国土交通省近畿地方整備局が淀川水系で建設を計画する4ダムをめぐり、滋賀県の嘉田由紀子知事は6月29日、県公館で整備局の布村明彦局長と会談し、「必要性が納得できたわけではない」と慎重姿勢を示した。中でも、大戸川(だい・ど・がわ)(大津市)流域の洪水被害想定は現実に比べて大きすぎるとして、不快感をあらわにした。
布村局長は大戸川ダムなど4ダムの建設を盛り込んだ河川整備計画案を説明。嘉田知事は「財政的なバランスの中で施策を選ばないといけない」と応じた。
そのうえで嘉田知事は、大戸川ダムの効果を示すシミュレーション結果に疑問を呈した。流域では1982年の台風10号による戦後最大規模の洪水で、ダム予定地上流で210戸、下流で約10戸が浸水。だが、全く同じ洪水を想定したシミュレーションでは下流で481戸が浸水し、ダムがあれば46戸にとどまるとしている。
1953年の大雨でも流域で44人が死亡したが、犠牲者はダム予定地上流に集中していたという。嘉田知事は「なぜ実際の被害と違うのか、県民に説明できない。シミュレーションは机の上でできるが、実際の被害は現場を見なければならない」と詰め寄った。
同席した整備局河川部の谷本光司部長は「調べて返事をしたい」と回答。整備局は同日深夜、「計画高水位(河川内を安全に流せる水位)を超えたら破堤するものとして算定した」との説明文を報道各社にファクスで送った。堤防は通常、一時的な水位上昇に備えた「余裕高」と呼ばれる部分があり、計画高水位を超えてもすぐには破堤しない。
嘉田知事は会談後、「被害を強調するデータで大変不満だ」と報道陣に話した。整備局が求める8月中の知事意見提示については「大変責任ある計画に対する意見。極めて難しいだろう」と述べた。
27日に整備局から説明を受けた大阪府の橋下徹知事は、府の財政難を理由に「(ダム建設の)優先順位は高くない」との考えを示していた。(柳谷政人)
【関連ニュース番号:0806/199、6月29日;0806/200、6月29日など】
(6月30日付け朝日新聞:同日付け読売、産経、中日、7月1日付け毎日も報道)
http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK200806290040.html
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20080630-OYO1T00066.htm
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080630-00000027-san-l25
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008062900139&genre=A2&area=S00
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20080630/CK2008063002000044.html
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20080701ddlk25010645000c.html