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認知の対称性

2008-01-08 | 認知心理学
「認知科学」特集論文募集のお知らせ  より引用 これは、おもしろそう!!

特集タイトル: 対称性:思考・言語・コミュニケーションの基盤を求めて(仮題)
掲載巻号: 第15巻第3号(2008年9月発行)(予定)

担当編集者: 服部 雅史(立命館大学)・山崎 由美子(理化学研究所)


■ 企画趣旨

 本特集は,これまで思考や言語に関して異なる分野で得られてきた知見を,
対称性という観点から関連付けて考えることにより,高次認知機能の基盤につ
いて深い洞察を得て,今後の認知研究の方向を示唆することを目的とする.

 ここでいう対称性とは,弁別学習における刺激等価性 (e.g., Sidman & Tailby, 1982) を構成する概念としての対称性を想定している.すなわち,
「A(見本刺激)→B(比較刺激)」の学習により,その逆の「B→A」の関係が
獲得されたとき,対称性が成立したとされる.対称性の獲得は,人間では幼児
でも容易であるが,人間以外の動物では極めて難しいことが明らかにされてい
る.ここで重要なのは,一般に,2項関係の対称関係は真とは限らないという点
である.つまり,対称性推論は論理的には誤謬である.

 これまでの研究により,対称性が,人間の推論・判断や問題解決,言語運用,
言語獲得など,高次認知の多くの側面と関係していることが示唆されている.
たとえば,効率的な推論,創造的思考,語彙の獲得,相手の意図の理解などに,
対称性が深く関与している可能性がある.そう考えると,対称性推論は,外界
の情報の効率よい認知や,高度に知的な処理を可能にするための基本的要件の
1つなのかもしれない.しかし,対称性が高次認知機能に広く関わるとしても,
その関係領域の広範さゆえに,研究成果やアイデアなどの学問的知識が共有さ
れにくいという難点がある.そこで,本特集では,この問題に関心を持つ異な
る分野の専門家の知見を集約して,この問題に対する洞察を深めたい.

 本特集で取り上げられる可能性のある話題をリストアップすることは不可能
であるが,たとえば以下のような論点が関係すると考えられる.対称性と思考
の関係は,精神分析学や哲学における示唆に富む指摘はあるものの,体系的・
実証的にはこれまでほとんど研究されてこなかった.そこで,個別の領域にお
ける実証的研究を,対称性という観点から吟味し議論することは意義深いであ
ろう.また,対称性と言語の関係についても,これまで示唆されたことはある
ものの,明確な関係はまだわかっていない.対称性の学習に言語が必要なのか,
あるいは逆に,言語の獲得に対称性が必要とされるのかという議論も重要であ
る.さらには,各領域で議論されている対称性が,本質的に同じものなのかど
うかすら明らかではないため,領域横断的な展望や論考も極めて有用と考えら
れる.

 以上のように,本特集では,対称性とその周辺の問題について,学際的観点
から再検討したい.そのことが,さまざまな高次認知機能の本質に迫るための
契機になると期待される.


■ 特集で扱う論文の範囲

 対称性に関係する研究領域としては,たとえば,ヒト(健常成人,子ども,
精神障害者)や動物に関する次のような領域が考えられる.ただし,これらに
限定するものではない.

・推論
・判断と意思決定
・問題解決と創造的認知
・カテゴリーと概念
・シンボルの使用
・言語(語意・語彙)獲得
・言語能力
・言語運用
・比喩やユーモアの理解
・コミュニケーション(意図の理解,相互信念の形成,メタ表象など)

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