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テレビドラマ「北の国から」考 (4)田舎を離れるわけ 住み続けるわけ

2021年08月26日 21時02分38秒 | 映画/ドラマ/アニメ
このドラマを見ていて気付いた
牧場経営の北村清吉は麓郷開拓時代の数少ない生き残りだ
その息子は5人いるが上から3人はこの地を離れて都会で生活している
お人好しの4男の草太をなんとか引き留めて家の跡継ぎとしているが、草太の心は揺れ動く
良い具合に開拓者仲間の娘、つららと草太は恋人同士で結婚する様子がある、結婚すれば草太の迷いも消えてこの地に根を張るだろう
ところが五郎の家に東京から雪子がやってきて住みついた、草太は都会の女そのものの雪子に一目ぼれして、田舎臭い、つららは眼中から消えてしまった
毎日毎日五郎の家に通いつめ、挙句に独断で雪子を牧場へ連れてきて雇った
これには清吉が怒った、つららの家への面目がない、東京育ちで大学での雪子が草太の嫁になって牧場に来るなど100%ない
もし一緒になるなら東京へ駆け落ちするかもしれない、北村家の危機である
清吉が草太を説教すると草太は「おれはここにいてやってるんだぞ」と言って
それっきり口も聞かない

そんな矢先、笠松の爺さんが橋から自転車ごと落ちて死んだ
その日の朝、18年共に苦労した愛馬を生活苦の為に売った、馬は自分の死をさとったのか顔を何度も笠松の首に擦り付けた
顔を見たら大粒の涙を流していたという、それから自分の意思のようにして騒ぐことなく踏み台を上って自動車の荷台に乗ったという
それから笠松は朝からずっと一升瓶を持って飲み続けている、ぐでんぐでんに酔って学校の参観日にやってきてひと騒動興し、正吉が連れて帰った
その夜、五郎の家にやってきた、そして馬を手放した時の話を延々と語った
「俺と苦労を共にした唯一の奴だった、今頃はもう肉になってら、おれの女房と言ってもいい奴だった」
そういうと大雨の中を自転車に乗って出て行った、そして死んだ

葬式には家を出て行って都会に住む笠松の息子たちが来ていた、そして親父が他人の僅かな土地をごまかして自分のものにしたと親父の悪口を話している
それを聞いた清吉は「おまえらに何がわかる!、わずか一坪の土地を得るためにどれだけの苦労をしたと思う」
と開拓者の苦労話を大声で言った、だが年寄りのたわごととまともに取り合わない
「おまえたちはこの村を出て行った、ここに住む人間の事をとやかく言う権利はおまえらにはない!」
「そうはいうけど、ここにいたら食っていけないべ仕方ないべさ」

*ここまで見て思ったこと、最初はこの村を逃げていく敗者の村人を清吉視点で見ていて軽蔑していた自分
だが、度重なる清吉の村を出て行った者たちへの軽蔑が、実は貧しい苦しいと言いながら出て行くことが出来ない人の叫びに見えてきた
逆に言うとあっさりと苦しみだけの生活に見切りをつけて出て行く人たちへのうらやましさの裏返しでなかったのかと
清吉の言葉には逃げることが出来ない自分への言い訳が見える、何のために苦しみの生活を続けるのか?女房も子供も同じ苦しみの中にいる
責任ある戸主ならばさっさと見切りをつけてもっと便利な町で暮らした方が良いはずだ、だが苦労して開拓した村を捨てることはこれまでの人生を否定することだ

長い苦しみの経験が、簡単に村を捨てる人たちへの軽蔑で自分を慰める
それが唯一のプライド、本当の自分の気持を慰めるための言い訳なのだ
逃げるタイミングを逃してしまった自分への腹立ち

笠松の爺さんも、そんな開拓の犠牲者だった
土地から逃げる事が出来なかった人間の悲哀、年老いてしまった