みなさん絵画は好きですか。私は最近絵をみるのが好きになってきました。でも下記コラムを読むと西洋美術はわかっていなかったなんて思ってしまいます。かと言って見方を変えることは難しいかもしれませんが(笑)
是非参考に読まれては如何でしょうか。
米国、英国で美術史を学んできた西洋奨術史家の木村泰司さんが『名画の言い分』(集英社刊)を上梓した。西洋美術の楽しさと面白さを味わうには、何が必要か。古代ギリシャから印象派までの薯名な作品と画家に即して、分かりやすく手ほどきしてくれる。
――日本人の多くは「感性」で美術を見ますが、「西洋美術は見るものではなく、読むもの」と指摘されています。美術を見る時、感性や感受性は大事ですが、それだけに頼るのは危険です。西洋契術の場合には「読み解く」ことが必要です。と言うのも、西洋美術は、ギリシャ哲学やキリスト教を基本にした文化の中で生まれました。ですから、東洋文明の中で育った私たちが、きちんと理解することはほとんど不可能です。欧米人であっても「美術史を学ばないと理解できません。
例えば、ギリシャの作品について言えば、紀元前4、5世紀のころ何が美しいかが決められた。そこで、今の西洋人も、古代ギリシャの歴史と文化を学ばなければ、当時の美術作品は分からない。美術史は体系化されている学問です。美術史を学ぶことで、何が美しいのか、また一つ一つの作品の素晴らしさや面白さも知ることができるのです。
――その時代のエッセンスをつかめば、「なぜその絵が描かれたのか」が分かってくるとも。西洋美術史は、第2次世界大戦頃までに体系化されました。作品を見る場合、その時代背景を理解することがまず大事と考えたのです。例えば、17世紀以前、絵画の中心になっていたのは「歴史画」と言われるもの。
それには「宗教画」「神話画」も入ります。歴史画は注文主の依頼に応じて描くもので、画家が自分の好きなテーマを自由に選ぶわけではありません。つまり、歴史画は、見る人に依頼主のメッセージを伝える役割を持っている。
感性で見るだけでは、画が伝えたいメッセージを読み解くことはできません。歴史画は、注文する人も画家自身も、見る人も教養がなければほとんど内容が分からないため、「歴史画は一番、位が高い」と言われてきたのです。今、日本ではいながらにして諸外国の優れた作品を目にするチャンスが増えました。ひと昔前には考えられないほどの人が海外旅行に出かけてもいます。
パリに行けばルーブル美術館やオルセー美術館がある。せっかく行くのですから、感性だけで見るのでなく、その作品が生まれた時代のエッセンスを知って見なければもったいないと思うのです。――古代ギリシャから現代まで、人間は美術作品を大事にしてきました。美には大いなる力があると思います。
おっしゃるとおり、美術作品は人々を惹きつける大きな力があります。だからこそ、古代のギリシャからローマ、そして18世紀くらいまで、メッセージを伝える手段にもなってきたわけです。
ルネサンス以降、西洋では、工芸と美術は異なったものと考えられるようになりました。作家の思想、知性、精神が反映されていないと、美術品とは呼べません。――作品を見るたびに、古典の持つ力を感じます。
20世紀を代表する画家のピカソも古典的手法をマスターしていました。古典を身に付けていたから、彼は新しい作品を生み出せたとも言えます。基礎がない人には、一過性の流行のものは作れても、美術史に残るような作品は作れません。
欧米の主要な公共施設には、ギリシャ様式を思い起こさせるような建築物があります。それほど古典は、現代の美に大きな影響を与え、新たな創造への源泉になっているのです。きむら・たいじ1966年、愛知県生まれ。カリフォルニアとロンドンで美術を学ぶ。楽しみつつ知的好奇心を満たす「エンターテインメントとしての西洋美術史」を目指し、さまざまな講演会やセミナー、イベント、執筆活動などで活躍している。