いせ九条の会

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戦い方如何では、国連決議=正義とはならない/山崎孝

2007-08-27 | ご投稿
8月23日の朝日新聞に、テロ特措法が11月1日に期限が切れるため、延長を図る政府が、防衛省に出させた国会向け資料に関する記事が掲載されていました。その中からの抜粋です。

資料は「自衛隊の活動状況及び実績」と題する文書。参院で野党が多数を占めたことを踏まえ、主に野党議員の説明用に作ったとみられる。

多国籍軍の「海上阻止活動」はテロリストの海上移動を阻み、アフガニスタンヘの武器や麻薬の海上輸送を遮断するのが目的。資料によると、海自は11カ国の艦船に対し米同時多発テロから間もない01年12月以降、今年7月26日までに延ベ769回、約48万㌔リットル(約219億円分)の給油活動を行った。このうち米国が350回を占め、パキスタンの135回を大きく上回った。3番目はフランスの94回。

 給油実績の回数、量とも年々減っており、02年に17万5千㌔リットルだった給油量は06年に4万8千㌔リットルまで減少した。資料は、多国籍軍の海上阻止活動にも言及。立ち入り検査を延ベ1万1千回以上、無線照会を14万回以上実施したとした。無線照会数が04年の4万1千回から翌年に1万4千回、06年には9千回へと減っていることから「不審船が減少した」と成果を強調している。(以上)

この記事よりも、テロ特措法の延長問題を詳しく解説、論じた8月26日の「しんぶん赤旗」の記事の抜粋を紹介します。

【海上自衛隊 インド洋派兵5年9カ月/テロ根絶と無縁/これで「特措法」延長とは】

自爆・誘拐ひん発も MSOが縮小しているのは、「対テロ」で効果らしいものを挙げられないからです。

 日本政府はMSOの成果として麻薬の押収などを挙げていますが、テロリストの拘束はいまだに報告されていません。また、防衛省が今月作成した資料によると、不審船舶に対する無線照会件数が〇四年の四万一千件から、〇六年には九千件に激減しています。MSO自体の存続が問われているのが実情なのです。

 しかも、海自がインド洋への派兵を続けた六年間を見ると、テロはむしろ拡大しているのが実態です。アフガニスタンでは米軍の「対テロ」戦争に参加する兵士の死者が増え続け、自爆テロや外国人の誘拐も頻発しています。

 今年三月の国連事務総長報告では、武装勢力タリバンなど「反乱勢力の規模が顕著に増加し、戦術および訓練も改善」していると指摘しています。

 欧州や中東の親米国では、大規模なテロ事件が相次ぎました。テロの根絶ではなく、テロの温床を拡大し、国際的に拡散したのです。

 それでも米国が日本などの派兵継続を執ように求めているのは、「世界の七十五カ国が『地球規模のテロとのたたかい』に協力している」という構図を維持し、ブッシュ戦略を正当化するためです。

パキスタンへの影響は? 米国は、アフガンの隣国、パキスタンへの影響を挙げてテロ特措法延長の必要性を訴えています。

 シーファー駐日米大使は民主党の小沢一郎代表との会談の際、「日本が支援をやめたらパキスタンの活動は困難になる。パキスタンは活動に参加する唯一のイスラム教国だ」と述べました。

 前出の防衛省資料によると、最近は米軍への給油が大幅に減少し、昨年十一月以降ではパキスタンが四割近くを占めています。しかし、パキスタンが派兵しているのは小型のフリゲート艦一隻のみ。本当に海自が給油しなければ活動が困難になるのか疑問です。

 しかも、パキスタンは米国から圧力をかけられ、協力を強要された経緯があります。さらに、対米支援がきっかけで逆に国内のテロ勢力が増長し、現政権が危機的な状況に陥っています。

派兵能力習得の場 見過ごせないのは、ブッシュ政権の戦略が破たんしても、自衛隊はインド洋派兵を「海外派兵隊」化のテコとして利用し続けていることです。

 本紙は海自が作成した「協力支援活動等実施報告」という資料を情報公開請求で入手しました。インド洋から帰国した海自部隊の司令官が作成する文書です。

 昨年十二月に作成された同報告では、「百八十日の派遣期間中、各艦が全能発揮を維持した。これは、当部隊が海外長期展開能力を習得したことによるもの」「まもなく、国連平和維持活動等が自衛隊の本来任務となることから、当隊にとって時期(ママ)を得た大きな成果となった」とまとめています。

 昨年十二月の「防衛省」法成立で自衛隊の海外派兵が本来任務化されたのを契機に、海外派兵能力の習得の場として位置付けていることが分かります。

 〇一年以来、海自は最新鋭の大型補給艦二隻を配備し、すでにインド洋に派兵するなど、遠征能力も高めています。

国民には秘密主義 政府はこれまで、インド洋派兵で約二百二十億円の税金を投入してきました。しかし、納税者である国民には軍事機密を理由に、必要な情報を隠し続けています。

 前出の「協力支援活動等実施報告」では、「米海軍等艦艇隻数の推移」というデータを、「他国等の間で相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に悪影響を及ぼす」として黒塗りにしています。しかし、外務省ホームページでは「各国艦船の隻数の推移」を公表しています。

 ほかにも、米軍が公表しているデータまで黒塗りにするなど、秘密主義が目立ちます。

 「対テロ」戦争の大義が失われ、軍事的効果もなく、是非を判断する情報すら国民に提供しない――。これで「テロ特措法延長に賛成しろ」というのは、あまりにも国民を愚ろうしています。(以上)

テロ特措法は国連決議1368などを根拠にしています。同決議はテロの脅威に「対応するために、あらゆる必要な手段をとる用意がある」となっています。

だが「あらゆる必要な手段」と言っても、住民を巻き込む戦闘は許されません。アフガニスタン戦争は、開戦から多くの住民を犠牲にしてきました。6年経てもこの傾向は変わらず、米軍などの空爆で住民が死傷する事態が続き、本年5月、アフガニスタンのカルザイ大統領は「我慢の限界だ」という声明さえ出しました。

アフガニスタンの国連人権高等弁務官事務所は、本年5月28日、交戦するタリバン勢力と多国籍軍の双方に民間人の保護を規定するジュネーブ条約など国際人道法の順守を求めました。戦い方如何では、国連決議=正義とはなりません。

 日本国憲法は戦争放棄が理念。この理念にふさわしい政策は、戦争をする艦船に燃料を供給することではなく、非軍事でアフガニスタンの人道復興支援に尽力することだと思います。