語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


桔梗(ききょう)

2012年10月30日 | 日々の花
Img_7194

.




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハープ奏者 池田千鶴子さんとの出会い

2012年10月28日 | 作品展、コンサートなどのイベント
Img_6881

その日から2週間も経ったのに、

いまだ温かい余韻につつまれている。

ハープ奏者・池田千鶴子さんをお招きして

私の花のアトリエで美しい演奏をしていただいたのは

至上の喜びだった。

それは「音楽」を越えたもの、

うまく言葉にできないのだが、

心と体が何かすごいエネルギーで満たされた、

生まれて初めての体験だった。





去年の今ごろ、工藤和彦さんの作品展の最中に、

池田さんのことを教えていただいた。

そのすばらしい演奏活動を知るにつれ、

今年のうつわ展の期間中に、お呼びできないかなと思い、

それが難なく実現したかたちになったのだ。

工藤さんが池田さんの姿をはじめて見たのは20年ほど前、

北海道のオンネトー湖の湖上、浮き舞台の上だったそうだ。

水面に揺れながら、優雅にグランドハープを弾く様は

お伽話さながらの、幻想的で美しいものだったそうだ。




池田さんは、音楽ホールにはおさまりきらず、

「ここで弾きたい!」と気持ちが高鳴る場所で

その場の波動と共鳴しながら演奏されてきた。




それから程なく、池田さんも工藤さんの人柄や作品に惚れ込み、

長きに渡って、作品とのコラボなども含め、

お互いの世界から交感しあってきた。

そして、そこに私の花の世界が加われば、

何か新しいものが生まれるかもしれない、と

工藤さんが今回の企画を進めてくださった。








池田さんの演奏の前、祈りのような沈黙があった。

そして、動き始めた指先から生まれる音は、

一つ一つ、心のひだに染みていくような、

それはそれは美しいものだった。


池田さんは、演奏の合間に

これまで音楽を通して体験してきたことを

いろいろと話してくださった。






Img_6887

20代のころ起きた、サラエボの戦争。

ヨーロッパでの演奏会の後、居ても立ってもいられなくて、

単独でサラエボ入りし、キナ臭い街なかの教会前の広場で

狂ったようにハープを弾いたのだそうだ。

そのうち、人々が家々から出てきて、

気づけば大勢の人だかり、

皆、じーっと静かに聴いてくれたのだと。

それは、遠くに弾丸飛び交う音を聞きながらの演奏だったそうだ。


アイルランド紛争の最中、

国境付近で兵士たちに捕まった。

荷台に積んだハープを持ち出し演奏したところ、

見る見るうちに兵士たちの顔がゆるみ、

挙げ句に「お母さん、お母さん . . . 」といって

全員が祈りをささげはじめたのだという。

池田さんは、こんな風におっしゃっていた。

「こんなに心優しい若者たちに人殺しをさせる戦争がなぜ起きてしまうのでしょう。
 悲しいことにこれは絶えることがないと実感します。
 でもこうして人の心をひとときでも癒すことができたら幸せです。
 私は、たまたま出会ったこのハープを持って、自分にできる行動をとるのみです。」


地雷がいたるところに埋め込まれたカンボジアのスラム街、

国内外の精神病患者に

ニューヨーク911テロの後の傷ついた市民に

そして大震災で心病んだ人々に

その、天から降りてきたような美しい音楽を

心を込めて奏でてこられた。

どこかで戦争が起きたら、必ず脚が向かっている、

よく今まで生きていられたもんだと思う、

と池田さんは笑っておっしゃっていたが、

その命をかけた音楽活動の経験は

常に覚悟を決めた演奏というか、

ものすごい集中力で、全身全霊をそそぐ演奏に

つながっていくのだと思った。


その人の、一点の曇りもないまっすぐな魂に

私たちは、直球で心打たれた。

その場に、ものすごいエネルギーが充満し、

すべての気が音の源に向かっていた。


気づけば、あらゆる花たちが、池田さんの方を向いていた。


Photo




本当に花と対話できる人を目の当たりにしてしまった。

演奏が終わっても、だれもすぐに立つことができずにいた。

そして号泣する人もいれば、興奮で顔を紅らめている人、

じっと胸に手を当てている人もいた。


池田さんのお話を聞いて、些細な悩みなど吹き飛んでしまった。

そして音楽でこの上ない幸福感を味わった。

前を向いて生きる力をいただいた。

花も、人も、たっぷりエネルギー注いでもらったのに、

消耗することなく光り輝いている池田さんは、

太陽のような存在だと思った。



Img_6905


現在、池田さんは、なんと国連のメンバーでもあり、

ますます幅を広げた国際的な活動をされている。

しかし、いつも心は小さな一つの命に向けられており、

それを花たちもよくわかっているようだった。


嬉しいことに、池田さんもこの花の場所を気に入ってくださったようなので、

きっとまたここで、演奏をしていただこう。





すばらしい出会いに感謝。



[ 追記 ]

旭川市の郊外の森に、池田千鶴子さんのメモリアルホールがあります。

そのホールは、ハープの響きが最大限に生かされるように、

天井の高いスウェーデンハウスなのだそうです。

宿泊用の設備も整えられており、

ゆっくりと音楽を楽しむことができるように配慮されているようです。

来年の夏は、私も訪れてみたいと思っています。









  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

工藤和彦 うつわ展 2012 記録

2012年10月27日 | 作品展、コンサートなどのイベント
Img_7122

この秋で3回目、工藤和彦さんのうつわ展は

おかげ様で盛況のうちに終わった。

嬉しかったのは、前回、前々回からのリピーターの方々が

とても多かったということだ。

一度使ってみると、とりこになってしまう器。

作家ものの器は、もったいなくてなかなか普段使いできない人も

工藤さんの器は、毎日使ってしまうという。



Img_7150










Img_6983


Img_6957




食の器でいうと、

食べ物がなんでも美味しそうに見える色、風合い、形、

料理が盛りつけやすい、

高台とのバランスなども絶妙で

持ちやすいので粗相しにくい、

など、使ってみてこその魅力が潜んでいる。

.

花の器もしかり、である。



Img_7024


Img_7038

工藤さんの黄粉引(きこひき)は

優しいクリーム黄色が特徴で、

不思議とどんな花色も引き立ててくれる。

そして、2億年前と推定される、大陸の土の風合い、

工藤さんの生み出す有機的なかたちは

植物たちを優しく受け入れてくれる。

たっぷり水を入れた状態で持っても、

しっかり手におさまるので、食器同様、

安心感の高さが、使用頻度につながるとも言える。

Img_6972

Img_7016


.


黄粉引の花器で、今回驚かされたのが

次の写真の大きな壺である。

高さ60センチ以上もあり、大迫力。


Img_6984

この明るい黄色の大壺は、

暗い和室でも明るいモダンな空間でも

浮くことなく、合うのではないかと想像する。

そして近づいてみるとまたびっくり、

美しい貫乳(かんにゅう)が、全身にびっしりと。


*貫乳 . . . 釉薬(うわぐすり)が割れてできる模様


















Img_7051


Img_7052

あたたかな午後の光の中で、

「この壺を抱きかかえて、ずっと眺めていたい」

と言っている人がいた。





Img_7168

Img_7159



Img_6982


Img_6980



Img_6946


Img_7066


Img_6940

今回、出品されたうつわはなんと350点あまり、

工藤さんの作品展としては たぶん日本一の規模だそうだ。

前後にびっしり作品展のスケジュール、

それぞれの会場に合った作品を作る工藤さん、

助手ももたず、たった一人で

よくこれだけの数を作れるものだと感心する。

しかも一つ一つの完成度の高さ。


工藤さんのすごい所は、

人気のうつわにいつまでもこだわらず、

次々と自分を壊し、新しいものを生み出していくことだ。

だから、去年買った器と同じものを、

というお客さんは、その希望が叶わない。

今年の作品は、かなり思い切った変化があった。

「紙細工」に例えられるほどの軽さが魅力だった工藤さんの作品だが、

依然求められるその軽さを見直し、

しっかり厚みをつけたこと。

これさえ作っておけば間違いなし、を あっさり打ち破り、

次に行ける勇気と力を持った人だとつくづく思った。

厚みをもった器は、その存在感もさらに増していた。


本当に、工藤さんの生み出すエネルギーには圧倒される。

「こうしたらウケるかな、とかいう邪念を頭から消して、ひたすら作陶したい」

という工藤さんの真骨頂は、

「刷毛目(はけめ)」の模様とも言えるかもしれない。








Img_7055


Img_7059


Img_7058

描いてみたこともない私には、

そのすごさが最初わからなかったのだが、

会場を訪れる人の中には、

骨董から現代までの器にとても詳しい人がいらっしゃる。

数えきれないほど、陶芸家の方々も。

で、みなさんが感心されるのがこの「刷毛目」だった。

何気ないこの線が、なかなか描けないのだそうだ。

大人気だったこの花器も、刷毛目がすばらしい。






Img_7005_2


白樺の灰釉で、白樺の化身のような器。

「これはどうやって線を描いたのですか?」

と質問してみたら、なんと片手で器の底をつかみ、

もう片手で刷毛を持って、両手を一気に回して描いた、との返答。

ぐるりと回してみても、つなぎ目など

どこにも不自然さがないのだ。



Img_7072

自ら土を掘り出し、丹念に練って作る土。

北海道に自生する木をせっせと薪割りし、

ひと冬かけて燃やす手作りの灰釉。

せっかく北海道にいるのだから、そこでしかできないものを、

という強い思い、

土地の力、魅力を生かすということに全力をかける。

自分自身の能力の可能性も、果敢に挑戦してきた。

電動ではなく、自分の脚で回す「蹴ろくろ(けろくろ)」を駆使し、

四肢すべてに違う動きをさせながら、一つの器を作る。

それが、うつわの躍動感につながっているのだと思う。









Img_7063_2


Img_6955




Img_6943






Img_6942






Img_6944




Img_6979


Img_6953

ほとばしる情熱と、へこたれない強さ。

しかし実際、工藤さんに対面すると、みんな一様に驚いて、

「爽やかな風が通るような人」

「あの曇りのない笑顔にただ癒される」

などという声があがる。

人気作家になっても、

少年の頃からかわらない純真な気持ちで

ひたすら大好きな陶芸に取り組んでいる人。



Img_6836

今年もまた、工藤さんから たくさんのことを学ばせていただいた。

私も、花とともにそんな人生を送りたい。


さて来年の秋は、

工藤さん、フランスからお声が掛かっているらしい。

すばらしい。きっとヨーロッパの人々にも

すぐにこの魅力は伝わることだろう。


ということで、次回の花と器の響宴は、

再来年の春あたりだろうか。

工藤さんの進化に置いていかれないよう、

私も精進していかなければ。











Img_7080




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マリモのうつわに、秋の蔦

2012年10月27日 | 作品展、コンサートなどのイベント
Img_7135

工藤さんのマリモのうつわは

いろいろ遊べてほんとに楽しい。

.





  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

工藤和彦さんの器 3. マリモのような花器

2012年10月20日 | 作品展、コンサートなどのイベント
Img_6964

マリモのようにまんまる、きれいな緑色のうつわ。

工藤さんが去年生み出した、緑粉引(みどりこひき)は、

森や、深海のを思わせる、奥行きのある緑が美しい。

マリモのうつわは、子供のゴム鞠くらいの大きさで、

花を活けずに、そのまま飾っておいても可愛い。


Img_6917

植物のような色なので、

花を活けると、そこから生えているような風情に。

線のほっそりした花の自由な動きを引き立てつつ、

その存在感を魅せてくれるうつわ。


Img_6913_2

.





  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする