ほとばしる情念と狂気、男たちの共同幻想が、一人の女、ファム・ファタールによって崩れ、狂い朽ちていく様を描いた作品。
原作は船戸与一による同名小説。ジェイムズ・ケインの名作「郵便配達は二度ベルを鳴らす」をモチーフにとしていることを、著者自らが述べています(船戸与一『海燕ホテル・ブルー』[角川文庫]の解説)。本映画作品を観ただけでは、それは気づきませんでした。
高校時代から悪さを繰り返してきた友人たちと現金輸送車を襲い、強奪した大金をもとにオーストラリアに飛び、ワイン製造するという途方もない計画をたてたものの、事件当日、ひとりは強奪現場から逃げ出し、もうひとりはその現場にもあらわれなかったためひとり捕まった藤堂幸男(地曳豪)、31歳。取り調べにも二人の共犯者のことを黙秘したため、彼だけが受刑。
北陸の刑務所(原作では、実在しない群馬刑務所)を出所した幸男は、自分を裏切った二人に「おとし前」をつける旅に出ます。行く先は、事後の聞き込みでわかった、棚橋洋次(廣末哲万)の居る伊豆大島(原作では下田)の海燕ホテル。そこは海、黒い砂漠、溶岩だらけの山に囲まれた場所。たたずむホテル。
そこで出会った謎の女・梨花(片山瞳)と関わって、幸男の運命が大きく狂います。心に誓った復讐は観念的な風景を背景に不思議な事件のなかに熔解していくかのように・・・。
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