
第3図以下の指し手。▲4八金打△9二飛▲5三と△7六角成▲4三と△同玉▲4四歩△3二玉▲6四歩△6九竜▲5五角△5八歩▲同金寄△5四歩▲4三歩成△同香(投了図)
まで、中年氏の勝ち。
私は▲4八金打としたが、疑問手。中年氏にゆうゆうと△9二飛と逃げられ、形勢を損ねた。ここは恐いようでも▲5八金打と角取りに当てるべきで、A△同角成は▲同金。B△7六角成なら▲7二とで必勝だった。
もっとも私は▲5三とと寄せ、銀得が約束された。まだ必勝だと思っていたのだ。
ところが銀を取ったあとの▲6四歩がのんびりしすぎで、完全に1手パスだった。
△6九竜から△5八歩が厳しい。だが▲同金寄と取れば、△同馬▲同金△同竜に▲7六角の王手飛車があるので、そう取った。
ところが中年氏に△5四歩と角取りに打たれ、どうしようもないことに気付き、愕然とした。
とりあえず▲4三歩成としたが、△同香がまた金取り。どうにも指し手がなくなって、投了した。

「ええっ!?」
と中年氏。私はクサルばかりだ。
「途中からダメにした。▲4八金打は固めすぎた。まだ3九に打つべきでしたか」
「いやー、でも▲4八金打を見た時は、心が折れましたよ」
と中年氏。
心が折れたって、負けたのは私だ。まったく、ひどい将棋にしてしまった。
お次はアカシヤ書店・星野氏に請われ、指すことにした。対局は自由に付けてよい。私はなかなか厳しい相手が続いたので、ここで息抜きである。
1局目は私が勝ち。2局目の中盤で、おもな参加者の自己紹介タイムになった。
「週刊将棋」元編集長・小川明久氏、金子タカシ氏、中年氏、文芸評論家・西上心太氏、加部康晴氏、大阪の会員・茂山氏、バトルロイヤル風間氏、星野氏など、バラエティに富んだメンバーだ。そしてトリは、木村晋介会長である。
「私が会長になって10年が経ったのに、誰もお祝いの会をやってくれませんでした。開いてもらえる美馬さんとは、人柄の違いでしょうか」
会長、将棋のほうはアレだが、こうしたコメントは実にキレがいい。
続いては、美馬氏と加部氏による指導対局である。アマがアマに指導対局、というのもおかしいが、美馬氏も加部氏もアマレベルなので、構わない。私は、美馬枠に空きがあったので、入れてもらった。
アマ強豪からの指導対局は、手合いが難しい。平手では勝てないし、香落ちは下手の指し方が難しい。といって角落ちではさすがに下手に分がある。結局、図々しくも平手でお願いした。
▲7六歩△3四歩▲2六歩に、美馬氏は△8八角成▲同銀△6五角。美馬氏といえば「穴熊」で、これで数々の栄冠を勝ち取ってきた。よって本局も……と期待したが、指導対局では伝家の宝刀を抜くまでもないらしい。
中盤に入り、私が▲4六歩△同歩▲同銀と動いたが、これがスキを作った敗着。以下美馬氏に会心の攻めをされ、吹っ飛ばされた。
まったくの手合い違いで、お恥ずかしい限り。もっと勉強しないとダメだ。
続いて、本日の目玉企画である、美馬氏の自戦解説である。今回、美馬氏の祝勝会タイトルに「東」という余計な一字が入っているのは、取りも直さず、美馬氏が東西決戦で敗れたからである。
しかし、快勝局をゆうゆうと解説されるより、惜敗局を愚痴タラタラで解説されるほうが、周りは楽しい。
かくて、平野眞三西地区名人との東西決戦局の解説が始まった。
「相手が決まったときから、対局は始まっています」と美馬氏。アマの対局でも、このレベルまで来ると、そういうことになるのだ。
美馬氏は飛車を振り、穴熊に潜る。「ここまで指せれば、負けても本望です」。こう言い切れるほどの得意戦法を持っているアマが羨ましい。私にはそれがないから、社団戦で優柔不断の戦法を選び、後悔ばかりしている。
美馬氏は弁舌滑らかで、話が分かりやすい。これは棋士全般とアマ強豪にいえることだが、みな、話がうまい。これは脳内で将棋の構想を立てるのと同じく、文章を頭の中で構成し、整理しているからではないだろうか。
美馬氏は中盤の捌きが冴え、大優勢。「ここで次の手がマズかった」。私たちの第一感は、▲4三銀成と角取りに迫る手。実際それでよかったのだが、美馬氏が指したのは▲7四桂の王手。これが打たずもがなの疑問手だったというが、私には、そこまで悪い手に見えなかった。やはり、彼我のレベルが違うのである。
それでもまだ美馬氏が優勢だったが、流れは平野氏である。ここから美馬氏の指し手がメロメロになり、最後は大差での終了になったらしい。
「もうここまでで解説は勘弁してください」と美馬氏が自嘲気味に語り、爆笑解説会は、ここで終了となった。
(つづく)