日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

桐野夏生著「ポリティコン」

2014-03-05 | 読書
昨日読み終えた上下刊
桐野夏生著「ポリティコン」文春文庫刊



母親が行方知れずとなった女子高生マヤ
母親の元カレと東北の唯腕村に潜り込む
理想郷を目指して造られた村は
年月を経て堕落と高齢化と少子化が進み
設立当時とはかけ離れた人間環境となっていた。

美少女マヤは理事長の息子に執拗に追いかけられる。
理事長の息子東一(トイチ)は唯腕村を支配する野望を抱きつつ
理論的な思考と非理論的な行動で嫌われ者となってゆき
村を飛び出す。

マヤも受動的な理由で村を出る。

共同経営の唯腕村は一時耳目を集めた山岸会を彷彿とさせる。

理想郷が理想とならずに個人を殺して生きるか
個人をないがしろにして繁栄するか

理事長の死をきっかけに唯腕村に戻った東一
母親の元カレの死の病をきっかけに戻ったマヤ

最終章は「イワンの馬鹿」
第1章は「イワン王国」
物語の中は第1章と最終章の名前に象徴されている。

能動的にがむしゃらに生きる東一
受動的にその場の雰囲気に流されるマヤ

対照的な二人を据えて、楕円を描いている物語。

人は力強けれな良しとせず
弱そうな人が弱いとは限らない
そんな人間模様を広大なスケール感と
狭い村社会を描いた作品です。

桐野夏生ファンでなくとも是非ご一読ください。
コメント
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