【朝日新聞「人物交差点」:「凪の会おうみ」代表 小松薫さん(37)/草津市】
■自死遺族に安心の場を
穏やかな水面(みなも)のような気持ちになれるように。「凪の会おうみ」という名にそんな願いをこめた。肉親を自殺で失った遺族が痛みを打ち明けられる場として、代表の小松薫さん=草津市=らが約1年半前に設立した。
02年1月、母が冬の冷たい海に飛び込んだ。突然訪れた死ではない。うつ状態だった母は刃物で自分を傷つけ、度々病院に運ばれた。「どうしたん?」。ベッド脇からかけた声に、母は「もうしない」と答えた。でも、また繰り返す。心配からこみ上げた怒りは、最後には「もうすぐ死んでしまうんだ」と無力感に変わった。
自殺の理由はわからない。私が殺してしまった、自分のせいかもしれない。自責の念にかられた。
母の死から4年後、県立精神保健福祉センターで自死遺族支援のフォーラムが開かれると聞いた。当時、まだ心に傷を負った人に起こるフラッシュバックに襲われていた。母の姿が突然脳裏によみがえり、ほとんど人前にも出られなかった。つらくなるかもと思ったが、会場に足が向いた。同じ境遇の4人と出会い、会を立ち上げた。
3月中旬、医師や看護師らの研修会で「『凪の会おうみ』を知ってほしい」と訴えた。「当事者だらかこそ届く声がある」と実名を顔を明かし、遺族の思いを語りかける。「自死遺族と言ってもそれぞれ。名乗らなくても話さなくてもいい。安心できる場が必要なんです」。会の問い合わせは、同センター(077・567・5010)へ。 (高久潤)
【関連ニュース番号:0903/163、3月20日;0903/246、4月1日など】
(4月11日付け朝日新聞)