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台湾の首都、台北の中心部にありながら、
隠れ家のごとき、
台湾キュイジーヌ「四知堂」
オーナーの陳超文(Chao Wen Chen ) さんの
食、美術、空間、音楽、サービスなど、
総合芸術の世界を堪能できるレストランだ。
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まずここの建物は、台湾建築界の巨匠と言われる
建築家の自宅だったのだそうだ。
Chenさんは、もともとグラフィック、建築のデザイナーでもあるので、
自身のアイデアと感性で、一階をリノベーションし、
この美食の館を作り上げた。
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外から、お店と認識できるものは見当たらない。
目じるしといえば、小さな大理石の表札が、
植物の中で見え隠れしているだけ。
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緑のアプローチをくぐり、扉を開けると、
中にはいつも満杯のお客さん。
くつろいで、にぎやかに話を交わしながら
お料理を楽しんでいる。
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館内、いたるところに、絵画やアンティークの置物、家具
美しい照明、そして水槽に揺らぐ金魚 . . .
常に世界を旅するChenさんらしい、無国籍な魅力の空間。
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Chenさんとの出会いは、ちょうど一年前の2月、
私の花屋に、突然入ってきたことから始まる。
外でタクシーを降りたのを見た時点で、
その神々しいまでの雰囲気に、私は興味津々だったのだけど、
戸を開けてから、待たせてあったタクシーで去るまでの
ほんの10分ほどの会話の中で、
初対面とは思えない、驚くほどの共感を覚えたのでした。
そして
Chenさんのことや、台湾のことを知りたい!
という熱い思いが湧いてきて、
その数ヶ月後の7月に、私は初めて台湾の地を踏むことになった。
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Chenさんは、これまでにさまざまなタイプの飲食店を
10店ほどプロデュースしてきて、
どのお店も新しい感覚で、大人気店になったそうだ。
現在、経営に携わっているのは、台北市内に2件。
もう一軒は、よりカジュアルで、
カフェ利用もできるレストラン「四知堂Tua」
開店前のTua店内にて、Chenさん。
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また、音楽関係の会社で、数知れないレコードジャケットの
デザインもしてきたChenさんは、
当然、音楽にも造詣が深く、
店内のBGMは、多彩。
世界中のすばらしい音につつまれる。
ワインを飲む前に、気持ちよくて酔ってしまいそう。
地元の方々のみならず、世界中から予約が入るので、
さまざまな言語が飛び交うレストラン。
文化人のお客さんも多く見受けられ、
毎夜、ここで、食事をし会話を交わしながら、
何かが生まれる場としても大事な役目を果たしているようだった。
お客さんにお料理の説明をするChenさん。
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毎年、必ずワインの産地に赴いて、
料理に合う、おいしいお酒を仕入れてくるそうだ。
極上のオリーブオイルや、チーズなどもしかり。
つねに、より良いものを探し求めて
旅を続けている。
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お料理は、Chenさんが指揮をとり、
5〜6人の料理人がそれぞれの腕をふるう。
パティシエが作るデザートだけでも名店になりそうなレベル。
天然酵母のパン、もちろん自家製、
コーヒーの焙煎も行なっている。
食後のコーヒーが、これまた唸るほど、おいしいのだ。
お花を担当するスタッフも。
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野菜、魚介、肉、果物、
すべての食材が、台湾産の旬のもの。
毎朝、Chenさんは市内の市場をまわり、
誠実な生産者から、料理の素材を仕入れている。
私は、滞在中、毎日その仕入れに同行させていただいたので、
いかに妥協なく、丁寧に食材選びをしているか、
よく知ることができた。
無農薬で力のある野菜、果物。
新鮮で質の良い肉魚類 . . .
伝統の調味料などもしかり。
生産者、販売者と、納得いくまで話し、
驚くべき判断力で買い付ける。
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あらゆる分野で、素晴らしい才能を発揮するChenさんのことを、
地元の人は「超人(スーパーマン)」と呼んだりするそうだ。
名前の「超文」にも由来している。
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風に揺れる植物を、どの席からも感じられる。
差し込む光も、刻々と、美しい。
ここでは、つねに、何か美しいものがたゆたい、
うつろっていく。
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決して、説明過多ではない。
食べていると、あ、と気づかされる。
見た目も美しいけれど、それ以上に、
奥行きのある味が、体の中に豊かに広がっていくのだ。
この緑の一皿は、究極なお料理だった。
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5種類にも及ぶ ブロッコリーの、
太い芯の部分だけをスライスして使い、
アサリとひよこ豆を合わせて、あっさり蒸し炒めにしたもの。
パッと見に、とてもシンプルなのだが、
味わうと、その微妙な味の違いが、
複雑な美味しさとなって、口の中に広がっていくのだ。
これは、私が花で目指す世界そのものである、と気づいた。
似ているけど、少しニュアンスの違う色合い、表情を持った花々を
合わせると、最初は気づかなくても、
長時間見ていても飽きない美しさが表現できる。
緑の山にも、青い海にも、
単色ではない、繊細なグラデーションがあるから
惹きつけられるのだろう。
それを、Chenさんは料理で表してくれる。
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言葉はなくとも、たくさんのことが伝わってくる。
それは、食す人への愛情であり、
食材への敬意であると思う。
食事をすること。
そのために、あらゆることを丁寧に準備し、
整え、作り出し、
あたたかく迎える。
「食」を通して、ほんとうにたくさんのことを教えてくれたChenさんに
心からの感謝を申し上げます。
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