三流読書人

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ドングリ小屋住人 

大根

2007年10月25日 21時34分43秒 | くらし
 薄目の出し汁を、たっぷりと張った鉄鍋の中へ、太兵衛が持ってきた大根を切り入れ、これがふつふつと煮えたぎっていた。
 「さ、おあがんなさい」
 「これは、これは……」
 「その小皿にとって、この粉山椒をふったがよい」
 「こうしたらよいので?」
 「さよう。さ、おあがり」
 ふうふういいながら、大根をほおばった太兵衛が、
 「こりゃあ、うまい」
 嘆声を発したのへ、小兵衛が、
 「そりゃあ平内さん、大根がよいのだ。だから、そのまま、こうして食べるのが、いちばん、うまいのじゃ」

 これで酒。
 出し汁、大根、粉山椒だけである。
 こういうふうに書かれるとのどがなる。という年になったか。

 池波正太郎『剣客商売』「天魔」の中、「約束金二十両」にでてくる。
 大根がうまい季節となった。
 昔の大根がよかったなどと言うのはやめよう。





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