1969/04/09に生まれて

1969年4月9日に生まれた人間の記録簿。例えば・・・・

日本の国土の特異性と熊本の地質-どうして日本では自然災害が多いのか-

2011-08-17 18:15:38 | お勉強の記録
日本の国土の特異性と熊本の地質-どうして日本では自然災害が多いのか-


「地質と防災」という研修会で使用したPP資料です。
詳しい説明は、「講演その1」から「講演その10」を見て下さい。
一般向けに作ったもので、ご好評頂きました。
そんなに難しい話しではないと思います。
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講演その10(大泣き虫)

2011-08-17 17:39:21 | 雑談の記録


みなさんご存じのように、自然災害発生の主な原因は豪雨です。日本は気候区分上からは温帯モンスーン気候ですが、左図に示すように、日本における時間当たりの降水量は世界最大級となっているのです。つまり、1時間当たりの降水量では世界最大が200mm程度ですが、それに匹敵する雨が日本でも記録されています。1日でみると1千数百ミリという具合でやはり世界最大級の雨に見舞われているのが分かると思います。近年、ゲリラ豪雨とも呼ばれるような雨が各地で頻発しているのですが、それらは世界最大級に匹敵する雨だというふうに心得ておくべきと思います。
 ちなみに、日本の積雪量も世界最大級で、滋賀県伊吹山山頂で1927年に観測された11.82mがギネスブックに登録されています。

これまでキーワードを使用しながら説明してきましたが、日本は本当に脆弱な国土であると言えます。時間の都合上、世界の地質との比較には至りませんでしたが、欧米のそれと比べ、日本の地層というのは実に複雑で脆弱なのです。さらに、その脆弱な国土上に多くの人口を抱えています。気候的には温暖なようですが、一度大雨が降れば、それは世界最大級の雨なのです。日本で災害が多発するのには、それなりの条件があり理由があったのです。

ここに集まりの方々の多くは、土木建設に関わる方々ですが、私も含め、我々は、国土のことを良く理解した上で、多発する災害に対し、あるいは防災・減災対策に携わっていく必要があると思います。そして、日本の「国土」を守る、これが、私たち土木屋に課せられた重要な使命だと思っています。

みなさん、頑張りましょう。

さて、最後は熊本県の地質と土砂災害の関係についてです。



これは熊本の地質概略を示しています。
ここまで説明してきたキーワードで分類すると、この黄緑色の部分が「若い地層地帯」で、緑色が「モザイク地帯」になります。そして、赤、橙色が「火砕流堆積物地帯」、紫色が「吹き出物地帯」になります。各キーワード地帯には、それに特有の土砂災害があります。内容については資料を見て頂くとして、また、後ほどの各論の研修でより詳しいお話しがあると思いますので、私の話はこれくらいにして終わろうかと思います。
本日はどうもご静聴ありがとうございました。




(引用・参考文献及びウェブサイト)
1)(社)全国地質調査業協会連合会編:「日本の地形・地質-安全な国土のマネジメントのために」:鹿島出版会、2001年
2)鞠子正:「環境地質学入門」、古今書院、2002年
3)杉村新・中村保夫・井田喜明編:「図説地球科学」、岩波書店、1990年
4)国立天文台編:「理科年表」、丸善株式会社、2001年
5)活断層研究会編:「新編 日本の活断層-分布と資料-」:東京大学出版会、1991年
6)池田安隆・島崎邦彦・山崎春雄:「活断層とは何か」、東京大学出版会、1996年
7)地震調査研究推進本部(文部科学省)地震調査委員会編:「日本の地震活動-被害地震から見た地域別の特徴-」、2009年
8)日比野敏:「技術者に必要な岩盤の知識」、鹿島出版会、2007年
9)鎌田浩毅:「マグマの地球科学」、中公新書、2008年
10)高橋正樹:「破局噴火-秒読みに入った人類滅亡の日-」、祥伝社新書、2008年
11)渡辺一徳:「阿蘇火山の生い立ち-地質が語る大地の鼓動-」、熊本県一の宮町、2001年
12)(社)熊本県地質調査業協会 地盤図編纂委員会:「熊本市周辺地盤図」、(社)熊本県地質調査業協会、2003年
13)斎藤眞・宮崎一博・利光誠一・星住英夫:「砥用地域の地質」、(独)産業技術総合研究所 地質調査総合センター、2005年
14)岩内明子:熊本県の斜面崩壊と土石流の特性、(財)熊本県建設技術センター研修会、「地質と防災」テキスト、2010年
15)伊藤順一:日本列島における巨大カルデラ噴火、産総研地質調査総合センター第9会シンポジウム、地質学的手法による火山活動予測-火山災害の提言を目指して-講演文集、p38~41、2007年
16)木村龍治:地球温暖化と気候変化、(社)全国地質調査業協会連合会、地質と調査、第2号、p4、2011年
17)西 英典:阿蘇火砕流堆積物(溶結凝灰岩)の工学的特性と岩石組織、全地連技術eフォーラム技術発表会、講演集、2004年
18)地球カレンダー:「21世紀の歩き方大研究」(http://www.ne.jp/asahi/21st/web/) 
19)プレートテクトニクス:「気象庁」、気象等の知識、地震・津波、地震と火山(http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/2-1.html)
20)付加体:(独)産総研 地質情報研究部門 層序構造地質研究グループ「原 英俊のホームページ」、自己紹介、付加体について(http://staff.aist.go.jp/hara-hide/accretion.html)
21)火山カタログ:「日本の第四紀火山カタログ」(http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/tchiba/volcano/index.htm)
22)火山活動の期間:「(独)日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター」、研究紹介、地層科学研究、地質環境の長期安定性に関する研究(http://www.jaea.go.jp/04/tono/antei/kazan_020.html)
23)阿蘇火山:(独)産総研 地質調査総合センター「活火山データベース」、火山地質図集、阿蘇火山地質図、解説(http://riodb02.ibase.aist.go.jp/db099/volcmap/04/text/exp04-1.html)



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講演その9(吹き出物がいっぱい2)

2011-08-17 17:24:40 | 雑談の記録


火山活動は、私たちに温泉という恵みを与えてくれますが、実は、この温泉、やっかいなことを起こしてくれるのです。温泉は、地表に降った雨水がマグマに熱せられたものですが、このときに火山ガスと混合して、場合によっては強酸性の溶液になります。このような高温強酸性の液体は、岩石を著しく劣化・変質させて、周辺に粘土化帯を作ります。こうして出来た粘土化帯は地すべりや斜面崩壊の大きな原因となります。場合によっては、山ごと崩壊するようなこともあります。現在活発な火山活動が無くても、このような粘土化帯が発達している所が、日本には多く存在しています。



一般に火山活動は数万年~数十万年間続くと言われていますが、活動が活発な時期とそうでない時期があります。また、噴出物は、そのときの温度や噴出様式の違いによって、緻密で硬質な岩盤であったり、未固結の砂状であったりと変化に富みます。
このことが、建設現場で問題となったり、土砂災害の原因になったりします。
この写真は、金峰山地域の採石鉱山の切羽写真ですが、この切羽面に少なくとも6つの堆積サイクルが読み取れます。しかも、硬さや亀裂の状態は、どれも違っていそうです。このように、一口に火山岩といってもいろいろな顔つきがあるのです。



この上の写真は凝灰角礫岩が風化しているところなんですが、角礫として見える硬い所と、粘土化した軟らかくなった茶色部分が混在しています。左下の写真は、掘削中に突然硬質な岩塊が出現したために、ブレーカーで小割りしているところです。右下の写真は、基礎掘削中に突然陥没が発生し、地中に10m×5m×4mの空洞が発見されたときの写真です。



熊本では良く目にする溶結凝灰岩について、お話しておきたいと思います。
この溶結凝灰岩というのは、先ほど説明した高温粉体流の火砕流堆積物が固まったものです。火砕流は、軽石や火山灰などの高温のガラス質の破片の粉体流ですが、堆積したときの内部の温度が十分に高い(700°以上)とガラス質は互いに融合して自重によって圧密され緻密な岩石になります。こうした現象を「溶結」とよび、できた岩石を溶結凝灰岩と言います。また、溶結凝灰岩は、冷却時に縦亀裂(柱状節理)が発達する特徴があります。ただし、堆積したときの温度の違いによって、溶結度が変化し、結果として砂状から軟岩から硬岩という具合に岩相が変化します。そういう場合に我々は硬いモノを強溶結凝灰岩、中間くらいのものを中溶結凝灰岩、かなり軟らかいものを弱溶結凝灰岩と呼んだりします。真ん中に示してあるのはボーリングコアの写真ですが、上の強溶結は緻密で、下にいくとぼやけくるようなかんじがわかると思います。
このようにひとつの堆積物なんですが、硬さが違ったり、亀裂の状態が違ったりするために、崩壊や落石の様式がまちまちになるという特徴があり、これが土木工事や設計上、厄介だったりするわけです。



火砕流堆積物と基盤の境界はどうなっているのでしようか。
あまりいい実例がないのですが、このように風化した花崗岩の上に乗っているようなことがあったり、こちらは、砂岩の上に乗っているようすです。接触部分が粘土化していて、こちらからは湧水もあり、法面崩壊の原因になることがあります。
残念ながら、私は、この火砕流に埋もれてしまった「動物」というものを見たことがありません。まぁ、それは非常に高温であったために、ガス化してしまうから仕方のないことなのかもしれませんが・・・。焼けこげて炭になった巨木は見たことがあります。

さて、ここまで、キーワード①から④までを紹介してきましたが、いよいよ最後のキーワード「大泣き虫」です。

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講演その8(吹き出物がいっぱい1)

2011-08-17 17:18:01 | お勉強の記録


「吹き出物がいっぱい」、それは火山のことです。みなさんご存じのように、日本は火山が多いです。資料によりますと、過去1万年以内に活動があった火山は108個で、過去200万年に遡ると245個の火山があるそうです。ちなみに、日本の火山の平均寿命は40万年くらいだそうです。地球カレンダーでは45分です。
ところで、みなさんには知っていてもらいたいことがあります。日本には世界の気候に大きな影響を及ぼすような巨大噴火を起こした火山があるということです。それらは、九州、北海道、東北地方にある大規模カルデラ火山です。左の図は、それらのカルデラ火山の位置を示しています。阿蘇カルデラもそのうちの1つです。



さて、カルデラという専門用語が出てきましたが、「カルデラ」とは火山性の大型の陥没地形を表します。日本では直径が2km以上のものをカルデラと呼んでいます。また、「カルデラ」の語源ですが、これはポルトガル語の「大鍋」という意味からきています。つまり、大規模な火山性陥没地のようすが、あたかも「大鍋」のようにみえるので、このような名前がついたということです。
さて、そのようなカルデラがどのようにして出来たかを説明したのが、こちらの左の図になります。
要するに地下に溜まった大量のマグマが一度に噴出して、陥没したというものです。ただし、その噴火たるやそれは想像を絶するものです。このときの噴煙は、成層圏(高度2万m)を突き抜けます。その後、自重により噴煙は崩れ落ち、500°以上の高温粉体流が周囲を焼き尽くします。この高温粉体流を火砕流と言いますが、大規模火砕流の場合、千~数千km2(平方キロ)の範囲が、この高温の火砕流堆積物によって覆われてしまいます。




この写真は、砂嵐の写真ですが、おそらく500°以上の高温粉体流が都市を襲うときは、こんなかんじだと思います。粉体流のスピードは時速100キロから200キロで、これが都市部を襲えば、逃げることはまず不可能です。こないだの津波どころの騒ぎではないようなことが起こるということです。
実は、日本ではこういうことが過去に何度も起こっています。
身近な阿蘇を例に紹介したいと思います。



阿蘇火砕流の噴火は約27万年前に始り、約9万年前の間に4回の大規模な活動あったとされています。これらの大噴火と噴出物は古い方からAso-1、Aso-2、Aso-3、Aso-4と呼ばれていますが、このうち最後に起こった約9万年前のAso-4が最も規模が大きかったとされています。このときの火砕流は、阿蘇火山の周囲に広い台地を作り、さらに谷沿いを下り九州の東・北・西の海岸に到達すると、一部は海を流走して天草下島や山口県の秋吉台にまで達しました。想像を絶する超巨大噴火と言えます。 熊本県内では、これらの火砕流堆積物が溶結凝灰岩としていたるところで観察され、高千穂峡では100m近く堆積しています。また上空に舞い上がった火山灰は北海道にまで達し、約15cmの堆積があったことが知られています。このときの大噴火は、さながら「日本埋没」であったと言えます。
しかし、このような「日本埋没」は阿蘇に限った話しではありません。



最近12万年に日本で起こった噴出量100km3(立方キロメートル)に近いからそれ以上の超巨大噴火は9回起きています。このような超巨大噴火は一文明を滅ぼすほど巨大なものであるので、私は「壊滅噴火」と名付けています。一方、噴出量が30km3(キロ立方)の「破局噴火」を加えると、17回となり、7000年に1回の割合で破局噴火以上の大噴火が起こっていることになります。日本列島最後の超巨大噴火は7300年前の喜界カルデラの噴火ですので、日本列島では巨大噴火が秒読みに入っていると言えます。ちなみにAso-4クラスの壊滅噴火が現代で起こったとすると、犠牲者は1000万人を超えると推定されます。経済活動は完全にストップします。道路や電気送電は完全にマヒし、原発などでは完全電源喪失となり、核爆発がたぶん起こり、結果として火山灰とともに世界に放射性物質がまき散らされることになると思います。世界を巻き込んだ大災害ってところです。ちなみに、「破局噴火」クラスでは数十万人から数百万人の犠牲が出るとされています。
なんだか、大変、暗い話題になってしまいましたが、日本に住んでいる以上、このことは避けて通ることはできない話しなので、あえて紹介いたしました。最後の巨大噴火は7300年前なんですが、そのころには、日本人の祖先となるはずだった縄文人がいたわけですが、残念ながら、この出来事で九州の縄文文化は途絶えてしまいました。
さて、次の話題にいこうと思います。
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講演その7(キズだらけ)

2011-08-17 17:10:48 | 雑談の記録


さきほど、少し触れましたが、地球表面は10数のプレートに覆われています。10数枚です。
この図を見て下さい。なんとですね、そのうちの4枚、太平洋プレート、北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレート、10数枚のうちの4枚がこの狭い日本でひしめき合っているという状況なんです。ズバリ、こういう状況下におかれている国は、世界広しと言えども日本だけです。
私、今回の資料を作るに当たって、いろんな資料を調べたのですが、こんな環境にあるのはやっぱり日本だけでした。極論を言えば、このような環境が日本の地形・地質の特異性を作っているということになるかと思います。
さて、そして、このような環境下にあるために、つまりプレートのひしめき合いによって、この下に示すような様々なタイプの断層運動が起こり、日本では多くの地震がいたるところで発生しています。



この図は、世界で起こっている地震の震源を分布を示したものです。赤いところが濃密なほど地震がたくさん起こっているという意味しています。この図から地震の多くはプレートの衝突、あるいは沈み込み帯で起こっていることがわかります。
こちらの右上の表は、マグニチュード5以上の地震発の年間平均発生回数をまとめたものです。
この表からわかるとおり、日本では世界の年間平均発生回数の1割が発生しています。
これは多いのでしょうか、少ないのでしょうか。
日本の国土は、世界の0.3%に満たない狭い国土面積ですが、その周辺で世界の地震の10%が日本で起きているのです。欧米の地震学者の中には、日本に来て初めて地震を感じたという人がいるくらいです。世界の多くの人たちは一生に一度も地震を感じないそうです。そういう意味では私たちはラッキーなのかもしれません。



これは、日本列島の活断層分布図です。ここでの活断層を、最近180万年に活動し将来も活動する可能性のある断層とすると、全国には2000あるいはそれ以上の断層があると言われています。
ここで簡単な計算をしてみようと思います。
180万年の間に2000個の長さ数kmの断層ができたということは、1千万年で計算すると11000個の断層ができたということになります。日本はモザイクの地層で、5億年前からプレートの衝突の場にあったとすると、この間に、55万個の断層「キズ」ができたことになります。ちなみに、日本の面積は38万km2なので、1km2当たり1~2本の比較的長い断層があるということになります。
土木屋も歩けば断層に当たる、そんな具合で日本はキズだらけということがわかると思います。
ご理解頂けたでしょうか。
では、実際はどうなのでしょうか。



これは、緑川ダム付近の地質図ですが、これは新しい知見に基づいて、地質調査総合センターが調査を実施し、平成17年に刊行されたものです。私も、この調査にほんの少しだけ協力させてもらいました。
ま、それはさておき、モザイクみたいに色分けされたものが、黒い太線で分断されているのがわかるでしょうか。いっぱい分断されてますね。地質図の中でこういうふうに分断された部分、特に太い線の部分は断層を意味します。この地質図は10km×7kmの範囲ですが、私、ザッーと数えましたところ1kmぐらいにくぎった断層は68本ありました。まぁ、およそ1km2あたり1本の断層があるということになり、先ほどの計算結果と似たり寄ったりです。ですが、私の経験からすると、短い断層を含めれば、断層はもっと多いと思われます。
断層には、連続性の良い大断層がときどきありますが、このような大断層沿いでは過去に大規模な地すべりが発生しています。この赤で囲ったようなところです。
このように、断層は、地表に現れたキズであり劣化部であるため、当然、土砂災害なのどのリスクが極めて高いところと言えます。のちほど、別の講師の方が各論で、断層沿いに土砂災害が発生しやすいという話しをするかと思います。
ご理解頂けたでしょうか。
では、次のキーワード「吹き出物がいっぱい」にいこうかと思います。




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講演その6(モザイク2)

2011-08-17 16:56:33 | 雑談の記録


この図は、海溝で起こっている様子を断面で示したものです。この下の赤紫部分がプレートの一番上の方で、この左端っこの緑部分が大陸プレートというふうに思って下さい。
そうすると、このカラフルに色分けされたものはナンダということになるのですが、これは海溝の窪みに溜まったものということになります。
海のプレートの上には玄武岩やら砂・泥が固まった砂岩や泥岩が運ばれてきます。また、当然陸側からだって、河川によって運搬された泥や砂が海溝に溜まります。それらが、海溝ではゴチャマゼになってなって大陸側に貼り付けられるのですが、これが、結果として「モザイク」模様を作っていくのです。




このようにして、海溝、つまり窪地に溜まって大陸に貼り付けられたものを「付加体(フカタイ)」と呼ぶのですが、これが日本の土台となっているのです。もっと簡単に言うと、ベルトコンベアに乗った土砂がベルトの端っこの方で、何かに遮れて、糞詰まりになって溜まったような状態です。もし、土砂が色分けされていたらグチャグチャのモザイク模様になることが想像できますね。
しかし、モザイク模様になることは悪いことなのでしょうか。



この図は、先ほど言いました付加体についての学術的なモデルですが、つまり、「モザイク」になるということは、強く変形したり、褶曲したり、断層によって分断されたりしていることを意味します。分断されたり、強い変形を受けたりした岩石は、それだけ劣化を受けたことになります。緩んだり、亀裂が多くなったり、破砕されたりといった具合です。
そして、それらが、地表に向かって押し上げられると、地表に達したものは強く風化して、さらに劣化が進むという具合です。
結果として、日本列島は、欧米などの古い時代にすでに安定化した大陸部のものと比べて、はるかに特異で著しい劣化過程を経ていると言えます。
ご理解頂けたでしょうか。
では次に「モザイク」の実例を示したいと思います。




これは、芦北地域のある採石鉱山の切羽写真です。ご覧のとおりモザイクになっていることがわかると思います。全体的に黒色で泥岩が多いのですが、白っぽい部分が砂岩やチャートです。そして、断層によって地層が分断されているのがわかると思います。さらに、ここの断層沿いは、弱部になっている為に、ここで溝状に崩壊しているのがわかります。
これは、切羽スケールでの「モザイク」な話しですが、調査ボーリングのスケールではどうなっているでしょうか。




このボーリングコアは、先ほどの採石鉱山のすぐ近くで採取されたものです。全体に弱い風化を被っていて砂岩を主体としていますが、砂岩の中には取り込まれた泥岩やチャートの岩片が見られます。
この黒っぽいところが泥岩で、この白っぽいところがチャートですね。また、泥岩はひどく変形、破砕されているのがわかります。
このようにですね、全体を見てもモザイクになっているところは、細かくみてもやはりモザイクになっているのです。
そして、このように「モザイク」になっていることこそが、土砂災害などのリスクや、あるいは岩石の硬軟の違いが原因で工事現場でのリスクを高めているということになるのです。
ご理解頂けたでしょうか。
では、次のキーワード「キズだらけ」にいこうかと思います。




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講演その5(モザイク1)

2011-08-17 16:49:30 | 雑談の記録


この図の左側に示してあるのは日本なのですが、実にカラフルに色分けされていますね。
これは日本を大きくみたときの地質図で、堆積した時代や岩石の種類で色分けされたものです。
カラフルにモザイクみたいになってますが、ただ、その模様が日本列島の延びの方向とだいたい同じというところが、ミソです。
一方、右側の図は、熊本県の緑川ダム付近の地質図ですが、やはり、カラフルに色分けされてモザイクみたいになっていますね。これは堆積した時代をさらに細かく分けたり、岩石の種類を細かく分けたりした結果です。この地質図は10km×7kmの範囲なんですが、実にいろんな種類の岩石が出てくるということを意味しています。しかもごちゃごちゃにです。
なんで、日本の地層は、こんなふうになっているのでしょうか。



日本の地層が「モザイク」になっていることを説明する前に、すこし、おさらいをしておりきたいと思います。みなさん聞いたことがあると思います、「プレートテクトニクス」です。
東日本大震災を引き起こした地震は、太平洋プレートの沈み込みに伴って起きたことは、みなさんご存じのことと思いますが、実は、地球の表面は太平洋プレートだけでなく10数枚に分割されるプレートによって覆われています。そして、これらは地球内部の熱エネルギーによって、ある場所では湧き出して拡大し、有る場所では衝突したり、ある場所では陸のプレートの下に海のプレートが沈み込んだりしています。湧き出しているところが、海嶺と呼ばれるとこであったり、衝突しているところが、ヒマラヤあたりで、沈み込んでいるところが日本海溝だったりするわけです。



みなさんご存じのように、日本列島付近は、プレートの沈み込み帯になっていて、日本海溝などがプレートの境界になっています。そして、このようなプレート境界では海溝型地震と呼ばれる巨大地震が発生します。また、プレートの境界付近の深い所ではマグマが発生し、地表には火山活動が起こります。
しかし、プレート境界で起きていることは、これだけではありません。
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講演その4(若い2)

2011-08-17 16:45:13 | 雑談の記録


さきほど言いました、古生代、中生代、新生代ですが、日本の地層を時代毎で分類してみたのが、この上の円グラフです。ご覧のとおり、新生代の地層が6割で、その多くが12月中旬以降ということがわかり、日本の地層がさらに「若い」ということが良く分かると思います。
下の円グラフは日本の地層を岩石毎に分類したものです。
岩石には、砂や泥が堆積して固まった砂岩や泥岩なのどの堆積岩、マグマが地表に噴出して固まった火山岩などがあります。このほか、マグマが地下でユックリ固まった花崗岩などが代表選手の深成岩などがあります。
このグラフからわかるように、日本の地層の約6割は堆積岩で火山岩を含めると約8割になります。




さて、ここまで日本についてだけみてきましたが、世界の地層は一体どうなっているのでしょうか。
この図は、世界の地層を、中生代から新生代の地層、古生代の地層、古生代より古い地層という具合に大きく分けたものです。
先ほども、言いましたように、日本の地層の大半は中生代から新生代の地層からできています。
この図でいうと、黒っぽく塗られた部分ですね。この新しい地層は、環太平洋とヒマラヤ付近にあるぐらいで、全体の2割から3割ぐらいですかね。これは少ないと言っていいでしょう。
また、図には楯状地とか卓状地って記載がありますが、これらは古生代よりずっとずっと古い地層で安定陸塊などと呼ばれているものです。このように、大陸の多くは安定な地層からできているのです。




さて、先ほどから、日本の地層は「若い若い」と何度も強調していますが、地層が「若い」ということは、どういうことを意味するのでしょうか。
この図は、新生代の堆積岩の硬さと岩石の中にある間隙の関係を示したものです。そして、グラフのなかに四角で囲ってある部分がありますが、それは、新生代の時代をさらに細かく分けたものを表しています。
この図から、時代的に古い岩石ほど固くて、新しい、すなわち若い岩石ほど軟らかいということが分かるかと思います。いわゆる「軟岩」や「硬岩」と呼ばれるような岩盤分類における境界は、一般には一軸圧縮強度25MPaですが、このような軟らかい岩石は、硬い岩石に比べて劣化しやすい性質があります。
テキストにも書いてありますが、このような劣化しやすい軟岩が日本には私の感覚で4~5割程度分布していると推定されます。つまり、「若い地層が多い」ということは、それだけ「劣化する所が多い」ということになります。とどのつまり、日本は劣化するところがとても多いということです。
ご理解頂けたでしょうか。
次は、劣化しやすい岩石の例を示したいと思います。



これは、宇土半島先端付近の切土のり面の写真です。
のり面に分布している地層は、「新生代」の泥岩です。灰色に見える部分が新鮮で、褐色がかって見える部分は風化しています。そして、この灰色の部分は、掘削した直後は比較的良質なのですが、掘削した直後から濡れたり乾いたりの繰り返しによって、あっという間にボロボロになっていきます。こういう現象をスレーキングと言うのですが、こういう性質を持った地層というのは、斜面崩壊や法面崩壊の素因となります。日本にはこういう地層が多く見受けられます。
さて、では、次のキーワード「モザイク」にいこうと思います。
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講演その3「若い1」

2011-08-17 16:40:01 | 雑談の記録


さて、キーワード①の「若い」ってありますが、それはどういうことでしょうか。
これを理解してもらうためには、「地球カレンダー」が最適だと思いました。
この「地球カレンダー」というのは、地球の46億年の歴史を1年のカレンダーにしてみたものなんですが、これを使って地球の歴史を振り返ると、案外簡単に、地球の歴史が理解できます。また、地球の歴史に親近感が湧いてきます。
これは、その1月~5月の「地球カレンダー」ですが、地球は、お正月の午前0時に地球は誕生します。それが46億年前となっています。
これで見ていきますと、原始生命の誕生は2月25日の39億年前で結構早いなぁ~ってかんじですね。さて、みなさんで、カレンダーを見ていくことにしましょう。
酸素を放出するシアノバクテリアが出てきたのが5月下旬で、それが27億年前くらいですね。
時間がないので省略しますが、後でゆっくりテキストを見て下さい。




地球は大変な気候変動をこれまで何度も繰り返しているのですが、地球には全球凍結と呼ばれ、地球全体が全て氷り覆われた時代なんかがあります。それなんかが6月下旬の23億年前、そして、アメーバなどの単細胞生物が出てくるのが梅雨明けの7月中旬です。
さて、ご覧頂けますように、10月までの間には、みなさんよくご存じの恐竜については、キョの字もでてきません。恐竜は、「地球カレンダー」からすると、ずいぶん最近の話しなんですね。




これは11月のカレンダーで7億年から4億年前に当たります。
ようやく11月の中旬に魚類が現れるのですが、これが5億年前で、日本の地層の始まりがだいたいこの時代と同じくらいです。地球カレンダーでいうと、11月の中旬以降ということになり、日本の地層が「若い」ってことがよくわかると思います。




これは12月のカレンダーですが、恐竜がようやく現れるのが12月の中旬でそして下旬には絶滅してしまいます。せっかくですので、12月31日を詳しく見てみましょう。
私たちの間近な祖先と言われているホモサピエンスが登場したのは午後11時37分で、これが20万年前です。後に紹介しますが、阿蘇の最後の巨大噴火があったのが11時49分50秒の9万年前、世界で農耕牧畜が始まった1万年前が11時58分52秒。以下省略しますが、140年前の明治維新が11時59分59秒という具合です。ちなみに地球カレンダーで人の平均寿命は0.5秒ほどです。人間の命は一瞬ですね。
さて、さきほど、日本の地層は11月下旬頃から形成が始まったと言いましたが、これは現在まで続いています。
12月のカレンダーの右端のここを見て下さい。横に古生代、中生代、新生代と書いてあります。歴史の教科書に日本の時代分けとして平安時代、室町時代、鎌倉時代とあるように、地質についても時代分けがあるってことで理解して下さい。そして12月の初旬までが古生代、中旬が中生代、下旬が新生代です。
ご理解頂けたでしょうか。
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講演その2(5つのキーワード)

2011-08-17 16:37:32 | 雑談の記録


日本は自然災害の多い国だということに異論のある人はいないと思います。
地震災害、火山噴火災害、豪雨災害、これらに伴った土砂災害は、枚挙に暇がないほどですね。
ここに簡単に紹介してありますが、これはほんの一部に過ぎません。
冒頭でしゃべった繰り返しになりますが、なぜ日本は災害が多いのでしょうか?。
今日は、このことについて、お話ししていこうかと思います。




さて、いきなりですが、日本の国土の特異性をひもとくためにキーワードを準備しました。
これは、私がオリジナルで考えたものですが、5つ紹介したいと思います。
まず、キーワード①です。「若い」です。
若い女性は、私は好きですが、最近は苦手になってきましたね。
次、キーワード②です。「モザイク」です。
みなさんが大好きなあの「モザイク」と同じですね。
次、キーワード③です。「キズだらけ」です。
キズだらけの女性はやっぱり難しいですね、いろいろとですね・・・・。
次、キーワード④です。「吹き出物がいっぱい」
あんまりいいもんじゃぁありませんね。
最後のキーワードです。「大泣き虫」
最悪ですね・・・・。
それで、このキーワードをまとめてみると・・・・
こんなかんじにになりますね。
「若く、モザイクみたいに複雑な性格で、キズだらけで、見た目には吹き出物がいっぱいで醜く、それでいて大泣き虫」
さっきは、各々を女性に例えてキーワードを紹介していましたが、これらをまとめると、まるで手の掛かる思春期の子供みたいですね。
日本はですね、思春期の子供みたいに手が掛かるんですよ。
実際、今年、高校受験の娘がいるんですが、まぁ、すぐに怒るし、泣くし、無視するしってな具合で大変ですね。
ま、みなさんには、日本のことを手の掛かる子供とそんなふうに思って頂きたいというのが、私の本心とするところです。このキーワードにはそういう思いが詰まっているのです。
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講演その1

2011-08-17 16:32:37 | 雑談の記録


はじめまして。紹介頂きました○○地質調査株式会社のhiratakuwaです。
今日はよろしくお願いいたします。
本日は、「日本の国土の特異性と熊本の地質-どうして日本では自然災害が多いのか-」と題しまして、約1時間ほどお話しいたします。
さて、お手持ちのテキストの冒頭に書いてあるとおり、本年3月11日に太平洋三陸沖を震源としたしたマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生しました。そして、この地震に伴って発生した津波やその後の余震によって、東北地方と関東地方の太平洋沿岸に壊滅的な被害をもたらしました。この大規模地震災害は東日本大震災と命名され、死亡・行方不明者は2万人以上、被害総額は数十兆円に上ると言われています。
地震発生直後、私は午後3時の休憩時に事務所のパソコンからインターネットを通じて地震発生の報を知りました。当初の報道ではマグニチュード7.9だったのですが、それでも大地震に変わりはなく、直ぐさま携帯電話のワンセグによる報道を見ることにしました。携帯電話の液晶画面には北陸沿岸を襲う大津波が写し出されていました。私はそのリアルタイムの中継を見ながら、犠牲になりつつある人々が感じている恐怖と自分自身の恐怖で足元から血の気が引いていくのが分かりました。その恐怖の影像を見ながら、経済的損失はともかく、犠牲者は数万人に達するだろうと予想し、その後に湧いた私の心象は得も言われぬ強くて深い敗北感でした。
震災間もなく、一部専門家やメディアはこの巨大地震と大災害について「想定外」という言葉で説明を試みようとしていましたが、果たしてそれは想定外のことであったのでしょうか。ご存じのように日本は昔から災害立国と言われていますが、なぜ、災害立国なのでしょうか。また、数年前まで「日本における建設投資は大きすぎる。GDPに対する比率が15%を超えるといのは諸外国の3倍の数字で異常ではないか」という議論がありましたが、3倍という数字は、本当に異常と言えるのでしょうか。
今回の講習会では、このような疑問や議論に対する簡単な答えを準備したつもりです。
地質のことを正確にお伝えしようとすると、基礎分野から専門分野まで幅が広くなることになり、かえって伝えることが困難になるというジレンマに陥ります。
今回の講習で作成した資料は、土木分野に係わる方々に対し、日本の国土の特異性の大枠についてご理解頂くことを目的としているため、細部にはこだわっておりません。使用している図表はWebや書籍で紹介されている簡単なものを使用するか、あるいはそれらを加工したものです。また、説明文章も技術的・学術的ではなく、紹介内容についても、おおまかな理解を目的としているため多少の飛躍等があることをご了承下さい。
本講習を機に日本の国土(地質)の特異性と熊本の地質について、わずかでもご理解が深まれば幸いです。よろしくお願いいたします。
さて、前置きがずいぶん長くなりましたが、本題に入っていこうと思います。
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せっかくなので・・・。

2011-08-17 16:28:42 | お勉強の記録
お昼に、研修会での講師役を終えて、無事に戻ってきました。

せっかくなので、講演の内容をここで発表しようと思います。
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