冬の間は、花仕事はゆるやかで、
静かで自由な時間を持つことができる。
いつも散策に行く野山もあまり花が咲いていないし、
庭仕事も、立春のころまでは作業がない。
温暖な地域から運ばれてくる花々を
花市場で買い求めることになるわけだが、
いつもは仕事に使う花たちと
じっくり観察する時間、
否、対話する時間を持てるのが、
この静かな冬の間なのである。
数年前から、1日1ページ、と決めて
花のスケッチを続けてきた。
でも去年は他に気を取られて、なまけてしまった。
一年間途絶えていたのだが、
今年の冬は、反省して、再開した。
選ぶ花は、その日に一番輝いていて、
どうしても目が合ってしまう一輪。
一輪の花を、つぼみから枯れるまで描く時もある。
始めたきっかけは、
仕事として花をたくさん扱ううちに、
花と向き合う気持の余裕がなくなっていることに気づき、
一輪を大切にするという、初心にもどるためだった。
描いてみると、見慣れているはずの花にも
驚くほどの発見があった。
花の造形の妙、色の複雑さ、
おしべやめしべの数や色のバランス、
花びらの厚み、
花と葉の色の関係 . . .
感心することばかりで、
描くたびに新鮮な気持になるのだ。
写真はより正確に記録できると思いがちだが、
下手なスケッチでも、
描くことの方が、眼差しが深くなる。
描いた花の表情は、何年経っても
しっかりまなこに焼き付いている。
まだまだ 花の世界の入り口に立ったばかり、
という感覚でいるのは、
そんな深い世界に触れてしまったから。
座禅を組むように、
無心で花と向き合う時間を
毎日、こつこつ続けていくのが
今年の目標のひとつです。
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