日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

有吉佐和子著「青い壷」

2012-04-26 | 読書
一月前に読んだ本
有吉佐和子著「青い壷」文春文庫 昭和52年発行
2011年に文庫化された。



年に数日のヘボ作陶を楽しむ私の興味範囲が主題

若き陶芸作家が偶然に生み出された傑作
青磁の花入れ

生計のためとは言え量産品の型物を焼き
陶芸作品に「古色」を付ける技術は群を抜き道具屋に重用されている。

窯出しで目を見張る作品が見つかる。
青磁を掛けた耳付のほれぼれとした「経管」花入れ
床の間に飾って置くと、道具屋がやって来て不承不承譲るはめになるが
「古色つけといてんか」
とっさに「へえ」と返事をしてしまう。

奥方の機転で古色つけを免れてよそへ売ってしまわれる。

その後の「経管」の転々とした先が物語になる。
デパートで買われてサラリーマンの退職お礼に買われ
サラリーマンが忌み嫌われてお花のお稽古仲間へ
お稽古仲間から治療のお礼にお医者さんへ

転々としスペインまで旅してまた日本に戻るが
お偉い先生に800年前の竜泉窯の作品として
陶芸作家に見せられる。
「ぼくの作品です」と言えども信用されずに引き下がる。

美術品は作家の手を離れたら
大事に仕舞われて人目に付かなくされたり
ビックリする値段で落札されたり
気に入らなくなったら壊されるかもしれない
過酷な運命に流されながらも、
とんでもない評価が付きまとうかもしれない。

一生懸命な庶民と他言を信用しないおばかなお偉い先生
対比が面白く読み終えたが
青磁は「魔物」だと思う。



陶芸教室の仲間が精進を重ねて出来たお皿
しみじみと眺めると「深さ」に引込まれそうになる。

この大事なお皿を思い浮かべながら読んだ一冊でした。
コメント (2)
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