谷崎潤一郎による同名小説の映画化です。
美術学校で知り合った柿内園子(岸田今日子)と徳光光子(若尾文子)。園子は「日本画コース」、光子は「洋画コース」の生徒。二人はあってすぐに惹かれあい、友情の域を超え,性的関係に溺れていきます。
本作品では、園子が光子との関係をなれそめから破綻までを、ある先生(三津田健)に述懐するという手法をとっています。
園子は弁護士、孝太郎(船越英二)を夫にもつ人妻。光子は織物会社社長の令嬢。同性愛の関係にはまり、お互いを「姉ちゃん」「光子ちゃん」と呼ぶあい、愛し合う二人。ときには壮絶な嫉妬心をはらんで。
二人の関係に疑問をもち、ついに激怒する幸太郎。
そこに光子の恋人の青年(川津裕介)が絡みます。
志村美三代子氏はこの作品を解説している箇所で、次のように述べています。少し長いですが、引用します。「増村保造は(この題材を)独自の論理で両断した。増村によると、原作の「卍」には女同士が同性愛に至る前半の過程はヨーロッパ的性愛が見られるという、・・・そして後半部分を喜劇的に描いた谷崎の批評精神に注目し、・・・後半部分を喜劇的に批評して描いてみせている。・・・増村が放った壮烈な愛の追求は、若尾文子と岸田今日子が織りなす奇跡的ともいえる妖しいエロティシズムによって優雅かつ壮絶な官能の世界を創造したといえよう」(四方田犬彦・斉藤綾子編著『映画女優 若尾文子』みすず書房、2003年、327頁)
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