系列位置曲線(serial position function>
皆さんは、古今東西というゲームをしたことがありますか?最初の人が「りんご」、次の人は「りんご、みかん」、その次の人は「りんご、みかん、バナナ」というように、前の人が言った言葉に重ねてどんどん単語を言っていくゲームです。皆さんはこのゲームのとき、最初のいくつかと、直前の人が言った言葉は覚えているけど、真ん中がさっぱり思い出せない、といったことはありませんでしたか?このように、覚えようとした単語の位置(最初の方とか、真ん中とか)によって、思い出しやすさが異なることを、系列位置効果といいます。
「かばん、花、学校、車・・・」など、10から20個の単語を、一定の間隔を空けて読み上げた後、その単語を思い出せるだけ思い出すという実験があります。すると、最初の方と最後の方の単語がよく覚えているという結果になります。単語の位置によってどのくらい思い出しやすさが違うかをグラフに表すと、真ん中がへこんだUの字型のグラフになります。このグラフのことを、系列位置曲線といいます。
最初の方の単語が思い出しやすいことを初頭効果といい、最後の方が思い出しやすいことを、近親性効果といいます。初頭効果は、まだ頭の中が真白な状態のときに単語が入ってきて、頭の中でその単語が繰り返され、しっかり覚えることができるからです。これは長い間ものを覚えていられる長期記憶という記憶に関係しています。また、近親性効果は、はついさっき聞いたばかりだから覚えているということです。これは、ほんの短い間しか覚えていられない短期記憶という記憶に関係しています。系列位置曲線は、記憶が長期記憶と短期記憶の二つから成り立っていることを示しています。(SI)
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以前、マジカル頭脳パワーというクイズ番組で「おぼえてしりとり」というコーナーがあったのを覚えている人はいますか?単純にしりとりをするのではなく、挙げられた言葉の全てを列挙しながらしりとりをしていくというものです。解答者の間違い方は、不思議なことに似ていて、普通に考えれば最初のほうの言葉のほうが思い出しにくそうですが、多くの解答者は途中の言葉が思い出せなくなるのです。逆に言えば頭とお尻の言葉は忘れにくい、覚えやすいということになりますが、これを系列位置効果と呼びます。
ある実験によって、上に述べた現象についての研究がなされています。この実験は単語を用いて行われましたが、示された思い出しやすさのグラフは、最初のほうと終わりのほうに提示された単語のほうが想起(思い出し)しやすく、中盤の単語は想起しにくいという結果から、真ん中がへこんだU字型のものでした。このU字曲線のことを、系列位置曲線と呼びます。
さて何故このようになるかということですが、それは人間の記憶の仕方には二つの方法があるからです。一つは短期記憶、そして、短期記憶を繰り返すことによって可能となる長期記憶です。最初のほうの単語を覚えやすいのは初頭効果と呼ばれますが、覚えることが少なくてよいため頭の中で何度も復唱することが可能で、長期記憶になりやすいからだと考えられます。また、終わりのほうの単語を覚えて置きやすいことは近親性効果と呼ばれますが、時間的に直前のことなので、短期記憶として保持しやすいからだと考えられます。
このメカニズムを知ると、例えばテスト勉強でギリギリまで暗記をするのも、無駄な抵抗とは言えなくなるかもしれません。とはいえ、しっかり長期記憶に保存しておいたほうがいいのはもちろんです。(KJ)
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