シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

橋浦方人監督「蜜月」(1984年、113分)☆☆☆

2022-12-10 10:56:00 | 日本・1980年~


原作は立松和平の小説です。

野菜市場の仲買店でバイトをしながら大学に通う作家志望の青年と、文芸誌の女性編集者との壊れそうな愛と生活を,60年安保後の東京を背景に描いた作品。

作家志望の青年・村上哲明(佐藤浩市)は、編集室で若い女性編集者・星みつ子(中村久美)が気になっています。

みつ子は最近見合いをし、付き合っている男性がいましたが、あまり乗り気ではありません。それを承知なのか哲明は彼女を食事に誘います。二次会の飲み屋で、彼は自分の育った田舎のこと、思いつきの小説の話などを語ります。ほとんど自分勝手に。

お嬢さん育ちのみつ子にはそんな話が新鮮にうつります。誘われるままに、みつ子は哲明と何度か会いますが、彼にはアングラ演劇団の仲間とのつきあいがあり、彼女にはそのことをひた隠しにしています。

みつ子は哲明になんとなく怖さを感じ、警戒心が強めます。平凡に生きていくつもりだったみつ子にとって、哲明はよくわからない部分を秘めた青年でした。

ところが、哲明が高熱で倒れたと知り彼女は彼を見舞います。枕元でみつ子は「婚約者と別れた」ことを告げます。

ふたりは、お互いの心を確かめあいます。親や友人に哲明との交際をとがめられたみつ子は、彼と生きるために「逃げよう」と持ちかけ、以後ふたりの蜜月の時が流れるのですが・・・。
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藤田敏八監督「妹」(1974年、92分)☆☆☆

2022-12-09 10:58:16 | 日本・1970年~


グループ「かぐや姫」の「妹 ♪ 」は1974年にシングル発売され、大流行しました。「神田川」「赤ちょうちん」に続くヒットです。
この映画はその「妹」からの発想で生まれた作品です。

舞台は西早稲田界隈(新宿区)、烏山(杉並区)、そして鎌倉。

小島ねり(秋吉久美子)は同棲中だった耕三と別れ、鎌倉から兄・秋夫(林隆三)のもとにもどってきました。秋夫は亡くなった両親が経営していた食堂に住み込み、小型トラックで、学生相手のモグリの引越し屋で生活。

そこへ、耕三の妹・いづみ(吉田由貴子)が訪ねて来ます。いづみは鎌倉でブティックを営み、耕三とねりはそこに住んでいたのですが、いづみはねりを心配してやってきたのです。

家出の理由を聞くいづみに、ねりはろくな返事をしません。とうとう口論となって、いづみは鎌倉に帰っていきます。

兄妹ふたりの生活が始まりましたが、ねりはやはり耕三が心配で彼の友人を訪ねたり、耕三の次兄夫婦(伊丹十三、藤田弓子)の顔色を遠くから垣間みたり、鎌倉の両親を訪ねたりします。

秋夫は、ねりを妹として、また一人の若い女性として可愛くてたまらない様子です。始終喧嘩をしながら、一緒に暮らしています。
そんなある日、ねりはテンプラ屋をやっている叔母の店を手伝うと言って秋夫のもとを去りますが・・・。それは哀しい結末の予兆でした。
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斉藤耕一監督「旅の重さ」(1972年、90分)☆☆☆

2022-12-08 11:00:42 | 日本・1970年~


原作は素九鬼子による同名小説です。家出して四国遍路の旅に出た16歳の少女の姿がロードムービー風に綴られます。心に沁みる吉田拓郎「今日までそして明日から♪」の挿入歌。足摺岬など、全編四国ロケ。

四国巡礼の道をたどる家出の少女(高橋洋子)。旅先でいろいろな人々に出会います。足摺岬の近くでは、旅芸人・松田国太郎(三国連太郎)が率いる芝居一座と一緒に寝泊まりします。

一座のひとりで情熱的な政子(横山リエ)と特に仲良くなり、ふたりで裸で海に飛び込んだりして過ごすひとときも。

一座には他に、色男役の吉蔵(園田健二)、竜次(砂塚秀夫)、光子(中川加奈)など、少女にとって初めて知る人生経験豊かな顔ぶればかり。

10日足らずの後、ふたたびひとりで、少女は旅をつづけます。しかしわずか数日後、風邪をこじらせ、路傍に倒れます。少女を助けたのは40歳を過ぎた魚の行商人・木村(高橋悦史)でした。二人は奇妙な共同生活を始め、少女は行商を手伝います。

「ママこの生活に私は満足しているの。この生活こそ私の理想だと思っているの。この生活には何はともあれ愛があり、孤独があり、詩があるのよ」。母(岸田今日子)への手紙で、少女はそう告白するのですが・・・。
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吉田憲二監督「鴎よ、きらめく海をみたか / めぐり逢い」(1975年、91分)☆☆☆

2022-12-07 11:03:05 | 日本・1970年~


原作・脚本は岩本芳樹です。田舎(北海道赤平市あたり)で生まれ育った若者が、都会(東京)に夢を抱き上京するものの、現実の厳しさに翻弄されます。それでも理想を抱きながら幸せを手にしようともがきますが、哀しい結末に・・・

地方(北海道)に住んでいた克夫(田中健)の家族は離散。克夫は上京して、ビルの窓拭きなど清掃員としてなんでもこなして働きました。

克夫はロマンチストです。どこにあるかもわからないユートピア・レシポルコに住みつくことを夢見ています。その克夫が久美(高橋洋子)という名の女性に一目惚れ。しかし、逢えばレシポルコの話ばかりをする克夫と、都会で上品に生活を送りたい久美とでは、通じ合うことがありません。

ふたりが浜辺に遊びにいくと、傷ついた鴎を見つけました。鴎を海浜に埋めようとする久美に、克夫は「生きているのに埋めるのか」と止めます。「もういくらも生きられない。ぶざまに生きさせるのが嫌だもの」と久美。そして、久美は克夫に別れ告げます。
失意の克夫は、宿直の仕事を見つけました。傷ついた鴎も一緒。

ある日、高校生の頃からの悪友が久美に目をつけ、乱暴します。傷ついた久美は克夫の許へ走ります。克夫は彼女を拒否しますが・・・。
 
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原田眞人監督「わが母の記」(松竹、2012年、118分)☆☆☆☆

2022-12-02 23:22:08 | 日本・2000年~


原作は小説家・井上靖が68歳の時に出版した自伝的小説。

ある疑念をもって母親と向き合った8年間の想いが描かれています。高齢の母親が痴ほう症となり、周囲の人たちが振り回されますが、その様子が悲しく、時にユーモラスに描かれています。

舞台は伊豆、東京(世田谷)、軽井沢、そして葉山。

内容について簡単に触れると・・・。

作家の洪作(役所宏司)は幼少期に兄妹のなかでひとり、両親と離れて育てられました。そのことから、母親・八重(樹木希林)に、土蔵のおばあちゃんのもとに捨てられたのではないかと疑問に思い、母親と距離を置く感情にとらわれていました。

しかし、父親が亡くなり、長男の洪作は八重と向き合って暮らさざるをえなくなります。年を重ね、物忘れの激しくなった母親と過去の出来事で言い争いが絶えません。

ある日の夜、八重が行方不明に。彼女はトラック運転手のたまり場を訪れ、「海を渡った息子に会いたい」と頼みます。頼みを引き受けたトラック運転手に港まで連れていってもらった八重。それを知った洪作は必至で母を追いかけ、やっと母親を見つけます。

八重は「やっと息子に会えた」と洪作を抱きしめます。母親の八重は洪作を手放した過去を悔やみ息子を探して徘徊していたのでした。
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野村芳太郎監督「五辯の椿」(1964年、162分)☆☆☆☆★

2022-12-01 23:24:08 | 日本・1960年~


原作は山本周五郎による同名小説です。

ストーリーは、江戸時代、自らの出生の秘密を知った娘おしの(岩下志麻)が、それと関わった男たちに接近し、酒杯を重ねて彼らを籠絡し次々と平打ちの銀の釵で殺していくというサスペンス的展開です。

殺人現場には、養父が好きだった椿の瓣が・・・。

町方与力の青木千之助(加藤剛)がその若い女性に疑いをもつのですが、彼女は要領よく居場所を移し、証拠を掴まれることがありません。

彼女が負った不幸は、男狂いの薬種問屋「むさし屋」の母親おその(左幸子)が夫以外の別の男との間につくった子どもだということを、泥酔したおその自身から聞いたことでした。

亀戸のむさし屋喜兵衛(加藤嘉)の寮である日、おそのは労咳(結核)で死んだ夫を前にして、菊太郎(入川保則)という若造と戯れていました。怒りにさいなまれ、失意のおしのは寮に火を放ちます。焼け跡からは3人の焼死体が見つかった。当主の喜兵衛、妻のおその、娘のおしのです。天保5年の正月のことでした。

しかし、おしのは生きていました。その年の晩秋から、おそのと関係のあった浄瑠璃の蝶太夫(田村高広)、医者の海野徳石(伊藤雄之助)、肉体的快楽以外に関心事がない香屋の清一(小沢栄太郎)、「丸梅」の源次郎(岡田英次)が次々と殺められていきます。

みなそろいもそろって「人でなし」の連中。蝶太夫はたて三味線を横取りする目的で兄弟子の利き腕を、やくざを使って折る、徳石はにわか覚えのあやしい治療法で金儲けに血眼になっている、清一と源次郎は情けのかけらもない女たらし、などなど。

「御法定で罰せられない」、けれど到底許しがたい人でなしはどう裁かれなければならないのか。おしのがとった道はただひとつ。彼女の復讐が始まりました。
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