介護報酬の削減は「介護難民」を生む

2015-01-13 09:57:29 | 日記

   介護報酬の削減は「介護難民」を生む

 

  この間のニュースに占める大きなものに「介護報酬の削減」がある。それは介護費用の増大を理由に、特別養護老人施設の介護及びディサービスの介護報酬の切り下げを計るものである。

  財務省は2.5〜3.0パーセント、厚労省は2.0パーセントとのせめぎあいの中で2.27パーセントの削減が決まった。まさに「日本的な決着のつけ方」である。その結果どのような事態が発生するかの具体的論議はない。よって具体的対策もない。

  介護事業者は、この介護報酬(介護給付)によって経営を成り立たせている。それに対し「もうけ過ぎ」の事業所が多く、内部留保も膨大になっているから「介護報酬」の査定を厳しくしても良い。それが削減率2.27パーセントの根拠であろう。

  一市民の立場からその経営状態を知ることはできない。また、既存の施設の中には大企業がオーナーとなっている施設もある。また地方の大手医療法人が経営しているのもある。しかし、大方の施設は、一地区に一つの、しかも60人規模の入居者とディサービス、あるいはショートスティと訪問介護の並立というのが実態ではなかろうか。

   中でも「訪問介護」の実態は見えるだけにわかりやすい。一人のヘルパーの訪問件数は一日6ケ所(6人)前後が限界と聞く。訪問先での介護時間より、車を運転している時間が長いという広域訪問が原因である。身体介護を必要としている要支援者の30分から60分以内の介護費用は4.040円である。6人の世話をしたとすると一人のヘルパーの働きは一日24.240円である。賃金をはじめとする必要経費内訳は考えてみよう。「霞が関」が述べるほどの豊かな中身なのだろうか。自立し、結婚をし、そして子供を産み育てることのできる賃金を、この実態から予測することができるだろうか。答えは簡単である「ノー」。

  前記した介護報酬削減であるが1%削減による効果は、税が520億円、保険料からは410億円、利用者負担70億円になると解説している。利用者にとっては介護費用が削減はその分自己負担は少なくなる。これは利用者にとってはベターである。しかし、事業所にとっては収入減となる。そこにサービスの停滞が生まれやしないか。従業員の待遇改善を別枠と述べつつも、そこがきちんと把握できるのか。事業者努力の賃上げ、あるいは賞与は出さないということもあり得る。それでなくとも「きつい労働」を強いられている介護士たちの「業務外の労働」が生まれやしないかの危惧もある。

  団塊世代とは戦後の3年間で800万人を超えた層である。この世代が10年後には75歳を超える。それでなくとも、独居で介護を家族に頼れない高齢者は増え続ける時代である。介護の充実はますます欠かせない。

  万歩譲って内部留保があるとしよう。であれば「その資金を内部の充実にまわせ」と指摘する事こそ必要ではないか。現に「アベノミクス」はそのことを経営者に求めているだろう。もうけ過ぎだとするなら「法人税を下げる必要はない」。

  介護事業の狙い撃ちは「介護難民」を生むだけであることを見逃してはならない。