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一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2020年・長崎旅行3

2021-01-21 00:40:04 | 旅行記・九州編
……チッ、ここだ。この場面を私は予期していた。だから私はあれほど千円札が欲しかったのに、結局用意できなかった。
「さっき出そうとした人……」
とマスターが促す。私が天を仰いでいると、同じ列の女性が、財布から千円札を取り出した。これは私が出すべきものだったのだ。
「あっ、私も出します!」
とカウンターの女性が言う。しかし先着1名で、もう遅かった。あんでるせんに臨むとき、おカネはすぐ出せるところに置いておいたほうがいい。
マスターは小袋の中にその千円札と生卵を入れる。すると千円札はなくなってしまった。
マスターが卵を割る。そこには千円札が入っており、ナンバーを照会すると、それはさっきの千円札と同じものだった……。
実は昨年のこのマジックの時、私が千円札を出したのだ。そして帰りは別の千円札に、マスターがサインをしてくれたものだ。まあ、多くの人にマスターのサインが渡ったほうがいいから、今回私は壱万円札を崩さないで正解だったのだろう。
店内には多くのポラロイド写真やチェキ写真が貼られている。そのほとんどが著名人や芸能人だ。
「○○○、さんは8回来ましたね。『フッフッフッ、すごいねー』とか言ってね。
○○○の会長さんは自家用ジェット機で来ました。観○○○○さんは結婚の悩みを聞いて来ましたね。結婚できますと言ったら、彼女はその翌年結婚しました」
芸能人も忙しいが、マジックに興味があれば、寸暇を割いて現地まで来るのだ。
ちなみに私は4回ほど、「あなたは結婚する運命にある」と言われたが、どうもマスターの気休めだったようだ。
ここらあたりでマスターが大カップを出す。そこには割り箸が入っていて、その先端には数字が記されていた。いわゆる私たちの整理番号である。カウンターの右端から順番に振られていき、3番の女性が抽選係となる。これに当たった人がマジックに参加できるのだ。カウンターの3番席はマスターの真ん前であり、ここが正真正銘の特等席となる。そして私は1999年の初入場が、3番だった。さらにその回は私を含めて客が3人という、最初で最後の奇跡だった。
続いては「恋人当て」である。男女9人の芸能人のカードが出され、女性が当たれば好みの男性芸能人を、男性が当たれば好みの女性芸能人をマスターが当てるのだ。ただここ数年は圧倒的に女性が当たっており、というか最近では、ハナから女性陣だけを指名している。
今年は男性芸能人のカードが一新された。ちなみに旧カードも紹介され、EXILE・TAKAHIROや福山雅治などがあった。新カードは菅田将暉、佐藤健、坂口健太郎など、旬の俳優や歌手ばかりだ。
今回の恋人当ては既婚女性が当たったが、彼女が選ぶ「男性芸能人ベスト5」を、マスターは完璧に当てた。
マスターがスマホを取り出し、その上に500円玉を置き、ポン、とやる。何と、500円玉はスマホの中に入ってしまった。
再びポン、とやると、500円玉がスマホから出てきた。
お次はポータブル音楽プレイヤーが出てきた。例の「ウルトラセブン」と「AKB48」のマジックである。マスターは違う曲がいろいろあるというが、私はこれと「冬のソナタ」しか聴いたことがない。ほかの曲も聴いてみたいものだ。
お次は少年が当たった。「君は誕生日がありますね?」。いつもの誕生日当てだ。と思いきや、マスターが手近の腕時計の竜頭を回すと、お母さんに彼の出産時間を聞いた。すると、それはマスターが先に示していた時刻と同じだった。
今度はマスターがスマホを計算機にする。マスターが紙の切れ端に何かを書いた。マスターは私の列の右側の女性(さっきの母親)に渡すと、息子の誕生日を入力するよう促した。
それを左の女性に渡す。女性は任意の2ケタの数字を入力する。また左の女性が同じ作業をする。その左の男性も……。それは私の右側の男性まで来た。数字板のところは隠れていない。それは相当なケタになった。そこまで来て、マスターがさっきの紙片を拡げる。
うーーーーわ!!
これは本当に驚いた。これは、私が昨年の旅行記で記した「誕生日当て」の疑問に対する答えだ。すなわち今年は、計算機の数字板があらかじめ見えていた。今年のマジックは明らかに進化している。マスターは21年前と外見はまったく変わってないし、私はもう訳が分からない。人間、いくつになっても成長できるのだと思った。
「世の中には宿命という言葉があります。今日はこの時のために来てくれた人がいましたよ」
女性が当たり、任意の絵を描く。そのあとマスターが、厳重に縛られた財布から紙片を取り出す。
「顔は丸いですね。ヒゲがありますか?」
女性は神妙に頷く。これはもう、100%読まれている。彼女の絵を開くと、「ドラえもん」だった。そしてマスターも、もちろん「ドラえもん」だった。
みなはびっくり、私は、うむうむと頷いた。さらにマスターが女性に氏名を聞く。「高橋○○○です」。だがマスターの記述は「石橋○○○」だった。
「あれ、間違えたな。高の口のところが浮かんできたんで、石に見えたんだな……」
マスター、間違えたとはいえ、こちらのほうがむしろ生々しい。私たちは再びどよめいたのである。
マスターが任意のカードの隅をちぎり、大きなほうをカードの束に戻す。それをマスターが額縁に掲げると、さっきちぎられたカードが、額縁の中にじんわりと現れた。
これと同じマジックは過去に何回も見ているが、そのとき額縁のカードは、一気に現れた。今回のような「じんわり」は初めてで、私は心底驚いた。そしてもちろん、小さなほうの紙片は、額縁内のカードと切れ目が一致した。
お次はサイコロである。マスターが任意の人々にサイコロを渡し、それを紙コップの中に放ってもらう。その数字を知っているのは、もちろん本人のみである。しかしそれをマスターは当ててしまった。
今度はカップの中で動かすように言う。その数字もまた、すべて当たった。なんだか、天井すべてにカメラが仕込んであるみたいだ。
マスターが壁に掛けてあるハンバーガーの絵を指す。そこにはハンバーガーが6個ある。マスターが客のリクエストに応じてチーズバーガーに紙をかざすと、そこからチーズバーガーが出てきた。
マスターは美味そうに一口かじる。それを元に戻すと、チーズバーガーの絵も一口なくなっていた。
実は先ほどの額縁のマジックも、いまのハンバーガーも、テレビのセロのマジックなどで、見たことはある。ただ、それを間近で見ると驚きがまるで違う。テレビの大食い番組で、それを生で見たゲストが、心底驚くのと同じだ。将棋でいえば、盤側で名人戦を見るようなものだ。これはあんでるせん詣でをやめられない、と思った。
(つづく)
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2020年・長崎旅行2

2021-01-20 00:44:49 | 旅行記・九州編
私は手前の大テーブルをあてがわれた。昨年、一昨年と同じだが、今年は壁際ではなく、通路側だった。
右を見れば何かに興じている女性がいる。やがて子供と父親が戻り、家族連れであることが判明した。
壁際には、女性2人が遅れてきて座った。奥さんが、店内のトイレは連続して水を流すと流れないから、バスセンターのトイレを使うよう、促した。
店内を見回すと相変わらず女性が多いが、あちこち空きがある。定員は32人だが、とてもその人数に達していない。あんでるせんは常に満席だから、入場を制限しているのだろう。お客はもちろん全員マスク着用で、話しているときも小声だ。



私はビーフカレー(840円)とブレンドコーヒー(550円)を頼む。私はさっきから千円札と10円玉を所望しているが、この飲食の支払いでおつりを貰えば懸案事項は解決する。だが私は、ここの代金はピッタリ払うことにしている。よって私は、どこかで壱万円札を崩さねばならない。
いつもはこの待ち時間、年賀状記載用に1年間の我が10大ニュースを選定するのだが、今年はその気力が湧かない。もっともほとんどニートだったので、選定のしようがないのだが。
ビーフカレーはいつもの味だった。ルーはレトルト風でごはんもやや緩め、とびきり美味いわけではないが、これがあんでるせんの味である。ひたすら懐かしい。
食後のコーヒーを飲む。香りがあるようなないような、不思議な味である。まあ飲食よりマスターのマジックが主だから味は二の次だが、かつてこの味に不満を漏らした人がいた。当ブログの読者なら、全員知っている人である。
私は店を出て、駅前に走った。今宵の宿は長崎駅か浦上駅付近にする予定だ。すなわちJRで1310円である。駅の券売機で事前に購入しておけば、あらゆる紙幣と硬貨が入手できる。
ところが券売機は、五千円札と壱万円札が使用不可だった。窓口で両替を頼もうとしたら、午後3時まで駅員が不在だった。なんてことだ……。
試しに川棚バスセンターにも入ったが、ここも窓口が閉まっている。あぁ、空港でバス切符を購入しなかったことが、こんなに悪手になるとは思わなかった。
あんでるせんに戻り、壱万円札でおつりをもらえばいいと割り切る。だけど迷惑だろうなと思う。
いよいよ会計になった。私は相当迷ったが、いまある硬貨で払うことにした。1,390円なので、500円玉2枚と100円玉2枚、50円玉4枚を差し出した。しかし奇妙な組み合わせに奥さんは戸惑い、おつりの10円をもらうのにだいぶ時間がかかった。
しかしなんてことだ。おカネの種類を増やすどころか、500円玉までなくなってしまった。500円玉もよく使われるアイテムなのに、私は何をやっているのだろう。このあたり、マスターの見えない力が働いているようにも思える。
私はとりあえず、壱万円札、五千円札、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉をジーパンのポケットに入れた。
ここでマジック観覧の配置決めである。私は今年、前から3列目、すなわち椅子の上になった。22回目にして初めての場所である。
ザッと見渡すと未成年の男子も何人かいる。家族や夫婦、カップル、女友だちの組み合わせがほとんどで、一人旅の男性は私のみだった。男女比はちょうど、1:2だった。
14時39分、マスターが登場した。マスターもマスクを着用していた。服はいつもの黒のトレーナーではなく、柄物のセーターだった。これは意外に珍しい。
マスターが右手にお化けのような指をはめて脅かすと、さっそくマジックに入った。まずは女性陣から指環を所望する。するとカウンター左の女性が、サッとそれを出した。彼女が初来店か否かは知らぬが、情報を仕入れてきているらしい。すでに3つ出たがマスターがまだ所望し、結局4つになった。いままでは3つだったので、これは最多である。
これをマスターが小さな木箱に入れ、ライターであぶる。やがて音がしなくなると、それがキーホルダーにくくりつけられた中や、マスターのネックレス等から出てきた。みなは早速驚くが、これで驚いていては、これから身が持たない。
マスターが壱万円札と千円札を所望する。私は壱万円札を出せるが、この位置からではカウンターに放れない。おカネの差し出し一つとっても、マスターに近いほうが圧倒的に有利なのだ。ただ、矛盾するが、私も22回目の参戦だから、そこまで積極的におカネは出さない。誰も出さなかったら、おずおずと出したい感じだ。
「このお札を立てますよ。5本の指の中で、どれを使いましょうか」
マスターがカウンターの女性に聞く。女性は「薬指」と答え、マスターは「薬指……厳しいですよね」と苦笑する。そしてマスターは壱万円札を薬指の上で、ナナメに立てた。これはマジックかどうか疑わしいが、実はできそうでできない。
続いては千円札を折り曲げ、宙に浮かせた。これはさすがに歓声が起きた。
「ハウス!」
マスターが叫ぶと千円札が肩口に止まる。そしてマスターが体をズラすと、千円札はそこに留まっていた。さらに絶叫が渦巻く。私はその様子を見て、ゲラゲラ笑う。観戦も回数を重ねてくると、ヒトの反応で笑える余裕が生まれるのだ。
「皆さんマスクをしていますが、目だけ見えていれば、誰だか分かりますよ」
私も口を隠しているが、ノッポ、度の強いメガネ、薄くなった頭頂部と、特徴がありすぎる。たぶんバレているだろう。
今度はESPカードである。「○、□、△、川、+」の5種類が5セットある。マスターの分、カウンターの分と、それぞれ5種類のカードが配られる。カウンターの5人が順番に任意のカードを出すのだが、それをマスターが当てる、というものだ。
マスターが先に1枚目を出す。もちろんカードは伏せてある。カウンターの右の女性が1枚出した。マスターが2枚目を出す。右から2番目の女性がカードを出した。
だがマスターの様子がおかしい。「うむ……。ちょっと変えさせていただきます。天の声が2枚目を変えろと言っている」。いつもはマスターがつねに先に出していたが、これでは後出しになる。もちろんこれでも当てればすごいが、出し直しは初めてのケースで、極めて異例だった。
結局ESPカードは、5枚とも双方同じだった。
続いてカード(トランプ)である。ここでのカードマジックがまた華麗だったが、数作拝見して気が付いたのは、「新作」が多かったこと。マスターはかねてから「毎年微妙に出し物を変えている」と言っているが、割合としては少なかった。それだけに、私の驚きも多い。
そしてその間にたびたびマスターは、手に消毒液をつけていた。いつもはお客の脳天にピリッと「気」を注入してくれるのだが、それもナシ。この辺の配慮は徹底していた。
さて今年の客の華は、カウンター右3人の女性だ。特等席で間近に見ているから反応も凄まじい。彼女らは喫茶代以上の見返りを得ることだろう。
ただ、右の女性の2人がちょっと私語を交わしたとき、マスターはやんわりと注意した。マスターはこのあたり厳格で、私たちには驚くことと笑うこと意外許さないところがある。マスターの段取りが齟齬をきたしてしまうのだろう。
「皆さんこれは余興ですからネ。皆様は喫茶店のお客様。あくまでコーヒーを飲んだついでにマジックを楽しんでるんですからね。だからこの店もここまで続いたんでしょうね。これを有料にしていたら、とっくにツブレてましたね」
その言葉は私も共感できる。当ブログも私がまったくの趣味で書いているが、このブログで小遣い稼ぎをしようと思ったら、書くことが義務になり、長くは続かなかったと思う。
かなり長めのカードマジックがいったん終わったあと、マスターが新たに千円札を所望した。しかしみんな手許に用意していないのか、明らかに空白の時間が生じた。
(つづく)
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2020年・長崎旅行1

2021-01-19 00:40:21 | 旅行記・九州編
2020年も長崎県川棚の「あんでるせん」に行く時期がやってきた。今回も幸い予約が取れ、往復の飛行機も確保できた。日程は12月19日(土)・20日(日)の1泊2日である。無職なのに日程がギチギチなのは、いつ何時就職していてもいいように、だ。そしてそれは現実になったのだが、旅行の2日前、まさかの展開でまた私は無職に戻ってしまった。
さらにその前の12月上旬から、私の身にアクシデントが起こっていた。すなわち、意味不明の強い眩暈、吐き気に何度も襲われたのだ。
私はかかりつけの病院に行き精密検査を受け、眼科にも行った。念のため別所でMRI検査も受けた。結果はすべて異状なし。だが15日の未明、また強い眩暈に襲われた。助けを呼ぼうにも身動きができず、やがて吐き気を催してくる。大惨事は免れたが、これでは前途多難を思わせた。しかも運悪く、コロナの第三波も襲っていた。オヤジはたいそう心配し、旅行前日になって、私に長崎行きの中止を進言してきた。
オヤジの心配は分かるが、私はこの長崎旅行のために1年を生きている。幸い15日からは小康状態を保ち、体調も落ち着いている。体力的に問題はないと判断していた。
だがオヤジもうるさく、さすがに私はキレた。
「おう分かった! じゃあ行かねえよ! なんだよこっちは雪まつりからさき、どこにも旅行に行けなかったんだ。それを週末の休みに外出することの何がいけねぇんだ! 国もこの前までGoToGoTo言っといてなんだよ! それならオヤジ、正月になっても初詣に行くなよ! 一切表に出るなよ! オレがいちばん楽しみにしていた長崎旅行を止めさせたんだ、自分だけのこのこお参りするなよ!」
これが効いたのかオヤジも折れ、私は改めて長崎に行くことになったのである。
ただこの時オヤジが私の啖呵に応じていたら、私はどうなっていただろう。本当に長崎行きを止めただろうか。
19日は07時20分の飛行機だったので、早暁5時半に起きた。なぜかオフクロも起きていたが、万が一のため目覚まし代わりになってくれたのかもしれない。私は何歳になってもオフクロの子供なのだ。
今回の所持金は現金36,718円にクレジットカードやSuicaの類だ。現金は前日になって五千円札1枚と小銭しかないのに気付き、慌てて3万円をおろしてきた。よって現金の中身を種類別に記すと
壱万円札…3枚
五千円札…1枚
500円玉…2枚
100円玉…4枚
50円玉…6枚
5円玉…1枚
1円玉…13枚
となった。
あんでるせんでは1円玉を除き、すべての紙幣と硬貨を使う。私はあんでるせんに着くまでに千円札と10円玉を入手しなければならないが、その機会は限られている。
現金よりSuicaで入場したほうが安いから、Suicaで最寄り駅の改札を抜けた。いま思えば、この前後でチャージして千円札を入手すべきだったが、そこまで考えが及ばなかった。
京浜東北線には適当にヒトがいたが、座れた。
むかしは長崎に行くのが本当に楽しみだったが、実はここ数年、その気持ちがやや失せている。いい歳をしてチョンガーである社会的恥辱に改めて気づき、光のない未来が頭の中に渦巻いて、気分は落ち込むばかりなのだ。
羽田空港第1ターミナルビルに着き、スカイマークで手続きを取った。スカイマークは2020年6月からチェックイン方法が変わり、予約番号や名前を打ち込むシステムになった。
すぐに搭乗して14A、つまり翼の横の席に座ったが、前ポケットの機内誌は取り払われていた。これもコロナ対策で、接触対象物を減らしているのだろう。
飛行機が離陸し、私は目をつぶって体を休めた。旅先で出会った夏子さんの笑顔が脳裏に浮かぶ。ここ何年かの想起は郁子さんでもなく真知子さんでもなく、夏子さんである。まったく、郁子さんはともかく夏子さんとは何度か飲み食いしたのに、20代の私はどうしてその先に進まなかったのか。玉砕覚悟で、交際を申し込むしかなかった。もうチャンスはそんなにないことを、当時の私は知るべきだった。
思いついて、2021年年賀状用に、機内から雲の写真を撮ってみる。でも使えそうにない。



08時40分、神戸空港着。長崎便は神戸を経由するのだ。だから時間がかかりあんでるせん入り(11時)はいつも遅くなるのだ。私たちはいったん飛行機を降りた。
再び搭乗し、神戸発09時15分。今日は快晴で、このまま滞りなく長崎に着けそうである。
10時25分、長崎空港に着いた。そのままストレートでバス乗り場に行く。たしか川棚バスセンターまでは960円だった。自動券売機で壱万円札を使えば、不足していた千円札と10円玉を同時に入手できる。……が、券売機に行くと、Suicaも使えることが分かった。これを使えば、何ポイントか付く。迷った私は、ここはSuicaを使うことにした。
空港内にはコンビニがあるので、ここでおにぎりでも買って、おつりをもらえばよい。
しかしおにぎりの値段が微妙に高く、また私は買うのを躊躇してしまう。それに、おにぎり1つの購入で壱万円札を出すのか?
私は反省し、券売機に戻る。ところがそこは、長蛇の列になっていた。そして早くも、川棚方面行きのバス乗り場に列ができていた。何があってもこのバスに乗り遅れることはできない。バスは定員制だが1台しか来ないから、気は進まないが列の後ろに加わった。バス代はSuica利用だ。4ポイント取得のために、千円札と10円玉を入手し損ねる。自分は何をやっているのだろう。
川棚方面行きのバスが来た。私の前にいた女性2人は、「川棚まで」と言いキャリーケースを預けた。彼女らもあんでるせんだろうか。
私は後方窓際の席に座った。しかし降車するときに容易でないから良し悪しである。母娘が来て、私の右に3歳くらいのお嬢ちゃん、補助席に母親が座った。2つ前の席が空いてそうだったので私が移動を申し出ると、2つ前は背の低い人が座っていたようだった。
かなり前方に座っていた父親がこちらに来て、何事か言った。ああ、家族で旅行しているのか。
バスは補助席も含めて満席になり、積み残しも出た。彼らには申し訳ないが、仕方ない。バスは定刻の11時ちょうどに出発した。
お嬢ちゃんは、横に不気味なおっさんがいるから不安そうだった。……あ! 前方に座ったお父さんと、私が席を替わってあげればよかったのか。
30秒で何かを決断しなければならないとき、私はたいてい間違える。いくら将棋を勉強して秒読みを経験したって、私生活では何の役にも立っていない。
県道の左には、鉄路が付かず離れず寄り添っている。大村線である。しかしそのレールは茶色く変色し、後ろの女性は「ここに電車が走るのかしら」とか言っている。
定刻の11時41分を何分か過ぎ、バスは川棚バスセンターに到着した。結局降車するのは、さっきの2人と私だけだった。私は補助席組に恐縮して降りると、手前の歩道橋に上がり、あんでるせんの全景を撮影した。これを2021年の年賀状にしようか。



地上に降りると、あんでるせんの1階テナントはガランとしていた。ここはクリーニング店ではなかったか? 現在はそこにテーブルとイスが置かれ、あんでるせんの待合室になっていた。
2階に上がり、あんでるせんに入る。1年振りだが、とてもそうは思えない。実に22年連続22回目のお邪魔である。店内はいつもの奥さん?がいて、マスクをしていた。非接触体温計を私の額にかざし、37度以下。これで無事、入店することができた。これが2020年のスタイルである。
(つづく)
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あんでるせんの予約でいろいろ2020

2020-10-09 00:57:44 | 旅行記・九州編
今年の12月第3土曜も、長崎県川棚の「あんでるせん」に行くつもりだ。今年はコロナウイルスが蔓延したが、あんでるせんはどうなったのだろう。
ひな壇状に30数人の客がひしめくのだから、クラスター要注意だ。休業しているか、入店客を減らしているか、何らかの対策を講じてはいるだろう。
旅費に関しては、GoToトラベルが発動されているが、飛行機代とかは安くなるのだろうか。
たとえば早期割引運賃で購入したとして、それがまた安くなるのだろうか。楽天トラベルで宿を予約するのも、宿泊料金がさらに安くなった額が提示されているのだろうか。それとも、パック料金でないと安くならないのだろうか。
その辺はよく分からないが、あんでるせんの予約が完了しないことには話にならない。
予約は、訪問日の2ヶ月前1日から。1日の11時過ぎにアッと気付いて、私は慌てて予約の電話を入れた。
しかし話し中だ。1日は予約が殺到するからやむを得ないが、話し中ということは、予約を受け付けているということでもある。
昼ごろ1回発信音が鳴ったが、10回鳴ったところで切った。いくら繋がっても、そこまで
しつこくはしない。
以下も断続的に電話を入れたが、もう繋がらない。夕方に2回ほど繋がったが、やはり電話口には出ない。
今日はダメか……と、1日はこれが最後のつもりで、6時少し前にかけた。
ここで繋がり、いつもの奥さん?が出た。
「いつでしょうか」
用件は分かっていますとばかり、奥さんも余計なことは言わない。
「12月19日の土曜日をお願いします」
「……カウンターは埋まっちゃいましたよ」
「いえいえもう、後ろのほうで見させていただければ」
それから川棚への行き方などを告げられた。私は21回お邪魔しているが、名前を告げても、私を初顔とフンでいたようだった。顔はともかく、名前はまだ憶えられていないようだ。
ともあれ今年も、12月19日(土)のあんでるせん行きが決まった。

あとは飛行機の手配である。先に述べた通りGoToトラベルだが、ふつうに予約を取ったのでは、その恩恵が受けられないだろう。
ただその手続きも面倒臭そうで結局、ふつうにチケットを手配することにした。旅行75日前だと安い便があった記憶があるので、4日(日)、スカイマークを見た。すると、07時20分羽田発、神戸経由長崎着の便で、7,490円のやつが1席だけ残っていた。これは随分安いが、GoToトラベルだろうか。どうも、10月25日搭乗分から適用される「ダッシュいま得」という早期便企画だった。45日前まで購入可能だ。
こんな安い便があっては他社を見るまでもなく、即予約である。購入は7日(水)までだったので、購入はそこまで引っ張ってみた。

7日夜に入金を済ませたが、この間、上り便をどこにするか考えた。が、やはり福岡しかなかった。天神と博多駅前のクリスマスイベントを見るのは、私の定番だ。
それで、12月20日(日)の福岡→羽田便を調べた。するとこちらも「ダッシュいま得」があり、7,600円だった。ただ、席はもう午前便しか残っていなかった。
私はここに至って失敗に気付く。1日にあんでるせんの予約を取った際、なぜすぐにスカイマークを見なかったのだろう。
4日に羽田→長崎便の予約を決めた時も同様である。そのついでに、福岡→羽田便だけでも確認するべきだった。3日前なら、まだ1席くらい残っていたかもしれない。
ちなみに通常の「いま得」はあったが、最終便は14,300円だった。「ダッシュいま得」のほぼ倍の料金では、買う気がしない。といって、21日以降の帰京は考えられないところである。
ANAの「SUPER VARUE」を見ると、20日の同路線最終便が14,900円だった。ANAのほうが少し高いが、こちらはマイルが付くから、ANAの利用がベターとなる。私はとりあえず、最終便の予約を入れた。
……あれ? だけどきょう10月7日は、12月20日の何日前だ?
計算すると、74日だった。SUPER VARUEは「搭乗55日前」の料金が掲示されていたが、前日だったら「搭乗75日前」の料金だったんじゃないか?
試しに12月27日の同料金を見ると、13,600円だった。前日6日もこの料金が適用されていたとすると、私はのんびりして1,300円を損したことになる。

ここで私の淡泊な性格が出た。ひとつ物事が達成されるとそれに満足してしまい、次の項目への着手が一拍遅くなるという悪癖だ。
うまくいけば7,600円の福岡便も取れた、と思ったりするから始末が悪い。
まさかいまから「ダッシュいま得」のキャンセルなんて出ないよなあ……。ただ、「ANA SUPER VARUE 55日前」は、まだ残席が多くあるので、いま慌てて購入する必要もないのだ。
とりあえず予約をキャンセルし、スカイマーク「ダッシュいま得」のキャンセルを待つ手はある。
楽天トラベルを見ると、ビジネスホテルはGoTo割引済の価格が提示されていた。これが分かりやすくてよい。ただし現状では、どこに泊まるかまったくの未定だ。

あんでるせんと長崎行きの便は確保したので、帰りはどうとでもなる。私はANAの予約をキャンセルし、スカイマークのキャンセルを待つことにした。
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2019年九州旅行(6)

2020-03-02 18:25:23 | 旅行記・九州編
バスは大きな建物の中に入っていた。まるで天神バスターミナルのようだ。
降車して道路から見上げると、そこは巨大な建物だった。ここが「熊本桜町バスターミナル」か!
実は昨晩、バス路線を調べていたら、見慣れぬ停留所名があり怪訝に思ったのだ。ここがそうで、もちろん旧熊本交通センターの生まれ変わりである。工期数年、ついに完成したのだ!



ここはゼヒ探索したいが、とりあえず熊本城である。お城へは目と鼻の先で、加藤清正像までは、3、4分で着いた。
城彩苑に入り、和菓子屋「香梅庵」に向かう。ここはきんつばとお茶のセットが100円である。ゴールデンウィークの時も前を通って、気になっていたのだ。
中に入り、立ち食い用に1ヶだけ所望したが、お茶代なしで75円だった。これは良心的値段といえよう。
きんつば―肥後鍔は、円形なのが珍しい。出きたては上品な甘さで、美味かった。
引き続き熊本城の周りを散策する。隣接する公園は何度も来たが、現在は熊本城の袂まで入場ができるようになっていた。ただし有料である。
私は以前、天守閣に登れぬまでも、袂まで行ければ入場料を取るべき、と主張した。その収入が復興の足しになるからだ。
今回はその措置になったわけで、私は大いに支持する。ただいざ有料になると入場する気になれず、私は先を急いだ。ここが私の非情なところである。
熊本城天守閣は鉄骨が目立ち、痛々しかった。まだまだ建設途上で、昔の人はどうやってお城を造ったのかと感心する。日本の建設技術は、当時のほうが上だったのではとさえ思える。







加藤神社まで行き、お賽銭を投じ、ご朱印(300円)をいただく。あたりでは幸せを絵に描いたような家族が和装でお参りをしている。私には縁がなかった光景である。
帰りに再び香梅庵に寄り、肥後鍔の10ヶセットを買った(891円)。ただし帰宅しても、食すのは私だけであろう。
さて、昼食である。先ほどの建物―SAKURA MACHI Kumamotoは、地上5階のショッピングモールに、15階建てのマンションが隣接していた。私は入場し、食事処を探す。中は凄い人出で、これでは下通アーケード街の流れが変わってしまいそうだ。
美味そうな店はあったがひとつに決めかね、結局私は建物を出た。
その先の広場では例年クリスマスイベントをやっていたが、今年はないようだ。
下通のアーケード街に入る。以前更地だったうどん屋は建て直され、似たようなうどん屋になっていた。ただ中の様子がよく分からず、ここも結局入らない。
付近では何かのイベントをやっていて、くまモンなどのゆるキャラが出演していた。



私はリンガーハットや松屋に入るわけにもいかず、放浪する。アーケード街を出たビルの地下に「雑魚屋」なる食事処があったので、入った。
店内は広く、人もあまりいない。これは穴場といえそうだ。
ランチの「雑魚屋膳」を頼む。お造り、天ぷら、豆腐料理と品のいいおかずが揃って、税込み1,100円。昼に1,000円の食事とは、贅沢の極みである。でも寛ぎの時間を過ごせたことも含め、満足だった。
桜町バスターミナルに戻り、福岡天神までの切符を買う(2,280円)。福岡までのバスは本数が多いから便利だ。「スーパーノンストップ・ひのくに号」は、定刻の14時10分に発車した。
ここまで来れば安心で、妙に落ち着く。車内は人が多かったが、まあ許容範囲である。
天神バスターミナルには、16時30分すぎに着いた。
天神や新天町をぶらぶらし、黄昏時になったところで、福岡市役所前に行く。毎年恒例の「クリスマスマーケット」である。福岡城では今年も光のイベントをやっているのだろうか。よく分からなかったので、結局同じところに行ってしまう。
昨年は雨だったが、今年は晴れているので、それだけでもうれしい。敷地内は食事処や小物店が開かれている。ステージでは若者がヒップホップを踊り、それを観客がスマホで撮影していた。







一通り雰囲気を味わい満足したので、退散した。
さて、晩飯である。福岡はやっぱりうどんであろう。数年前に入った天神地下街のうどん屋が美味かったのだが、その在処が分からない。「因幡うどん」はあったが中の様子が分からず、入るのを断念した。
地上に上がって、博多駅前行きのバスに乗った。天神から博多までは100円だが、以前はこの出費すら惜しんで歩いていた。100円でラクができれば安いものである。要するに私も歳を取ったのだ。
博多駅前の地下に入ると金券ショップがあり、熊本までの高速バス券が1,950円で売られていた。私は旅先でこの類を利用したことはないが、同じチケットを熊本で買えたら、330円の得である。どうせ熊本でもぶらぶらしていたのだから、探せばよかったかもしれない。
博多駅前のイルミネーションは、例年通り綺麗に映えていた。青系統で施されているのだが、いかにも冬のようでよい。









ここでもステージでは、誰かが歌っていた。博多どんたくならとことん聴くが、旅行最終日の夜では急いてしまっていけない。
さて、うどん屋である。筑紫口の先にある例の食事街に入ったが、どの店も込んでいて入る気がしない。
博多駅に戻り、新幹線方面の2階に上がると、「麺街道」があった。これは麺好きの私のためにあるような施設だ。なるほど、知らない場所にも行ってみるものだ。
いろいろ回ると「能古うどん」があり、そこに入った。
中はそれほど混んでなかったが、女性2人組のメニューを隔てた隣の席に案内され、居心地が悪くなった。
私はたらいうどんの大に、ごぼ天を注文する。大は無料だから、〆て550円+税である。これは安いと言うべきだろう。
右の社会人8人組はもう食事を終えたのにダベっている。ファミレスで粘るジョナ研みたいなものでヒトのことは言えないが、彼らが出ていけば席の余裕ができるのに。
たらいうどんはツルツルで美味かった。ごぼ天も、120円にしては量が多かった。さすがに福岡、値段以上の満足度だった。
さて、現在19時30分である。帰りの飛行機は20時55分だから余裕だが、といって、もう時間を潰すところもない。私は大人しく、地下鉄空港線に乗った。
福岡空港に着くと、我が272便は15分の遅れとなっていた。飛行機に遅延はつきもので、気にしない。
買わずもがなのお土産を買い、272便に搭乗する。21時10分、出発。
羽田空港の着陸は、22時45分着陸予定から、さらに数分遅れた。これで1泊2日の旅行も終わりだ。
私はモノレールに乗り、JR浜松町のホームに行く。
あれっ……?
ホームの先に、見知った顔の姿があった。
(つづく)
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