語りかける花たち

角島 泉(かどしまいずみ) 花日記
 ~石川の四季、花の旅、花のアトリエ こすもす日々のこと


松井清造さんの椿

2012年02月29日 | 作品展、コンサートなどのイベント
Img_1878

今回の花と器展にあたり、

すばらしい椿の花を提供して下さった方のことを

ここでぜひ書いておきたい。

ここ金沢で、新しい椿を次々に生み出す

日本でも稀有の存在、松井清造さん。

新品種の研究、開発に取り組み始めて3、40年、

尽力の末に生まれた氏の椿は

それはもう、椿のイメージが一転するほどだった。

椿は、種を蒔いてから花が咲くまで

8~10年もかかるというから、

それは気の遠くなるような挑戦だろうと思う。



Img_1860

松井さんは、造園業を営むお父様と一緒に

庭師として働きながら

20代の頃、最初はバラの品種改良に興味を持ち、

フランスへ視察に出かけたそうだ。

そこで何百年の歴史に直面し、

とても自分の人生をかけてもかなわない、と

帰国後、 椿 の研究に方向転換したのだそうだ。













Img_1862

椿はもともと大陸から渡ってきたもので、

インドや台湾、中国の雲南省など

温暖な地、あるいは熱帯にまで広がる花であるが、

中でも強靭な種が、海から流れ着いて日本にやって来て、

日本海側では藪椿(ヤブツバキ)を群生させるまでになった。

金沢に自生する 雪椿(ゆきつばき)は、

雪の中でも咲くように進化したのだそうだ。


Img_1870

松井さんは、暑い国の品種と金沢の品種をかけ合わせて

南国産の艶やかな色彩に、

耐寒性を兼ね備えた椿を作ってしまうなど

いかにも難しそうなことを次々に成し遂げてこられた。

何百種類もの交配から

わずか2,3種類の、可能性のある良品ができる、

というから、並の根気ではできない研究だろうと思う。





Img_1877_2

そうして様々な困難も乗り越えながら生んだ

「ベルサイユ」と名付けた八重咲きの椿、

開くとなんと20cm にもなるという濃いピンクの椿

フランス大使館や大統領官邸の庭に植えられたのだそうだ。


かつて薔薇の研究を彼の地であきらめ、

代わりに選んだ 椿 で日本の代表として

フランス大統領のお庭を飾ることになるなんて、

なんてドラマチックな展開なんだろう。



Img_1861_2













松井さんの椿のお話には

面白いエピソードがありすぎて、

つい時間を忘れて聴き入ってしまう。

険しい山を登るような大変な仕事に違いないのだが、

椿を心から愛し、楽しんでいらっしゃると感じる。










Img_1866_2

そうして愛情を注いで育ててこられた椿の花を

今回の、私が企画した花と器展のために

惜しげもなく提供してくださった松井さん。


何十年の重み、魂こめて一瞬だけ咲く花を

開発文七さんのすばらしい器でちゃんと活かしきれるか、

私は大きな重責を感じたが、

この不思議なめぐり合わせに

身震いするほどの感動を覚えている。


.

















Img_1874


.





  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二代 開発文七「花器」展~めぐり合わせた花たち

2012年02月25日 | 作品展、コンサートなどのイベント
Img_0780

いよいよ作品展がはじまった。

存在感のある開発さんの器に、

すばらしい花たちが引き寄せられるように集まってきた。

掛け花入れに挿した清楚な椿の名は「風鈴の谷」



Img_0742


ひと抱えほどもある大きな丸い器は

どの方向から見ても味わい深い景色、

この個性には、渋いクリスマスローズを。











Img_0774

耳付きのどっしりした器に、木瓜(ぼけ)の花。











Img_0768_2

床の間に、貴婦人のような花器には

サンシュの花と椿「金花茶(きんかちゃ)」

なんと黄色い椿、ひらくのが楽しみ。








Img_0778

ひょうたん型の器に、

ベトナム原種の椿「ハイドゥーン」

これもつぼみが解けるのが待ち遠しい。


さて、ここまで書いて

今回生けた 美しい椿のことに触れてみたい。

20種類ほどの珍しい椿、

世の中でこれ一本という椿も含め

普段、園芸店でも花市場でも出会えない椿たちが

不思議なめぐり合わせで、ここにきてくれたのだ。


金沢で、長年にわたり椿を研究し、

新しい品種を数々生みだしてこられた

松井清造(せいぞう)さんの椿___

特別も特別、大事な枝花を切って

器展に提供して下さったのだ。




Img_0739

この華やかな椿は今の時点で13~4cm ほどの大輪、

大きく開くと20cm ほどにもなるという、名は「ベルサイユ」。

松井さんが作り出し、数年前、

フランス大統領のお庭に植えに行ったそうだ。


それにしてもこんな迫力のある花、

開発さんの器だから違和感なく生けられるのだ。







次の白い椿は、ぐっと小さな八重咲き、

中国産の「菊花茶」から生まれた品種。

中国では「椿」を「茶」という。










Img_0763

他にも金沢の地名を冠した椿、

金沢の工芸品の名前を冠した椿、

また追ってご紹介したいところですが、

この一期一会の花と器、

ぜひ実際に見て頂きたいのです。

写真では表現しきれない多彩な魅力。

花のもつ気迫のようなものを、ぜひ生で感じて下さい。




この続きは、いったん作品展会場を離れ、

稀有の存在、松井清造さんの 椿研究の話を。
















Img_0760




コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二代 開発文七 作品②

2012年02月23日 | 作品展、コンサートなどのイベント
Photo

砧(きぬた)型の花器

力強く、これ以上ないほどの安定感、

そして味わい深い存在感。

個性の強いクリスマスマスローズも

余裕で受け入れてくれる。




Photo_2

奔放に伸びた木瓜(ぼけ)の枝も

自由にさせたまま、しっかり支えてくれる。






Photo_3




.




Photo_5


作品展はいよいよ明日24日から

たくさんの美しい珍しい椿を生けます。


.






  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二代 開発文七 作品①

2012年02月20日 | インポート
Photo


一つの器にさまざまな花を試してみた。

たいそう存在感のある器だが、

花を生かす寛容さも兼ね備えている。

バランスのとり方もさまざま。



Photo_2


写真上から

椿

豆の花

山茶花(さざんか)





Photo_3


二代 開発文七「花器」展
2月24日(金)~29日(水)

花のアトリエ こすもす 3階ギャラリーにて

.












  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雪化粧

2012年02月18日 | 金沢の四季
Img_1827

前日の青空が夢だったかのように、

その朝 起きたら街がすっかり雪化粧されていた。

どこもかしこも まんべんなく白粉がかけられ

それもまた はかない夢のような美しい世界。

Img_1804_2



街の中から 色という色が消えると、

造形美の際立つものが 魂を吹き返してくる。

その朝は、いつもの風景が、一転していた。


Img_1819


モノクロの映画の中にいるような気分で

近所の路地をさまよっていると、

ふいに甘い香りに誘われた。


見上げると、大きな蝋梅(ろうばい)の木。

無彩色に映える明るい光の色。








Img_1790


雪の季節に咲くさだめの花は、

華やかに広がる花びらを諦めた代わりに

とびきりの芳香を与えてもらったようだ。


そして雪の下で咲くこのしたたかな姿。
















Img_1795


甘い息は、魔法のごとく

春を待つ街にふりかけられていく。



.











  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする