語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


バリ島日記 Ⅹ 椰子の木の話(前編)

2010年02月24日 | 旅日記
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バリ島の中心地では、近年、

椰子の木がどんどん減っているのだという。

管理するのがなかなか大変で、

昔、男たちは誰でも登ることができたのに、

街ではすっかり現代の生活が定着し、

学校の体育の時間でも教えてもらえない。

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だから椰子の実ひとつ採るにも

椰子の木登りの専門家を呼ぶことになる。

採らなければ、30メートル上空から、

堅い実が落ちてくることになり、

人にも建物にも危険ということになる。


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さて、バリ島で染色のアトリエをもつ秦泉寺さんは、

昔ながらのバリの生活を実行していらっしゃるから

当然、椰子の木も敷地内で大きく育ち、

日傘として、天然の扇風機として、家族を守っている。


実が落ちてきたとき、現代の瓦屋根なら割れてしまうが、

秦泉寺さんの家の屋根はかやぶきだから、大丈夫。


昔は自然とうまく共存し、

すべてにバランスがとれていたのだ。


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椰子の実いわゆるココナッツは、

よく熟した実、

ほどほどに熟した実、

そしてまだ青い色の若い実、

それぞれの段階で、使い分けられる。


若いココナッツの中には、ほんのり甘いジュースが入っている。

病気の時には欠かせないそうで、

ポカリスエットなどのスポーツドリンクの発想は

このミネラルバランス抜群のジュースからきている。


体の細胞にすんなり浸透していく。


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ほどほどに熟してくると、

成分が濃くなって、ココナツミルクがとれる。


さらに熟したら、内側の壁に、

固形の白い果肉が残り、それをすって

お菓子に使ったりする。


油分だけをとる方法も教えて頂いた。

よく熟した果肉を、お湯で煮ると、

やがて油が浮いてきて、それを丹念にすくい集め、

水気を完全に除去し、

何度も濾して不純物を取り除いたら、

純粋なココナッツオイルの出来上がり。


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滞在中の食事はすべて

この作りたてのココナッツオイルで調理された。

油料理でも、すばらしく消化がよかった。


毎朝日替わりで、いろんな種類のバナナを

フリッターにして出して下さった。

ココナッツオイルはほんとうにあっさりとして

しかもパリッと揚がる。

中はもっちもちのバナナ。


しかし手間がかかることこの上なく、

今はこうして家庭でオイルを作ることは

めったにないそうだ。

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さてココナッツが実るには、当然、

花が咲かなくてはならない。

房状になって、垂れ下がるようにして咲くその花を

竹筒の中に入れて(もちろん木の上に設置)

ゆっくり花のエキスが溜まるのを待つ。


じっくり時間をかけて溜まった花のジュースは、

やがて竹の中でアルコールに変わる。

丹念に蒸留し、透明なココナツの花のお酒が完成。


そのお酒を買い求めに、深い山奥の、小さな集落へ。

普通の民家から、年配の女性が現れて、

家内で作られた中から、少し量り売りして下さった。


お祭りの時に、神様にお供えするために

魂を込め、手間ひまかけて作る。

そんな貴重なお神酒を分けて頂いた。




その味は、摩訶不思議な味。

ツンッと少しトゲがあって、

あとから柔らかに、花が咲く。

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ココナツの話は長い。
後半へつづく。


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