一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

金曜サロン・松尾香織女流初段④

2009-10-10 00:39:00 | LPSA金曜サロン
9月11日のLPSA金曜サロン、夕方は松尾香織女流初段の担当だった。
前局の藤田麻衣子女流1級戦では完敗を喫したが、これが扇子サイン勝負ではなかったのが不幸中の幸いだった。現在の扇子ラリー3本目は中井・石橋の両巨頭からの金星を含め7連勝中で、もし無キズでの10連勝となれば、これは扇子ラリー初の快挙となろう。私は気を引き締めて、松尾女流初段戦に臨んだ。
対局開始。私の居飛車明示に、松尾女流初段の作戦はゴキゲン中飛車だった。松尾女流初段とは、いままで平手で10局ほど教えていただいているが、そのうち6局がゴキゲン中飛車(そのほかに☖4四歩型の中飛車が1局ある)で、本局で4連続の採用となった。松尾女流初段の十八番であろう。
私自身はゴキゲン中飛車を指したことは1度もないが、いつも対策に苦慮する。角道を止めない振り飛車とは、まったく厄介な戦法が現れたものだと思う。今回は☗6八銀と上がり、中央を厚くする作戦を採った。
5筋での小競り合いのあと、私は飛車を4筋に回る。数手後、☖3三角、☗3五銀の局面で☗4四歩と突いた手に対し、松尾女流初段フワリと☖5五飛と浮いた手がどうだったか。私はありがたく4三に歩を成り、☖3五飛に☗3三とと角を取った手が、4八の飛車で4一の金当たりになり、また先手。これは負けられないと思った。
ところが☖5二金左に喜んで☗4一飛成がなんでもなく、☖3三桂とと金を払われては、形勢が接近した。ここは☗4二とを一本利かすところだった。
しかし本譜でもこちらの優位は動かず、数手進む。ここで部分図を記す。

上手 松尾女流初段:2九竜 持駒:銀、桂、歩2
下手 一公:3三と、5六銀、5七歩、5八金、6五歩、6九金、7六歩、7八玉、8七歩、8八角、8九桂、9七歩、9九香 持駒:角、桂、歩3

いま3四の歩で3三の桂を取り、歩が成った局面。ここは8八の角で取ったほうがよかったのかもしれないが、と金が作れるところを、わざわざ角で取る気は起きなかった。しかしこれが悲劇の序章だった。
ここで松尾女流初段は☖8六桂! 教科書に出ている典型的な手を喰らってしまった。しかし私は読み筋とばかり☗6八玉。以下☖6九竜☗同玉☖7八金☗5九玉☖8八金、と進んだ。この局面をどう見るか。上手は竜を切って角を只取りしたものの、この金の働きがいまひとつ。ここで正着を指せば、こちらが勝ち切れると思った。
実戦は☗4四角と打ったのだが、☖5五歩の打ち捨てが軽妙な1手で、☗同角に☖7八桂成と活用され、もう難しい局面になっていることに愕然とした。
以下は☖2六角の王手から左右挟み撃ちにされ、こちらの悪手もあって、たちまち敗勢になってしまった。ちなみにこの将棋は、金曜サロンのご意見番、T氏が指し始めからかぶりつきで観戦していたのだが、T氏が席を外して戻ってくると、こちらがひどい局面になっているので、
「どうなってるんだあ?」
と素っ頓狂な声を挙げられ、こちらも返す言葉がなかった。
また間の悪いことに、ここで大盤解説会の時間となった。私は解説など耳に入らず、松尾女流初段との将棋を考えるが、どう指しても勝ちがない。あのよかった局面を…と思うと、また頭に血が上ってくる。
再開後、数手指して投了した。茫然。
局後、T氏を交えた感想戦では、と金を取らせた☗4一飛成が最初の疑問。さらに☗4四角も攻め急ぎの疑問手で、ここは落ち着いて☗8六歩と桂を外しておけば、上手が指し切り模様、という話になった。
ところが…である。これに異を唱えたのが松尾女流初段で、桂を取られても、角を只で取った実利は大きく、上手も指せる、というのだ。
昨年3月、松尾女流初段に角落ちで教わったとき、終盤はこちらが優勢だと思っていたのだが、局後「私のほうも指せると思った」という意味のことを言われ、さすがにプロは違う、と唸ったものだった。しかし今回感想を聞いた限り、松尾女流初段は、かなり楽観的な見方をするように思った。
その後は、T氏とふたりでこの将棋の感想戦である。私は指導相手の女流棋士とは感想戦をあまりやらず、後に独りでやる癖がある。しかし今回は、松尾女流初段には悪いが、角銀交換以降は、どの変化になっても私の優勢になってしまった。
ああ…それにしても、なぜこんな展開になってしまったのか。藤田女流1級に完敗したことも、無関係ではないだろう。つくづく将棋は恐ろしいと思った。
そして扇子サインラリー、「夢の10戦全勝コンプリート」も、はかなく潰えたのだった。
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3 コメント

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9六歩の形なら (さわやか風太郎)
2009-10-10 15:26:47
8六桂、同歩、8七銀、同玉、6九竜、6七角も考えられる。
9七歩の形だと、ここから8九竜、同角(9六歩の辛抱か)、9五桂、7七玉、8七金、6六玉、8八金、6七角かな。
ただ、本譜も居飛車良しでしょう。角のタダ取りではなく、金と桂の交換(8六歩と桂を取れば)で8八の金の働きが弱い。
4八玉の形になれば1筋の香も生きているので、一挙に寄せられることもない。
確かに。。。 (瀬戸のひしお。)
2009-10-11 00:59:00
差し手の事は解りませんが松尾先生はお見かけそのものの柔和な中に固い処があるように感じられますね。(何方かと違って生真面目なのでしょうね。)
将棋では私なんざ一刀両断反論をする棋力も有りませんので何とも言えませんが。(確かにあの石橋先生に土を付けるだけのことは有るわけですからね。)
松尾先生の手 (一公)
2009-10-11 02:24:42
さわやか風太郎さん
なるほど、端歩ひとつでもいろいろな変化があるものですね。
ただおっしゃるとおり、本譜でもこちらが有利だったと思います。黙って☗8六歩と、桂を外しておくべきでした。

瀬戸のひしお。さん
おっしゃるとおり、松尾先生はとても柔和で優しいですが、自説を曲げないところがありますね。ご自分のしっかりした将棋観を持っていて、そこが魅力でもあります。
私の反論は、ただの負け惜しみです。

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