平成28年3月に、中央東線信濃境駅で発行された190円区間ゆきの片道乗車券です。
桃色JRE地紋のA型大人・小児用金額式千切り常備軟券となっています。
信濃境駅は長野県富士見町にある簡易委託駅で、東京方面からの下り線において長野支社に入って1番目の駅であるとともに、常備軟券を売る駅であり、運悪ければ受託者様の「お前なんかに売る切符はないよ」オーラを受ける駅として趣味の世界では有名な駅でしたが、この券が発売された3日後の平成28年4月からはPOS端末が導入され、常備軟券の発売が終了しています。しかし、現在ではPOS端末導入からわずか1年で簡易委託が解除され、現在は完全無人化されてしまっています。
同駅はJR東日本から長野県富士見町に駅業務が委託され、シルバー人材センターのような事業者に再委託をしてるという方式が採られていました。受託事業者は発売する券の数パーセントを「委託料」として収受することが可能ですが、発売する乗車券類は事前に大量のまとまった枚数を購入しなければならず、その負担は莫大なものになりますが、それでも利用者の利便を確保するため、簡易委託業務が各地で行われていました。
JR東日本としては印刷の手間と費用が掛かり、自動化されていないために手作業で行わざるを得ない売上管理が面倒で、しかも自動改札に通せないために着駅での有人改札業務が必要となる常備軟券は当然ながら淘汰していきたいという方針を打ち立てていますが、「民間会社」として利益と省力化を重視する企業としては当然のことになります。
しかし、月に数万円必要と言われている端末の利用料は受託者負担となっており、月間の売上額から端末利用料を差し引かれてしまえば受託者側には利益は残らないわけで、常備券時代のように「前払い」でまとまった乗車券を予め購入する負担との引き換えとは言え、委託解除・そして完全無人化という道は想定内の結果であると言わざるを得ないのかもしれません。
今回の信濃境駅の無人化は、どうにかして町内のJR駅の無人化を避けたかった富士見町にとって、1年の試行期間を経ての苦渋の決断であったのではないかと考えてしまいます。