「新宇宙計画」・凶器となる天空の世界

2015-01-25 15:46:29 | 日記

 「新宇宙計画」・凶器となる天空の世界

 

  小惑星探査機「はやぶさ」の劇的な帰還に胸を躍らし、そして興奮したことを記憶している。その反面「宇宙のゴミ」と言われている破壊物が宇宙空間を彷徨っているという報告に不安な思いを持つことも否定できない。

  そして昨年11月、宇宙開発戦略本部の会合において「新宇宙計画」(素案)なるものが決定された。私がそれを知ったのは今年に入ってからのことである。夢の「はやぶさ」の『明』を見るあまり、『暗』の部分への警戒の薄さを痛感した一例であった。そこで当時の新聞社説と「内閣府・宇宙戦略室」のホームページを開いてみた。

  一つは毎日新聞の社説である。同紙は「新宇宙計画は安全保障に偏りすぎ」という見出しで「宇宙安全保障の確保」を最重点課題とし、ミサイル発射を捉える早期警戒衛星の研究や情報収集衛星の基数を増加する計画が盛り込まれていること。それは宇宙協力と称した日米軍事同盟の強化を図るものだと論評している。その意味では「新宇宙計画」は、人工衛星による船舶の監視や情報収集などの宇宙システムから、安全保障を重視するシステムへと舵を切ったことを物語る。この計画は安倍晋三首相の指示に基づくものであり、約2カ月でまとめられた。しかも、作業を進めた宇宙政策委員会は非公開で、後から公開された議事録も簡単なものであり、策定過程の透明性も乏しかったと報じられている。

  また基数を増やした「情報収集衛星」は、03年に初めて打ち上げられ約1兆円の予算が投じられ、その打ち上げは大規模災害対応も掲げられていた。しかし、衛星性能の秘密保持を理由に東日本大震災時も画像は公開されなかった。

  さらに早期警戒衛星については、すでに防衛省がミサイル探知用の赤外線センサーを開発している。こうした例が増えると平和利用目的の研究開発情報が公開されにくくなる。現に内閣府宇宙戦略室の資料によれば「測位、通信、情報収集等のための宇宙システムを、我が国の外交・安全保障政策及び自衛隊の部隊の運用、活用が可能なものとして整備することで我が国の安全保障能力を強化する。あるいは宇宙協力を通じた日米同盟等の強化は、米国との衛星機能の連携強化等、アジア太平洋地域における米国の抑止力を支える宇宙システムの抗たん性を向上させ、安全保障面における日米宇宙協力を総合的に強化し、日米同盟(軍事的)の強化に貢献する」と明記している。

  このように考えると、平成25年の安全保障会議の創設・特定秘密保護法・国家安全保障戦略の策定・集団的自衛権の行使容認、そして武器輸出三原則の撤廃という一連の政治的戦略の結びつきが見えてくる。

  リンゴをむくナイフも時には「凶器」となる。宇宙を回る衛星からミサイルが発射される時代の到来も否定できない。「科学・技術は両刃の剣」の性格を持つ。

  今夜は星が見えるだろうか。しかし「凶器の星」は見たくないものである。