわせもった料理人。
人気だったご自身のお店を閉めてまで選んだ新天地
突然のお誘いに即決した、というからには
それほどの魅力に満ちたところなのだろう、と。
北崎さんが抱いた好奇心に、私が強い好奇心を持ってしまったのだ。
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そのお料理は、本当に素晴らしくて、
筆舌に尽くしがたいものだった。
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ほんのり甘い、ふきのとうのソルベ
季節は7月。
名残りの山菜からはじまって、
地の夏野菜づくし
なんと大胆な、4種の茄子料理
この地は、たくさんの種類の茄子が採れるのだそうだ。
すべて個性のある味とかたち、
豊かな土地で育つ茄子の滋味を堪能。
サプライズは、この一品。
北崎料理長が大事にしている工藤和彦さんの深鉢で、
自家野菜の炊き寄せ。
シンプルに見えて、実に細やかな心を感じとれるお料理。
そして、素材のレパートリーを増やそうと
無理に遠方のものや旬でないものを使わない姿勢。
身近にあるものの中から、力のあるものを探し出す感性。
時間が空けば、敷地内の畑でみずから野菜作りをしたり、
まわりの野山に入って、素材を探し求めるのだとか。
その努力の結晶ともいえるこのお料理、
越後名産、もち豚の杉の葉スモーク
杉の新芽のピクルス添え
杉の高貴な香り、
ほんのり苦くて甘い、逸品。
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朝にいただいた、具だくさんのお味噌汁。
熟成された濃厚な自家製味噌。
体の細胞に優しく染みこんでいくような
おいしくて繊細なお料理の数々だった。
自力で、安心できる美味しい素材を求める、
という料理人としての究極の道を選ばれたのだなと思った。
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そして特筆すべきは、和洋のハーブとの取り合わせだった。
もう一人、厨房に立つハーブ研究家と、タッグを組んで
新しいお料理の世界を創りだしている。
茄子の煮浸しに、ミントの葉。
忘れられない一皿だった。
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一番の贅沢は、感じること。
それを実感した宿だった。
大自然との間には、言葉はいらない。
感じることがあるのみだから。
自然の力を活かす、ということは
簡単そうでそうたやすいことではない。
現代文明にひたっている者たちに
どう伝えるか、どんな場を、ものを、用意すればよいのか、
工夫に工夫を重ねて、心を尽くして、
この宿が営まれているのだと思う。
ただ、その意図をも気にさせず、
自然の中に気持よく身をゆだねられる場所だった。
先にも書いたが、もと湯治場だっただけに、
泉質が極上であること。
自分の体が、とけてなくなりそうなほど
やわらかな温泉だった。
里山十帖
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